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15年前の歌舞伎町と、今、大阪ミナミの繁華街で。

繁華街で犯罪に遭遇したり補導されたりする若者のニュースが出る時、そのコメント欄には「繁華街になんて行くから」「自業自得」という言葉をよく見かけます。

わたしは15年くらい前に新宿歌舞伎町に出入りしていたことがありました。そのとき、いろんな背景を持つ当時の若者の話を聴かせてもらう機会がありました。

たとえば、親が物を投げてくる。身体をかすかに触られてるような気がする。無視されている。大切なものを壊される。口論になり、家を締め出された日もある。自分の財布から親がお金をとるのを見てしまった。一度保護されたことはあるけど施設は自分に合わなくて、親も望んでたので家に帰ったが、やはり家での時間が辛い。よく眠れない。

全身がぐったりしていて、学校に行くのも一苦労だけど、行ったら「遅刻」と言われる。昨夜眠れなかったから授業中にねむくなり、「真面目にやりなさい」と言われる。親の機嫌が悪い日は、突然耳が聞こえなくなり、学校での喧騒に頭が追いつけなかったり、先生に話しかけられたけど気が付けなくて、「無視するんじゃない」と言われる。

友人は好きだが、ファーストフード店で注文するときの選び方のふとした瞬間に経済的な差を実感する。「親ってこういうところあるよね」みたいな、無邪気な友達の一言に痛烈に傷ついてしまう。なんかもうどうでもよくなってくる。頭の中をうずまくすべてのものを消したい。忘れたい。消えてしまいたい。

そんな中、プラプラしていた繁華街で会った同年代の人に「うちも親なぐってくる〜」って言われたときに、やっと言葉が通じるような気持ちになっても全然おかしくない。自分の体を求められたら嬉しくて全部あげたくもなるかもしれない。 

繁華街でできた関係性は、彼らにとって大切な居場所です。一方繁華街だからこそトラブルの遭遇率も高い。詐欺にあったり、危険なバイトに誘われたり、セーフなセックスができなかったり。もともと頼り先の少ない彼らは、より課題が複雑化し、追い詰められていきます。

※いまは15年前とちがい、SNSやスマホがあることにより複雑性も増していると感じます。昔から若者は繁華街に来ていたと思うけど、SNSでその存在が「見える」 ようになったし、一方、SNSでの犯罪や情報の流れの実態は外からは「見えない」ようにもなりました。

インターネットに書き込まれた「繁華街に行くなんて自業自得」という言葉を見るたびに思います。ほんとうにそうなのかな。ほんとうに自業自得なのかな。わたしは、そうじゃないと思います。環境がかれらをそうさせた。かれらをそうするように追い立てたものが、確かにあった。

認定NPO法人D×P(ディーピー)は、2022年8月から道頓堀の下でテントを立てて、大阪ミナミの繁華街にあつまる一部の若者と関わるようになりました。

そして去年2023年6月、ちょうど1年前、道頓堀から歩いて数分の繁華街のど真ん中に、ミナミのユースセンターを立ち上げました。ごはんを食べたり、ちょっと寝たり、ゲームをしたり。それぞれの過ごし方でエネルギーをためられるように。人によっては面談をしたり、スタッフが一緒に役所や医療機関に同席して、他の人の手がつなげるようにサポートしています。

過去の経験から、大人に対して期待をかけることをやめている若者にとって、だれかを信用すること、福祉や医療につながることはものすごくハードルがあります。周囲から手を振りほどかれた経験が、たくさんたくさんあって、こんな想いをするならもうやめたいし、そもそも誰かを頼るほどの価値が自分にあると思えなくて、徐々に頼り先が減っていきます。

だからこそ、その関係構築や福祉機関につながることひとつとっても、丁寧に進めていきたい。

なので想像以上に時間と労力のかかる事業でしたが、なんと、寄付で成り立っている取り組みです(※初年度は助成金をいただけましたが、現時点では寄付のみです!) 

身の回りには繁華街に繰り出す10代20代はいないかもしれないのですが、社会にそういったひともいることをぜひ知ってほしい。そして、ぜひ寄付で支えてください🙏🙏

あと2日!7/1まで、クラウドファンディングをしています。寄付はもちろん、シェアも、大歓迎です!


※注
ここに書いたエピソードは、言葉をもらった全員に許可をいただいており、個人が特定されないようにすこし詳細を省いて書いています。

暴力や、性暴力、各種依存症の回復には、とてつもない時間がかかります。なので、その方々はそれぞれ、15年後のいまも苦しみが襲ってくる瞬間がたくさんあります。(人により形はちがうけれど)でも、楽しいこともそれぞれの形であります。

生きるのはほんとしんどいしだるいけど、30歳を過ぎた今、ぼちぼちやってくれていることや、「消えたい〜」と連絡をくれることそのものが、わたしは嬉しいです。えらい。よく生きている。

サポートも嬉しいのですが、孤立しやすい若者(13-25歳)にむけて、セーフティネットと機会を届けている認定NPO法人D×P(ディーピー)に寄付していただけたら嬉しいです!寄付はこちらから↓ https://www.dreampossibility.com/supporter/