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八月の銀の雪

ジャケ買いと同じように
装丁とタイトルで
手に取る本がある
そしてそれがわたしにとって
大切な1冊となる

自動車文庫
1か月に1度
毎週第3金曜日に
市立図書館から
本を積んだバンがやってくる
予約の本はもちろん
新しい出会いも積んで
そこで出会い恋に落ち
ずっと手元に置きたくなって
買い求める
そういう出会いをした書籍

文庫本にもなって
これは単行本のタイトルになったお話ではなく
海へ還る日をモチーフにした表紙になった
たぶんこのほうがキャッチーなのだろうけれど

わたしは単行本の装丁が好きだ

八月の銀の雪 の一節

知っていますか。内核にも、雪が降るんですよ
 中略
内核は、地球の中心にある、もう一つの星です。
大きさ、月の3分の2ぐらい。熱放射の光をもし取り除けたら
銀色に輝いて見える星。それが液体の外核に囲まれて、浮かんでる。
この星の表面、びっしり全部、銀色の森です。
高さ百メートルもある、鉄の木の森。正体は樹木状に伸びた鉄の結晶です。
そしてその森には、銀色の雪が降っているかもしれない。
これも、鉄の結晶の小さなかけらです。
外核の底で、液体の鉄が凍って生まれる。
それが、内核の表面に落ちていきます。ゆっくり、静かに、雪みたいに。
 
 中略
地球の中心に積もる、鉄の雪‥‥。
ぼくの中にも芯があるとしたら、
そこにも何か降り積もっているのだろうか。
少しずつでも、芯は大きくなっているだろうか。

 中略
「わたし、もっと研究頑張って、聴きたいです」
グエンがそっと言った。
「銀の森に降る、銀の雪の音」
「ーうん」
ぼくも耳を澄ませよう。うまくしゃべれなくても、耳は澄ませていよう。
その人の奥深いところで、
何かが静かに降り積もる音が、聴きとれるぐらいに。



こんな本を読むときは乱雑な部屋じゃ似合わない。

まっしろななんにもない部屋
部屋の真ん中におおきな白いクッション
そこにお気に入りの本を1冊だけ
究極の読書部屋

ものにあふれる部屋にそれは望むべくもないけれど
せめて明日大掃除しよう、と心に誓うのでした。


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