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なぜ慢性的な痛みが治らないのか?

米国公認カイロプラクター・加州公認鍼灸師の室幸子です。今日は世の皆様がたくさん悩んでいる腰痛などの慢性的な痛みについて書きたいと思います。

皆様もご存知かと思いますが、人間の体はとても複雑であり私たちが理解できないほど高性能にできています。これも周りの環境に合わせて進化し、最善な状態に仕上がってきたからです。そんな高性能な人間の体ですが、何を目的として進化しているのでしょうか。人間の体にとってのゴールは2つです。

1. 生き延びること

2. 子孫を残すこと

私たちの体が起こす症状や人間のとる行動など上記2つのゴールのために起こるといっても過言ではありません。残念ながら健康で長生きすることがゴールではないのです。

例えば、熱が出るのも体内に入ってしまった菌やウィルスを熱で殺そうとするためです。食中毒などでは、体が嘔吐や下痢をすることで体から菌を出そうとします。暑くなれば汗を出すことで体温を下げ、寒くなれば震えることで体温を上げます。敵に襲われれば、心拍数、血圧、呼吸数をあげて戦える、もしくは逃げる準備を体がします。その間は食べ物の消化や排泄をしている場合ではないので、胃腸の働きが遅くなります。例をあげればキリがないほど常に人間の体はサバイバルをし、子孫を残すために機能しています。

その機能の一つとして体には損傷が起こった場合のために組織の修復機能が備わっています。では、損傷が起こったところが修復されると完全に元の状態に戻るのでしょうか。もちろん戻るところもあります。小さな切り傷など、時間が経つとパッと見てわからないほど綺麗に治ります。しかし、体内で起こった損傷は必ずしも元には戻っていません。例えば今までに突き指や足首の捻挫などをした経験がある方が多くいるかと思います。その後に見た目が大きくなったり、なんだかそれから歩いた時に変な感じがしたり、触ったら何年たっても痛かったり、動きが不自然だったりなんてことありませんか?昔のタンコブの跡がなんとなくずっと盛り上がっていたりしませんか?盲腸などの手術の傷や周辺がつれた様な感じがしたりしませんか?それって何でしょう?

答えは修復時に損傷した組織、またはその周辺の炎症があった組織が癒着を起こしてしまっているからです。ここで先ほどお話しした、人間の体のゴールである「生き延びる」にヒントがあるのではと考えました。昔の人間は怪我をしてしまい動けなくなるということは死を意味します。食料を調達することもできず、危険な動物に襲われる率もぐっと上がるでしょう。1日でも早く完璧でなくても動ける様になることがとても大切であったはずです。ということは、新しいコラーゲンの綺麗な配列や残った炎症物質を完璧に綺麗に取り除くことよりも、より早く癒着を起こし損傷箇所を固め安定させる必要があったはずです。何故ならば動かない、つまり固定してしまう方が早く痛みがなくとりあえず動ける様になるからです。ただ近年、人間の進化の過程での誤算がありました。急に人間が予想以上に長生きする様になってしまったのです。日本では江戸時代あたりでも平均寿命が30代、1950年頃でも52歳くらいでした。江戸時代より前は10−20代だったようです。今や100歳まで生きることが珍しくなくなってきました。そしてここ100年ほどで5−10倍も人間の平均寿命が延びてしまったのです。

では、なぜ長生きだとこの損傷の修復方法が問題になるのでしょうか。答えは、早急に固定してしまう方法では、短期間的には理にかなっているのですが、長期的に見るとデメリットの方が多くなってきます。例えば、短期間的になんとなく動けることの代わりに、組織が癒着を起こし固定されてしまうので損傷箇所周辺の動きが不自然になります。一年や二年、もしくは十年ほどは良いかもしれません。しかしそのおかしな動き、例えば、不自然な歩き方が三十年続いたとしたらどうでしょう?それをかばって他の関節や組織に負担がかかってきます。大抵の場合は10代や20代は筋力などでなんとなくカバーすることができますが、筋力が落ちてくる特に30代後半になってくると色々と不具合が起こってきます。それから年をとるごとに色々な箇所がおかしくなり、皆さんが「年だから」と言い始めます。もちろん年は取っています。しかし本当に年をとっているから痛いのでしょうか。必ずしもそうではないです。

組織が癒着を起こすことで関節が動かなくなり可動域が低下したり、関節軸がずれることにより別の箇所に負荷がかかり痛みを起こします。また周りの筋肉や筋膜で癒着を起こしたり、靭帯や腱の周りに癒着を起こし軟部組織が動けなくしてしまったりします。例えば「ぎっくり腰がクセになる」もこれによるものであり、ぎっくり腰の回数が増えるほどさらに腰が悪くなります。癒着箇所が増えることにより、さらに動けなくなり痛みが増す上にぎっくり腰の頻度も上がります。

また、内臓周りでも癒着が起こり、その組織・繊維のツレによって骨盤などの骨の動きが変わり腰や股関節に痛みを起こすこともよくあります。例えば帝王切開や子宮摘出手術の傷が引っ張ることで骨盤前面の動きが制限されてしまい、骨盤の後方、つまり腰やお尻の辺りに慢性的な痛みを起こしているケースもよくあります。様々な組織の癒着により、またその動きをかばうことによって様々な問題が多く起こります。治療を進めていく過程で、全く関係ないように思えていた体の不調の関連性が見えてきます。

では、この癒着はどの様に見つけることができるのでしょうか?残念ながら今の医学では触診、モーションアナリシス(体の動きの分析)、また丁寧な問診をすることでしか見つけることが難しいです。なぜならば、この様な軟部組織の癒着はレントゲン, MRI, CT スキャンなどでは見ることが出来ないからです。そもそも、レントゲンは骨などの密度の高いものしか写りません。MRIやCTスキャンなどで軟部組織を見ることはできますが、癒着を起こしているかどうかまでは見れません。写っても正常な組織と区別することが出来ないからです。かろうじて可能性があるとすればエコーのみでしょう。しかし、細かい癒着箇所をはっきりと特定することはそれでも難しいです。将来的に体を動かしながらMRIやCTスキャンを使って軟部組織がどの様に動いているかが見れる様になるともう少し正確に場所を特定することができる様になるかもしれません。

特にレントゲンやMRIなどの画像診断に原因となっている所見が見られないのにも関わらず痛みや痺れなどの症状ががあるケースなどこの癒着によって起こっている可能性が高いと思われます。また、画像診断で写っていたとしても必ずしもその所見が症状の原因とは限りません。その様なケースで手術をした場合、手術をしてその箇所が治っているのにも関わらず症状が改善されないということになります。


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