見出し画像

バイクでツーリング 〜後編〜

息子と夫が海で釣りをしている午後のひと時、私はバイクで近くの峠道を走っていました。

20年以上昔、バイクで走った時に、とても印象に残っていた峠道。コーナーが延々と続く峠道は、タイヤの慣らしをするのに好都合だと思ったのも、走りたいと思った理由の一つでした。

本当は、コーナーの先の様子がよくわかるところで、タイヤの慣らしをした方が安全で良いのですが、一般道ではなかなかそうもいきません。

サーキットでは、エンジンやタイヤの慣らしをする時に、背中に色ガムテープで《ナ》の字を貼り、後ろのバイクに、自分が慣らし中だとわかるようにしたよねと、最近、夫と懐かしく話していたところ。そんなサーキットでの暗黙のルールも一般道では通用しません。

タイヤの外側に向けて、徐々に皮むきしていきたいところですが、それに見合った順番でコーナーのRが変わるわけでもなく、自分でバイクの傾きを調整するしかありませんでした。


峠道を4ストバイクで走った印象は、
「オートマみたいだな!」

低速コーナーは、ずっと3速のまま、少しコーナーのRが大きくなった高速コーナーが続くと、ずっと4速のままで走れます。

シフトチェンジが面倒な人は、楽ちんで楽しいバイクと言えるのでしょうが、渋滞のノロノロ運転で、止まっては走り…を繰り返す場面のシフトチェンジですら楽しい、ギアを変えたくてたまらない私にとっては、オートマ走行でも走れてしまう4ストバイクは、《物足りない》のひと言に尽きました。

4ストバイクでシフトチェンジをしながらコーナーを走るためには、もっと直線のスピードを上げておいてコーナー入り口で減速するか、回転数が下がるくらいまでギアを上げておいて、コーナー入り口でシフトダウンするか。。。

ちょっとマニアックな話しになってきてしまいました。でも、私にとっては、これからも4ストに乗っていくのか、「やっぱりムリ!」と諦めて、2ストバイクに乗り換えるのか?結構、真剣な話なのです。


もう一つ。4ストバイクの特徴でもあるエンジンブレーキに悩まされました。

4ストロークエンジンのバイクから、2ストロークに乗り換えると、すごくビックリされると思うのが、低回転のトルクの無さと、エンジンブレーキの無さだと思います。

おそらく、その2つのせいで、「2ストは乗れない」と思う人もいるだろうと思われる、このエンジン特性。この特性のために、乗り方を変えないといけないことが、私が2ストにこだわるもう一つの要因でした。(一番の理由は加速感)

《エンジンブレーキがある》ということは、コーナー手前で、私が思っているよりバイクのスピードが落ちてしまうことを意味します。そのため、アクセルを戻すタイミングもブレーキをかけるタイミングも、2ストロークエンジンのバイクとは違うことを意味しました。

コーナーの進入速度が落ちると、バイクが傾けられなくなります。そして、エンジンブレーキはバイクを立たせる力を持っているようで、それを減らすためには、もっと進入速度を上げてコーナーに入ったり、意識してブレーキやクラッチでエンジンブレーキをカットしたり減らしたりしないと2ストのようなコーナリングはできないのだと気づきました。

だからと言って、コーナーの形状がわからない一般道で色々試すほど、腕に自信があるわけでもなく、慣らしなので無理もできず。

エンジンブレーキがあるとタイヤの接地感が増し、コーナー中もバイクの挙動が安定しました。バイクの傾きをコーナー中に簡単に変えることもでき、Rが変わるコーナーの時は、特に有効でした。

ただ、「安全に走れるバイクだなー」と思いながら、それがやっぱり物足りないのでした。


峠道は終わり、川沿いの直線道路を車の流れに乗って走ります。途中ルートに、また、懐かしい場所を選んでいました。

《夕日を見に行く》と思った時に、真っ先に思い出した場所。

子どもたちが小さい頃、何回か来た場所で、夕日が海に落ちていくのを偶然見ることができました。

その広い海原に、溶けるような色をして落ちていく夕日。

波以外、何も音がない浜辺で、誰も声を発さずに、ただ水平線に消えていく太陽を見つめたあの光景。

いつか、また…と思っていた場所に、1人立った私は、夕日が落ちるにはまだ早い時間ながら、海に落ちようとしている夕方の太陽を写真におさめて、帰りの途につきました。(冒頭の写真です)


戻ると、ちょうど夕日が落ちようとしています。急いで、釣り場に行き、娘を探してまたバイクのもとへ。2人乗りをして、夕日を撮りにポイントへ急ぎます。

さっき通った時が一番綺麗だったようで、それで娘を誘ってまた来たけれど、太陽は既に落ち、水平線上に赤い帯が残っている程度で、さっきの夕日を娘に見せられなかったことが、とても残念でした。

でも、娘は今回、祖父にもらった一眼レフを持ってきていて、楽しそうに周りの景色を撮っていました。

今回の娘の目的は、《お気に入りの風景を写真に撮ること》。雲が大好きな娘は、空を見上げては、雲の色、形、重なりに、毎回感嘆の声をあげるのでした。

私は、あまりの強風にバイクが倒れそうで、停めることができず、またがったまま、周りの景色と娘の様子を見守っていました。


日も落ち、暗くなってきたので、釣り場に戻ります。

釣れない2人はムキになって、暗くなっても釣りたい一心で竿を振っています。

さすがに見えなくなる頃、釣具を片付け、当たり前ですが、周りは真っ暗。今日は日帰りですから、この地に泊まるわけではありません。

夕飯を高速のサービスエリアで食べることにして、暗闇の中、海辺を後にしたのでした。


「そういえば、いつもこうだった…」

暗くなるまで釣りをし、車で帰るなら、それでも良かった。寝てれば、サービスエリアでもうちでも着いたしね。

でも、今日はバイク。海沿いの帰り道は、峠道並みに曲がりくねっています。そして、街灯が無い。

車の後ろを走りながら、暗くてコーナーがよくわからないので、ヘルメットのシールドを開け、車の後を追う私。

車が揺れたら、路面がくぼんでいると判断し、バイクを立てる。ブレーキランプがつき、車速が落ちたら、コーナーがきついと予想して、よく減速する。

前の夫の車で路面状況とコーナーのRを予想して走行。特にコーナー中に水が流れているところが最悪でした。(滑って転ぶから)

夫もわきまえていて、危険な路面のところは、意識してブレーキを踏んでくれて、それを頼りに、私も走っていました。が、暗闇のぐにゃぐにゃ道を走るのは、あまりオススメできないなと、しみじみ思いました。


高速入り口手前に、美味しそうなお店を発見。もし見つけたら入ると聞いていたので、突然のウィンカーにも驚かずに、お店の駐車場へ。

お昼に食べるはずの海鮮料理がいつものコンビニのに変わって、とても残念に思っていたので、喜んで夕飯をいただきました。


当たり前ですが、食べると眠くなります。

これから、夜の高速を走るのか…
朝3時だから、眠たいよ?

私はバイクの運転中でも寝てしまうので、眠いのは危険でした。

運転中は絶対寝ない夫も、眠くて走れなそうと言っています。

最寄りのサービスエリアで仮眠しようということになりました。


高速道路へ。

走り出すと、周りの夜景が綺麗で。今朝は何も景色が見えなくて、ただ暗闇を見つめながら走っていたのとは、雰囲気が違いました。

走っていると、だんだん楽しくなってきて、眠気も吹き飛んでしまい、「仮眠は要らないなー」と思って走っていました。すると、最寄りのサービスエリアを通過。夫も停まりません。

よしよし、目が覚めたんだな。
このまま、自宅までレッツゴー!!

帰りは、霧もなく、路肩の照明が綺麗に並んでいて、行きと同じはずなのに、なぜか幻想的。素敵に見える道路上を走りながら、「また、次出かけるときも、私はバイクで来よっと!」と、心の中で誓っていました。

走行中に全走行距離が500kmを過ぎたので、改めて8,000回転、解禁。じわじわアクセルを開けていくと、今のエンジン状態で時速120kmまで出ました。

車体は安定しているので、もう少しスピードを上げても走行できそうです。朝は、いっぱいいっぱいだった時速100kmが、帰りの今となっては、余裕のスピードになっていました。慣れってすごいです。

ただ、時速100kmを過ぎると、風に上着がバタついて、それが結構体力を消耗するので、革製とかライディング用とかのバタツキを抑えた上着を着た方がいいなと思いました。(持ってたのに、なぜ着て来なかったのだろう?と不思議でした。知ってたはずなのに)


最後は、夫の車と分かれて、単独走行。ETCで自宅近くのスマートインターから降りる夫と、お金を払うインターから降りて、下道で帰る私は、何分違うのか?というシュミレーションを検証しました。

バイクの特権は生かさず、信号待ちでも前に出ないで車列に残る。車と同じ動きを意識しながら、ようやく帰宅。やはり、夫の車は既にありました。

「12分早かったよ!」

娘に言われながら、22:05着。
朝3:55発から、なんと19時間10分後の帰宅。

「初回点検までに、500km走ろう!」と思っていた予定距離も、とうに超えていました。


無事に帰れたことにホッとしながら、ずっと行きたかった場所に、2箇所も行けたことに感謝。

《自分の行きたいところ》に、《自分の思うまま》に、《自由に行ける》バイクの素晴らしさに、「やっぱり、バイクはいいなー」と思ったのでした。


走行時間 : 10時間ほど
走行距離 : 374km
全走行距離 : 597km
初回点検までに、500km走破、達成!!

前編、中編、後編と、長い1日にお付き合いいただき、ありがとうございました。

「こんなことを考えながら、走っているんだなー」と、心の中を共有してもらえたなら、とても嬉しいです!!

そして、場面は一転。今日は火曜日。
今、実は2箇所骨折をしながら、これを書いています。

「noteに書くために、こんなことになっているのではないはず」と思いながら…

『事実は、小説より奇なり』

話題には、事欠かないようで。。。
次は、骨折の話を書く予定です。

(楽しくはないと思うけど)お楽しみに!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?