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寝顔

体調がすぐれない日。なんだか頑張ろうと思っても頑張れない日。ベットから動く勇気が全く湧かない日。何かを必死に頑張っている時よりも、頑張りたくても頑張れなくて何も出来ない時の方が断然辛いししんどいし拷問だなあといつも思う。
彼はそんな時に私のそばに居てくれる。手を差し伸べ、ずっとその手を離さないで居てくれる。

今日はお互い違う予定があったからそれまで一緒に寝ていたのだけれど、私が起きた瞬間貧血を起こしてしまって、とっても心配をかけた。でもその時の私は眠る元気しかなくて、またすぐに眠りについた。その間彼は、私の代わりに私の予定をキャンセルする連絡を入れてくれた。そして自分の用事を済ませ、"体調どう?"のメッセージと2件の不在着信を残し、また私の元に戻ってきてくれた。数時間の睡眠によって歩ける元気くらいは取り戻せた私は彼に、その後の友人と会う予定はどうなったのか尋ねると、「断った!」と。そして私がそれに答える間もなく、「今日はあったかいし天気も良いから公園に行こう」と提案してくれた。

いつも通り彼の走らせるバイクの上で彼を後ろから抱きしめた。何とはなしに、彼がくれた私に対しての思いやりを取りこぼさない様にと、抱きしめる腕にいつもよりも力を込めていた気がした。そのまま少し冷たいけれど今の私の目を醒ますには丁度良い、心地良い風を浴びながら公園へ向かった。到着したそこは本当に芝生と植物が居るだけなのに、景色が良くて人がまばらで空気が美味しくて、なんだか懐かしくなる匂いのする、私の大好物みたいな場所。人間ってこうして定期的に外に出て日光を浴びないとすぐダメになって腐ってしまう弱い生き物だなと実感した。

ほんの気持ち程度に隆起した芝生の丘のてっぺんを2人の居所にし、コンビニで買った物達でお腹を満たした後、タバコの煙をふかしながらその公園に集っている人達をぼーっと眺めていた。

空想の世界で遊んでいる娘を幸せそうに見つめるお母さん、体のどこに効いているのか気になってしまう様なストレッチをしているおじいさん、壁にただひたすらボールを当て続けているだけでお腹がちぎれそうなくらい笑っている小学生の男子達。つい癖で急に始まる私の人間観察。

そんなしょうもない事をしているうちに我に帰り、途端に今日の彼の予定を崩してしまった事を反省し非常に申し訳なく思った。そして私は思わず彼の友人に謝罪の連絡を入れようとした。すると、それを察したのか、何も考えていなくてたまたまなのか分からないけれど、ふいに彼が「今日俺が採血したせいで貧血になったから行けなくなったって断った〜」って言いながら見慣れた笑顔を私に向けてくれた。いつも素直すぎるが故に嘘がつけない性格なくせに、こうゆう事をする彼。今思うとやっぱり随分雑な理由ではあるし、友人に嘘を見抜かれてるんじゃないかってちょっと笑えるけれど。笑
一緒に過ごしていく中で、こうゆう私にしか分からない些細な優しさ、彼にしか出来ない優しさを私はこれからも独り占めしたいなあと思う。まあこんな出来事、他人からしたら都合の良すぎる解釈にすぎないのかもしれないな。でも私には特権がある。
長文の手紙を書けば、文章の中で、私宛の手紙なのに自分の話をしすぎていることを毎回謝っているところとか。

芝生の上でこんなにも気持ちよさそうな寝顔が出来る私の彼。

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