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バイクツーリング 群馬 榛名 その6


高架道路を走っている。
ここはまだ高速道路じゃないと思う。

関越自動車道の入り口。
料金所はまだ先だ。


2車線から3車線になる。
左から車が合流してくる。

両側は目の高さ以上の壁があり
周りの景色を見ることはできない。


車が多いからかな。


少し閉塞感がある道路だ。
でも、道路自体は広い。

環八の谷原付近よりは
流れも良くなり進んでいくが
車の量は少ないとは言えない。



谷原で左折後、右端の車線を走っていたが
料金所にそなえて中央車線に移る。

現金だと大体
料金所で右端は通れないからだ。


3車線の真ん中を走る。
車の流れの中にいる。

水の流れに身を委ねるように
車の流れに乗る。


灰色の壁、アスファルトと車。
時折、壁より高い建造物が見える。

区切られた視界の中で
空だけが色を持っている。

そんな景色。


車にも色があるはずなのに
流れに入ってしまうとあまり感じなくなる。

不思議だ。


用水路の鯉のような
わたしたち。

同じ方向へ走ることで
空気も流れができたりしないのかな。



料金所が近づいてきた。
ETCレーンを避ける。

広がった道路のどこを走るか
よく考える。

あまり急な車線変更はしない。
車の流れに逆らうと危ない。


隣とぶつからないように。


同じレーンを目指してしまうことがある。
隣の車が、気づくと寄ってきている。

前だけじゃなく
左右もよく気をつけながら
前の列に並んだ。


これでもう大丈夫。


前の車が通行券を取る。
それに合わせて、少しずつ前に進む。


わたしの番だ。

機械から出てきた通行券を取り
開けておいたウエストポーチに突っ込む。

すぐにファスナーを閉める。

今回は先の路肩には停らず
そのままスタートする。


よし。上手くいった!


広がっていた道路が一気に狭まる。
ここもまた危ない。

左の道路がなくなっていくから
左の車がどんどんこちらに寄ってくる。

わたしも右に寄っていく。

右の車は目の前の道を直進すればいいから
わたしたちは脇道から本線に移るような
そんな動きをする。


右の車は少し後ろに離れているな。


アクセルを開ける。

バイクが息を吹き返したように
加速し始める。

右の車の前に
邪魔にならない車間距離で入る。


そのまま加速する。
一気に風が起こる。

風を全身で受けながら
周りを見る。

車はそれぞれの速さで走り
一定の間隔で散らばっている。

右を見る。


よし!


もう少しアクセルを開けて
左車線から中央車線へ。

さらに右を見て、右車線に移る。


バックミラーで後ろを確認する。


誰も迫って来ない。


アクセルを一定にする。
ホッとする瞬間だ。

この位置が一番好き。


ようやくひと息つきながら
バイクを流れに乗せて考える。

バイクに乗っていると
こうやって考えることがよくある。


走ることに専念している時と
思考にふけっている時とは
周りの景色の見え方が違う。


周りは見えているし
車の動きに応じて状況判断もできる。

でも、頭の中は違う世界にいて
走っている現実感はとぼしくなる。

周囲との間に
透明な壁ができたような
かすみがかかったような…

意識が考える方に向くからかな?



何を考えていたのかというと・・・


さて、そろそろ休憩かな。


考え始めたのは休憩のこと。
ある場所で買いたいものがある。

休憩しないと
右手がもたない。

環八を抜けたから
出発して1時間ぐらい経つだろう。


バイクに時計がついているのに
慣れなくて忘れてしまい…

今も時計を見ないで考えている。


環八を無事抜けられたことにホッとする。
高速に乗れたことで少し安心する。


高速に路地はない。
Uターンする車もいない。

そのことに、入っていた力が緩む。


今日は混んでいないから
すり抜けなくていい。


さて、あのパーキングはそろそろかな?


買いたいもの。

それは、noteを読んでくれる
みんなに見せたいもの。


緑の看板が見えた。

三芳PAまであと1km


中央車線に移る。さらに左車線へ。

車の後ろに大人しくついて
パーキングに向かう流れに乗る。


あと500m


車の流れはさらにゆっくりになり
前を抜きたい衝動に駆られるが
今、この列から抜けても仕方ないので
辛抱して流れに身を任せる。


側道だ!


ようやく本線から外れ
パーキングに入って行く。


いくつか道が分かれていて
とっさに判断しないといけないのだが
大体パーキングの造りは同じだ。

左端を舐めるように進めば
トイレの前に駐輪場がある。


車速を落とし、駐輪場を探す。
バイクが停まっているのですぐわかる。


あっ。いっぱい…かも。


駐輪場は既に停まっているバイクで
いっぱいだった。

ゆっくり走りながら
隙間を探す。


ないなぁ。


停めるスペースがない。

パーキングは一方通行なので
ここで悩んだら先に進むしかなくなる。


無理かな。


駐輪場を過ぎてしまうその瞬間。

諦めそうになった時に
スペースを見つけた。

駐輪場が終わった先の路肩。
少し余裕がある。


ここは駐車禁止だろうか?


一瞬思ったけど
車スペースにバイクを停める勇気はなかったので
思い立って路肩にバイクを寄せた。


そして停めた。


さあ。勇気を出さないと。


ここからが一番困る時間だ。
何に困るのか?って。

恥ずかしいのだ。
見られている気がして。


これは、被害妄想かもしれない。
勝手な思い込みかもしれない。

でも、ほとんど
女性ライダーがいなかった頃に
走っていた時の名残りで
勝手に湧いてくる感情だ。

だから、わたしだけが感じる
気持ちかもしれない。

きっとそう。



でも考えてみてほしい。

先に駐輪場に停めて
休憩している人たちは大抵
パーキング側を向いて立ち話をしている。


その前を通り過ぎ…

バイクを停める。

「スポーツバイク。珍しいな。」
と見る人がいるだろう。


ヘルメットを取る。

「女性だったのか!」
と驚く人も少なからずいるはずだ。


「一人で?」
と驚く人もいるだろう。


だから、周りが見られない。

ここで堂々と周りを見て
会釈でもしておけばいいのかもしれないけど
無理。


着ているジャケットが古いのも
気になってしまった。

自分が若くはないことも。


女性のリターンライダーって
今もいないんだろうな。


もしかしたら
誰も見ていないかもしれないけど
昔の経験から
見られている気がしてしまい…

恥ずかしすぎて周りを見られず
下を向いてトイレに向かってしまった。



昔は見られてても気にしてなかったなぁ。


どう?カッコいいでしょ!


ってバイクを自慢したい気持ちで
いっぱいだった。


RZの時は
「いいバイクだね。」
ってよく声をかけられた。

ほんとにいいバイクだったから
「はい!」っていつも笑顔で答えていた。

名車と言われていて、でも
『じゃじゃ馬で乗りこなせない』
と噂されているバイクだったので
乗っているだけで自慢だった。


RZで大型車を抜く!とか夢見てた。笑
だから上手くなりたかったのかなぁ。



Wolfの時はいつも峠を走っていたから
ヘルメットは絶対取らなかった。

女だとわからないように気をつけてた。

走りたいだけ、峠を何往復もしたら
そのままその場を離れるようにしてた。

背が高かったので
皮つなぎにライダージャケットを着てたから
多分、女だとは思われてなかったと思う。



トイレに行き
そのままお店に入る。

買いたいものはここにあった。


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いも恋

大好きなおまんじゅう。


わたしにとっては
《いきなり団子》として認知されている。

九州のおやつだ。



学生の頃
短期バイトをよくしていた。

デパートの催事会場で
色んなものを売っていた。


その中で知り合った家族が
九州から出てきている人たちで
子どもたちと年も近く
家族経営でいきなり団子を売っていた。

初めは派遣で入ったそのお店に
次からは直接呼ばれるようになって
色んなデパートに一緒に行った。


いつも、休憩でいきなり団子を食べて…

美味しさにほっぺたが落ちそうで
その美味しさを届けたくて
声が枯れそうなくらいがんばって
道ゆく人に試食を勧めていた。

いつのまにかご縁は切れてしまったけれど。


その後、上京し
榛名に走りに行くようになって
三芳パーキングで初めて
いも恋を見た時の嬉しさったら!


榛名の帰りは必ず三芳に寄る


それは定番になった。


そんな、いも恋。
買おうと思ったら仕込み中で
まだ売っていなかった。


『あと20分でできると思います。』


今、7:20。


帰りに買うことも考えたけど
どうしても今、食べたくて
出来上がるまで待つことにした。








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