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サーキットのコーナーで


昔、サーキットで
バイクといつも
言葉のない会話をしていた。


* * * * *


アクセルを開ける。
全開に。

直線で
シートの後方に座って伏せる。
空気抵抗を減らすため。

リアに荷重をかけるため。
タイヤが
路面をよく食うように。



コーナーが近づいてくる。

決めたポイントに来た瞬間
ブレーキをかけながら
身体を起こす。

減速力を利用して
座る位置は前へ移動。

パラシュートの原理を生かし
空気抵抗でも減速するように
起こした身体も使う。


身体を起こしたタイミングで
両手を伸ばし
荷重を
リアからフロントに移す。


フロントフォークを沈ませ
フロントタイヤを
路面に食わせながら
ブレーキを効かせる。



バイクを倒したい瞬間に
フロントブレーキを離し
フロントの負荷を抜く。

その瞬間
コーナーのインに向けて
飛び込む。

ハンドルがフリーになり
コーナーのイン側に
身体を傾ける分だけ
バイクが向きを変える。

向きを変えた瞬間
アクセルを開け始める。

パーシャルに。
(半開けの状態)

リアブレーキはかけている。
リアに荷重を残すため。

どちらも転ばないための操作。


アクセルを開け始める。
リアタイヤと会話しながら。

スリップダウンしないくらいの
滑って転ばないくらいの加速。

加速力で少しでも身体を後方に。

身体でリアに荷重をかけながら
半分リアが滑りながらでも
アクセルを開け続ける。

リアブレーキは
残したままの時も
離している時もある。



コーナーを抜けたら
腰の位置をセンターに戻して
シートの後方に座る。

直線だ。また伏せる。

風を少しでも避けられるように。


* * * * *


サーキットは風景が変わらない。


そこで見ていたのは
怖さと闘う自分の心の中。

感じていたのは
自分の身体の動きと
連動するバイクの挙動。


そんな非日常な世界を
少しでも
共有してもらえたら
嬉しい。




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