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マネジャーの「いじわるモード」考

マネジャーの「いじわるモード」について考えている。

特定の誰がどうという話ではなく、様々な組織の課長から部長クラスの方のお話を聴くなかで、どこにでもよくあることとして、マネジャーの部下に対する「いじわるモード」があるなあと感じた。

補足①:「マネジャー」の定義は会社によっていろいろですが、この記事で言うマネジャーは「部下を持っているひと」を指しているので、役職が高くないひとも関係すると思います。

補足②:この記事は特定の個人を想定して書いていません。よくありすぎることを一般化しています。なので「さっちんは自分のことを記事にしてるかも!?」と思ったとしたら100%不正解です。たくさんの方がせっかくわたしのことを信じて相談してくださったのに、その信頼を壊すようなことをしたくないので、すべての方が疑心暗鬼にならないようにとても気を配って書きました。個別案件にも触れていません。

いじわるモードの発生


部下が期日を守らない、会議に出ない、同じことをx回以上伝えたのに改善されない…など、具体的に部下のアウトプットにおいてよくない出来事が重なり、さらにその人の不備分のリカバリーでマネジャーの時間が潰れることが増えると、マネジャーの部下に対するいじわるな気持ちがむくむくと芽生える。

それを他者に愚痴のかたちで伝え、他者から「それはひどいね」と賛同を得てしまうと、この自分のいじわるな気持ちは真っ当であると、正当化してしまう。

正当化を得るとマネジャーの「いじわるモード」は加速して、部下に対してそっけない態度をとるようになる。ときには曖昧なフィードバック(「〇〇の意識が足りない」のような表現)をするようになる。また、部下が成果を出してもバイアスがかかって評価できなくなる。マネジャーの肌感として、「マイナス50点がマイナス40点になっただけでしょ」と思えてしまう。これまでのことは脇に置いて、本件を+10点として評価しないと、本人の成功体験は積み重ならない。

いじわるモードで関わられると、部下の側は居心地が悪いし、自分の負債が解消できず苦しむ。マネジャーの顔色をうかがうようになる。自分の本来の課題にも向き合わなくなるし、本来見るべき「顧客」にも向き合わなくなる。当然成果が出ない。悪循環になってしまう。(トップや上司の顔色をうかがう組織は、ほんとに成長しない。)

いじわるモード予防ポイント

いじわるモードを予防するためのポイントは、①マネジャー自身が、自分のなかにあるいじわるな気持ちを自覚すること、そのうえで、②仕組みづくりに邁進すること だ。

いじわるな気持ちになることそのものは、悪いことじゃない。人間なので。問題は、いじわるな気持ちを、いじわるな関わりに変えてしまうことだ。いじわるな関わりになった時点で、もう自分は加害者になっている。「いやいや、あいつがとんでもないことをするからであって、こっちは被害者だぞ」って思うかもしれない。でも、いじわるな関わりをした時点で、もうあなたは加害者なのだ。(人間って、自分が被害者である認識をするのは容易なのに、自分が加害者である認識をするのは100倍難しい)

次に、受け入れたその気持ちを、フォーマットやチェックリスト、業務フローなどの仕組みをつくることに向けさせる。ある程度そのフォーマットやチェックリストに沿って仕事を進めれば、最低限のクオリティは担保できる装置をつくることに自分の時間を割く。職務権限の整理や業務内容の整理もいい。

「いやいやその時間があればいいけどよ!」と思う人もいるかもしれない。わかるう。そうだよねえ。わたしもその時間がなくて困ってるひとりです。

ただ、ここで言いたいのは、部下のメンタリングや育成に時間をかけるよりは、先にフォーマットづくりをしたほうがいいよという話だ。メンタリングは可能な限り、自分以外の人に振ったほうがいい。同僚のマネジャー(いれば)や、上司やトップ(いれば)にお願いする。

なぜならいじわるな気持ちが芽生えちゃった時点で既にメンターや育成者としての必要な要素が欠けつつあるからだ。それならば他者に託す方法を探るほうが妥当。そして業務フローの整備やチェックリストの精査に力をかけたほうが、「部下の働きやすい環境づくり」に強く貢献できる。

補足③:「育成」なんてとてもおこがましい表現ですね!スキル向上にコミットするような振り返りの機会やインプットの機会など、学びのある環境を指してます。

補足④:なお、部下の側からマネジャーに対する嫌な感情があるなら、これも、メンターや育成者から外れる方向を考えたほうが妥当だなと思うことが多いです。

ちなみに:仕事の振り方のみなおし

ちなみに、これは部下側のたくさんの方とお話をする中で気がついたことだけど、部下のアウトプットの質が上がらない要因のひとつに、マネジャーの業務の振り方が上手とは言えない、ということがけっこうある。

業務の振り方についてはいろんな本に書かれているけど、フィードバックについても言及しているこの本がわかりやすいと思う。(この本は、ほかの章もおすすめ!)

p247にある「指示の5段階」がわかりやすいので、あらためて自分の指示の出し方を見直してもらうとよいかも。
背景⇒業務目標⇒業務要件⇒参考情報⇒(具体的やり方)
・ジュニアレベルのスタッフは背景〜参考情報まで指示
・シニアレベルのスタッフは背景〜業務目標まで指示
・具体的なやり方までの指示出しはやりすぎ
の整理がとてもわかりやすいです。

また、Twitterで見つけたこの図のほうがわかりやすいひともいるかもしれないです↓(このひとはだれなのかよくわからないけど)


どうにもならないとき

いずれにせよ、相手は人間なので、こちらがどんなに創意工夫してもどうにもならないことはある。そもそも相性が悪いのかもしれないし、しょうがない。そういうときは周囲のひとの力を借りて、「自分ひとりで解決しないようにする」を合い言葉にしてほしい。

「周囲のひとなんて誰もおらんわ!」っていう方、お気持ちすごくわかります(わたしの過去の所属組織の最小単位は、自分いれて2人だった…)でも、もうちょっと視点を拡げてみてもらえたら。ひとり頼って裏切られたとしても、もうひとり、もうひとり…と、もう少しだけ頑張ってみてください。案外、誰もおらんっていうこともないもんです。


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