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天気の話が好きなこと。わかりあえないことからの出発

「自分コミュ障なんで、天気の話しかできない」と苦笑しながら語られることがある。

たしかに天気の話は、話題がなくなったときにやむをえず出す最終カードみたいな存在だ。心強いけれど、なおさら天気の話題しかできないことを恥ずかしいと思うのかもしれないな、と思った。

でもわたしは、天気の話がけっこう好きだ。名前も知らないご近所さんに、「急に涼しくなりましたねえ」とか「日中はまだ暑いので何着たらいいんだか」みたいなやりとりをする。

わたしはこの人のことはなにも知らない。あのへんの家々のどこかに住んでるんだろうなとは思うけど、名前も趣味も知らない。年齢も結構上で、買っているものや話している内容を聞いていると、なんとなく、わかりあえなさそうでもある。

でも、そんな一見わかりあえなさそうな人と、こんなに実感こもって「寒いですよねえ」ってウンウン言い合えるのって、はてしなくすごいことだなって思う。もしかしたら、どこか他にも、この人とわたしで共有できるものがあるかもしれないって思えるのだ。

人間はわかりあえない。完全にその人のことを理解することはできない。自分のことを完全にわかってくれる人などいない。パートナーをもっても、友達がいても、子どもができても孤独は埋まらない。死ぬときは一人だ。

だからこそ、ちょっとでも伝わったときの喜びはなににも変えがたい。天気の話は、「ちょっと伝わるかもしれない」っていう微かな希望をわたしにくれる大切なカードだ。



※平田オリザさんの『わかりあえないことから』という本はわたしにとってすごく大切な本です。よかったら手にとって見てください

わかりあえないことから──コミュニケーション能力とは何か (講談社現代新書) 講談社


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