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陰陽師好きからみた映画『陰陽師Ø』を勝手にレビュー

山﨑賢人さん主演の映画『陰陽師Ø』を観てきました。結論から申しますと、かなり主観的ではあるのですが、陰陽師が描れた過去の映画の中で最もすばらしい作品だと思いましたので、勝手にレビューしてみたいと思います。

ストーリーについて

まず、物語の構成、ストリー性について感想を述べさせていただきますね。
実は、この映画の素晴らしいところは、陰陽師とは、何者なのか?をわかりやすく描写してくれているところだと思いました。つまり、歴史に基づき、暦や占い、科学や天文の専門家として、また、国家公務員として国の政治に関わっていた陰陽師たちの一面が描かれているところです。

陰陽師というと安倍晴明がとても有名であるために、彼が得意とした呪術にフォーカスした側面ばかりが映画やドラマで描かれることが多いですよね。映画というエンターテイメントでは呪術をテーマにした方が視聴者を退屈させないのはわかります。映画告知のトレーラーも安倍晴明と呪術の世界をテーマにした映画にしか見えません。そうするとどうしても陰陽師=呪術師というイメージばかりが印象に残ってしまいます。

2001年公開の野村萬斎主演の『陰陽師』はもちろんのこと、その他、平安期を描いた映画やドラマに登場する安倍晴明=陰陽師は、帝や姫君たち、上級貴族たちにかけられた呪いを解いて、問題を解決する呪術師として描かれていることが一般的です。そして、いつも安倍晴明が単独で登場するだけで、その他陰陽師たちがどのような仕事に従事されていた方達なのかを描かれることはありません。

『陰陽師Ø』では、安倍晴明が主役ではありますが、彼だけが単体で描かれているわけではありません。陰陽師が、国の省庁の一つである陰陽寮に属する官僚たちで、彼らは天皇を始め、国の政治のために、陰陽五行に基づき占いをしたり、暦を作ったり、天体を観測したりする専門家たちであること、その中で、時に呪術を使い、悪いものを祓うこともできる人たちということがきちんと描写されています。また、国の政治に関わる人たちという事で仲間同士の政治的争いがストーリーの中核になっているのも面白いところでした。実際にそういう世界にいた人達だと思うので当然のことではありますよね。

『陰陽師Ø』では、陰陽寮で陰陽博士とわれる先生が生徒たちに陰陽五行の基本原理を説明している場面や巨大天体観測機などが見られる場面、書庫や研究室っぽいところなども描かれていて興味深かったです。

得業生、陰陽博士、さらには陰陽頭になるために陰陽道を勉強している学生たち、そして、そのひとりとして27歳の安倍晴明が物語の中に登場していました。ちなみに、安倍晴明は、晩年になって村上天皇や時の権力者・藤原道長に認められ有名になられた方です。映画の中では、若き村上天皇が若い時の晴明にすでに興味がある様子を伺う事ができるシーンがありましたが、これは、おそらくシリーズものとして次回作に繋がるような意味合いを含んでいるんだろうなと思いながら私はそのシーンを見ていましたね。

キャスティングについて

この映画では、27歳の若き安倍晴明を山崎賢人さんが演じていました。山﨑さんのすらりとした体型と綺麗な顔立ちは、神格化された安倍晴明にピッタリでした。映画ですからね、エンターテイメントとして観た時に山﨑さん演じる安倍晴明は本当に美しくて目で楽しめたのは良かったですね。

ちなみにですが、映画『陰陽師』では野村萬斎さん、映画『源氏物語 千年の謎』では窪塚洋介さん、NHK大河ドラマ『光る君へ』ではユースケ・サンタマリアさんが安倍晴明を演じています。安倍晴明は晩年有名になった方なので、歴史的視点でみるとユースケ・サンタマリアさんが演じるおじさん晴明が個人的にはしっくりくるように思っています。にしても、どの方が演じる晴明もキャラクターが個性的ですね。

安倍晴明といえば、必ず登場するのが源博雅です。今回の映画では、染谷翔太が演じていました。晴明に比べて身分がとても高い方で、龍笛が得意ないじられキャラとして登場することが多いです。今回の染谷翔太さんが演じる博雅もまさにそういう役柄で個性的な演技と演出で面白かったですね。冠にお花を飾り付けている演出に恋愛要素も入り、鑑賞していて華やかで素晴らしかったです。

晴明の師匠・賀茂忠行を國村隼さんが演じているのも良かったですね。賀茂忠行がどのようなキャラクターなのかという歴史的事実に詳しくないのですが、映画の中では、晴明の育ての親的な存在で國村隼さんがいい感じでした。

衣装や舞台設定について

実は、衣装に関しては、平安期の装束を忠実に表現はされていないのかなと思いました。海外で作られたアジア・日本映画でありがちな、日本の着物や装束はこんな感じだろうとデザインされたような衣装でした。映画というエンターテイメントという視点でグローバルにもわかりやすい衣装としてデザインされたという見方をすればそれはそれでありなんだと思います。

舞台も同様に平安期の建築やインテリアではないようにお見受けしました。どちらかというと、特に陰陽寮は中国文化の影響が強い室内のように見えました。天井も高いし、テーブルと椅子、その他インテリアの感じが中国の宮廷をイメージさせるようなデザインでしたね。かなり主観で判断しているので私の感想が誤っているかもしれません。もしかしたら平安期の陰陽寮はこんな場所だったのかもしれません。

映像について

映像は、とっても綺麗でしっかり作られていました。どうしても海外と比べると日本の映画は予算の関係だと思うのですが、安っぽく見えてしまうことが多い中、『陰陽師Ø』に関しては、しっかり映像が作られていると思いました。呪術を使うシーンや龍が出てくる場面、本当に綺麗で迫力ありましたよ。

まとめ

ストーリー、キャスティング、映像など、陰陽師好きから見て総合的に評価の高い映画でした。勝手に続きがあるのではないかと思っているので、次回作も楽しみにしています。


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