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富士五湖ツーリング その 13


相模原インターに向かっている。

富士山を一周してきた。
富士五湖を巡ってきた。

1日で一周できるんだな。

五つ目の山中湖から道志みちを抜けて
今は帰り道。

あたりはもう真っ暗だ。


緑の案内板に従ってインターの入り口に向かう。
インターの周りはいつも明るい。

ここで間違いないですよと
言ってくれているような安心感を覚える。

インターの入り口が見えてきた。
入り口を過ぎた後が、緊張の一瞬だ。

複数ある案内板の字を瞬時に読み取り
その行き先を判断、道を選ぶ。

九州では、どっちの地名も向きがわからず
選んだ後、ずっと後悔しながら走る羽目になった。

今回は、厚木とあれば間違いない。
わたしの行きたいのは厚木方面だから。

見落とさないように
地名に騙されないように
覚悟を決めて入り口を通過する。

大丈夫!

知っている地名を見つけ
ホッとしながら道を選ぶ。

本線に入る。
ここからは知った道だ。

高速に乗ってしまえば
曲がり角で間違える心配もない。

厚木の合流は知っている。
ちゃんと東名に入れる自信がある。


知っている道を走る。

それだけで視界は
こんなに開けるものなんだろうか。

高架の上を走る爽快感。
空を飛んでいるような気分だ。

暗く光った相模川と並行している。
川の向こうに夜景がきらめく。

人が多いところは
夜景が綺麗なんだな。

街灯もない山道と比べると
まぶしいくらいの光の連なりに
人の作り出すエネルギーを感じる。

綺麗だなぁ。
心躍らせながら、見つめる。

山道より少し温度の上がった風を感じながら
夜景の中、飛ぶようにバイクを走らせた。


いくつも看板が現れて
分岐が近づいていることを示している。

側道にうつるので車線に気をつける。
看板を見たいのでトラックの前に出たい。

隣の車線の車が加速しないので前に出られない。

結局、トラックを信じて
後ろについて分岐地点の側道に入った。

左に大きくそれ、東名に向かう。
下って本線に入り、東名に合流。

ここからは、庭みたいな感じ。
勝手知ったる地元。家まで間違える要素はない。

街灯が多い。明るい道だ。
そりゃ東名だもの。明るいか。

車もたくさんいる。
人のいる世界に戻ってきた。

海老名。
ようやくここまで来た。

すぐ見えてきた案内板どおりに
海老名サービスエリアへと吸い込まれていった。


海老名サービスエリアは
奥にバイクの駐輪場がある。

こんな時間なのに、いやこんな時間だからなのか
駐輪場はほぼ満車だった。

手前の隙間に停める。
ヘルメットを脱いだ。

夜の海老名を撮る。

どこも満車だ

コンビニで買ったプーアール茶が
あまり馴染めなくて
緑茶が早く飲みたかった。

いつもの席で、いつものお茶を飲もう。

2階のあの席に
疲れた体をゆっくり動かしながら向かった。


店内に入る。
明るい。目がくらみそうだ。

いつものお店が並ぶ。
アップルパイのお店の横に
いでぼくのお店があった。

えっ!?

ビックリした。
牛乳が売ってある。

半日持ち歩いたのに…

リュックの中の牛乳を思った。

美味しかったら、ここでまた買えばいいのか。
いや、そもそも今日ここで買えばよかったのか。

キツネにつままれたような気分になりながら
エスカレーターで2階を目指す。

上って左。通路脇の席。

空いていた!

ホッとして荷物を席に下ろす。
置いておくのは心配で
バイクにくくっていたリュックも持ってきた。

お茶を取りに行く。
いつもコップを2個使わせてもらう。

緑茶が熱すぎてすぐに飲めないから。

ごくごく飲める熱さにするために
もう一つのコップに水を入れて緑茶を水で割る。

緑茶と水を2つのコップで行ったり来たり
その間に熱が移動するのを感じるのが好きだ。

90度の緑茶と20度の水を同じ量で混ぜたら
55度のぬるくて少し薄い緑茶ができる。

そんな実験を楽しんでいるような感じ。

水の量を減らせば、緑茶の温度を上げられる。
そのちょうどいい塩梅を探るのが楽しい。

結局、理科が好きなんだ。
そこに楽しみを見つける人種なんだ。

ぬるく一気飲みできる温度になったお茶を
ごくごくと飲み干す。2杯とも。

すぐに立ち上がって、もう一度給茶機でつぐ。
また2杯。笑 ここからが休憩時間だ。

何か買おうかなと思ったけど
いでぼくで買ったスイートポテトがあるのを
思い出してやめた。

スイートポテトを出す。
小さく整形されてある。黄色くて美味しそうだ。

美味しそう✨

お土産にする案が一瞬よぎる。
その案は消し去って、封を開けた。

美味しい!!

しみる。疲れが癒やされる。

無謀にも夕暮れのあの時間に
知らない峠道を走り切ったことに
改めて安堵する。

結果よければ全てよし

無事に安全圏まで戻ってきた自分を褒めた。


2階に隠れ家のようにある
少しゴージャスなトイレに行き
脇のソファで仮眠した。

体はほどよい疲れで重く
頭はテリトリーに入った安心感で
眠気に襲われていた。

夕飯は用意して出てきたから
何時に帰っても大丈夫。安心して仮眠できる。

寝ている間に盗られないように
ヘルメットを両手で抱え
リュックは肩紐に腕を通して目をつむった。


どのくらい経ったのだろうか。

気が済むまで休んで下に降りたら
駐輪場に人が集まって話をしていた。

隣から数台は仲間のようだ。
日本人ではないアジア系の人たちが
カスタムしたバイクにまたがっている。

見たことのない光景で
不思議に思う自分を不思議に思った。

バイクは道楽だと思っている自分に気がつく。
アジアの人たちは裕福ではないと思い込んでいる
自分にも。

バイクって日本人だけの楽しみじゃないんだ。

当たり前のことに驚いている自分に驚く。
思い込みってこういう風に
ある日、自分に突きつけられるのか。

そのうち一台が合流して
ヘルメットを取ったら女の人だった。

2ストのような気がする。
小さな車体に高い戦闘能力を感じる。
(バイクは戦うものではないのだが。笑)

カスタムしているバイクの仕上がりに驚く。
かなり手を入れている。

ここまで仕上げている女の人は
初めて見るかもしれない。

ジャケットを脱いだ。
体の線があらわになる。

その姿勢の良さに惚れ惚れする。

堂々としていて
バイクにも自分にも自信を持っている。

日本人にはない感性だ。

恥ずかしさか自慢が見え隠れする
日本人女性とは違う。

わたしも、ああありたいな。

羨ましいと思っている自分に気がついた。


リュックをバイクに固定する。
ヘルメットをかぶり、グローブをつける。

準備が終わり、出ようとしたら
彼女は快活に周りの男性と話しながら
脱いでいたジャケットを着ようとしていた。

出発の準備をしているんだな。

仲間たちが順番に駐輪場からバイクを出す。
そのうち、彼女も出発するだろう。

集団の中に混ざらないように
彼らより先に出発した。


高速は混んでいなかった。

これくらい遅い時間に通れば
渋滞していないのか。

新たに知った情報に満足する。
これからは急いで帰ってこなくてもいいんだ。

10時半で折り返して帰ってきていた
今までのことを思う。

これからは、もっと現地でゆっくりしよう。
泊まりで行って、向こうの峠も楽しもう。

高速の街灯も都心に近づくと
より一層増えていく。

綾瀬バス停あたりは車線も増えて
前より走りやすくなった。

大和トンネルを抜ける。
この後の街灯のきらめきが好き。

上り切っての下りにバイクも軽やかになる。

目の前に近づいてくる車は抜いて
空いた車線に入る。

均等に続く街灯の中
ツーリングの余韻に浸る。

夜の高速はいいな。

仮眠を取った体はスッキリと冴えて
走っていて気持ちがいい。

ゆっくり走っていたわけではないのに
右車線をさっきの集団がかなりのスピードで
走り過ぎていくのを見かけた。

その集団の真ん中に
さっきの女性が姿勢良く走っている。

颯爽と走り去るのを
また少し羨ましく見送った。


インターを降り
無事に帰ってきた。

最後はいつも、ガソリンを入れてから帰る。

次、朝イチ出かける時に
ガソリンの心配をしなくていいように。

スタンドがまだ開いている時間でよかった。

バイクに満タンまで
こぼれないように気をつけて
ガソリンを入れる。

お腹いっぱいになったね。

これで、しばらく置いても
タンクの中は錆びない。

錆防止のためにも
ガソリンを入れるのは必須だ。


夜空を見上げながら帰る。

スタンド前の道は、新しくなって
直線が続く。

少し上り坂の直線は滑走路のようだ。

徐々に機体を上向けて
飛ぼうとしている飛行機のよう。

高速と同じような
均等に続く街灯に導かれながら
ツーリングの余韻を楽しんでいる。

静かな夜の道。
右折して住宅地に入った。

家の近くではなるべくギアを上げて。
排気音が小さくなるように気をつける。

無事、帰宅。

そのまま、バイクを隅々まで拭く。

フロントについている虫。
下の方に跳ね上げている泥の跡。
ホイールについているブレーキの粉。

次にバイクを出すときは
走りに行く時だから。

汚れのない姿で
また少し眠りについてもらうんだ。

肩の痛みが取れて、忙しさも落ち着いたら
また走りに行こう。

その時、きれいな姿で颯爽と走れるように。
いつでも走りたい時に走りに行けるように。


次はいつ走りに行けるんだろうか。

冬になる前に
どこかに行けるといいなぁ。

バイクをしまった後
もう一度、夜空を見上げた。

無事を祈ってくれていた夜空に感謝。

ピースが迎えに出てくれている。

ありがとう。ピース!

この時間はもう寝る前の
心地よい自分の時間なのに。

おかえり!としっぽを振ってくれる。
手を出すと、ペロリと舐める。

近づいたらピョンと立ち上がる。
右手に両足をかけて、顔をペロペロと舐める。

ストっと降り立ち、上を見上げる。

目が合う。つぶらな瞳。

ありがとね。ピース。

こすりつけてくる頭を撫でながら
無事に帰ってきたことを実感する。

ただいま。出てきてくれてありがとね。


家に入ると、食卓には誰もいなかった。
みんな食べ終わったようだ。

それもそうか。今、9時半だ。

時計を見て驚く。

お土産を机の上に置いた。

このクッキーがめちゃくちゃ美味しかった

今日の戦利品。
家族のみんなは喜んでくれるだろうか。


noteに帰宅の報告を載せた。

無事を祝ってくれるコメントに
心が温かくなる。


ただいま
無事に帰って来られたわたし


わたしのバイク。
今回もいろんな体験をありがとう。







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