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2022/07/14 扇風機とサイゼリヤのお姉さん

久しく取引のなかった雑貨の卸会社さんから荷物が届いた。どうせカタログだろうと思っていたら、かなりしっかりした造りのヘッドホン型扇風機だった。

数年前までは、(そこまでして風が欲しい?)とハンディ扇風機の需要に疑問を持っていたけれど、最近はすっかり定着しているようだ。首から扇風機を下げている人、片手で自分に風を送る人、もう日常の風景になったみたい。そういえば団扇や扇子を扇いでいる人は全然見なくなった。

とにかくずっと室内でじっとしている私に、ハンディ扇風機は必要ない。もったいないから使えば?程度の気持ちで娘に渡すと、これがもう、大興奮の大喜びなのだ。そんなにも?

鏡の前で、「熊っぽいよ」「コアラでもいい」と様々な着用スタイルを試してみたり、風の向きの探求に余念がない。
そして、今日は割と風があって気温も低いというのに、外出の折りにも首にひょいっとこの青いヘッドホンを着用した。

「こんなにお洒落なのに扇風機ってすごくない?」と意気揚々と歩く。
扇風機の風を顔にあてながら、とても嬉しそう。そして、雨があたらないように、大事に扇風機を守り、愛おしく撫であげる。この青いヘッドホン、すべすべしていて触り心地も良いのである。

しかしながら、雨が降る今日は、特段その青い宝物を見せびらかす場もなかった。

帰りは、サイゼリヤに寄った。
席に着くと案内してくれたお姉さんが
「その青いの、すごくカッコいいね」と娘に声をかけてくれた。
サイゼリヤの人が、自分の言葉を話すのは、レアケース、いや、初めてだ。
「サイゼリヤの人がしゃべった」と娘も目を見開いて驚いている。

サイゼリヤは大好きだけど、サイゼリヤの人はそんなに好きじゃなかった。
この値段にサービス料は入っていないのだから、マニュアル通りの最低限の、機械みたいな受け答えでも、それはそれで良いのだ、と思っていた。

今日だってサイゼリヤは忙しかったけれど、お姉さんは笑顔で、そして瞬時に娘が一番見てもらいたいものを見つけ、褒めてくれた。
お姉さんすごい。

(あなたはきっと、どの会社でどんな仕事をしても、上に行ける人だよ)

私は通路を忙しそうに、でも笑みを絶やさず歩くお姉さんに熱い念を送る。
娘は、まだ7歳なのに「ここであのお姉さんと一緒に働きたいんだけど」と瞬く間に将来の職業を決めた。

職場って雰囲気悪い人が上にいると、それが伝播し、そのムードを逸脱することができなくなったりする。嫌なムードを引っ掻き回して、壊して、新たな世界を作るのは大変な事だ。でも、それが無理なくできる人がいる。

何歳になっても、そんな人に憧れてしまう。



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