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富士五湖ツーリング その5


田貫湖のほとりで休憩している。

今、目の前の景色。

展望デッキから


ここは、ダイヤモンド富士と逆さ富士が
同時に見えるスポットとして有名な場所。

真ん中にダイヤモンド逆さ富士の写真

今日は水面がさざなみで揺れて
逆さ富士は見えない。

昔、おじいちゃんを連れて来たくて
ダイヤモンド富士の見える頃、宿を取ったけど
祖父は体調を崩してそのまま逝ってしまった。

腰の手術が終わり、歩けるようになったら
行こうねって約束してたのに。


おじいちゃんのこと、大好きだった。

わたしの拠り所だったあの家。
おじいちゃんとおばあちゃん。

懐かしい気持ちに包まれながら
富士山を見つめる。

雲をまとう富士山

さっきいたのは、あの雲のあたりだろうか。

雲は、雪のあたりにかかっているから
五合目はそれより下かな?なんて考える。

周りにはポツポツと人が絶えず
みなほとんどが外国の人たちだ。

こんなところを知っているなんて。

驚きの気持ちが湧く。
日本人だって知らない人が多いと思うのに。

田貫湖は、富士五湖には数えられていない。

だから、今日のツーリングでは
プラスアルファの存在だ。

本当は富士六湖なんだよ。

パワースポットだと聞いたことがある
田貫湖を見ながらおやつを食べた。


手前の柵で釣りをし始めた。ルアーだ。

釣竿の先が、ちょうどわたしに届く。
後ろまで行かないように気をつけて投げている。

その緊張がわたしにも伝わってきて
ゆっくりと景色を見ていられない。

ひんやりする日陰で
デッキの階段に腰掛けながら
目の前の釣り人を見ていたら
ここに釣りに来ていたことを思い出した。

いっとき付き合わされたヘラブナ釣り。

スポーツフィッシングと言われる釣りで
気がついたら釣り道具が2セット用意されてて
色んな湖に釣りに行った。

ここ田貫湖もヘラブナが有名で
よく釣りに来ていた。

一度、わたしの方がたくさん釣れた時があり
暗くなっても浮きをライトで照らしながら
必死に釣っている夫を見て笑っちゃったことを
思い出した。

ここはサーキットと共に楽しい思い出しかない。

ずっと来たかったんだ。


もう12時を過ぎた。
お昼はあそこでほうとうを食べるんだ。

そう決めていたのに
もう一つ寄りたいところがある。

寄るのか。諦めるのか。

肩はダルくて、暑さにも参っていたけど
考えるのが面倒くさい。

とにかくここで12時だと一周まわれないと思い
「もう行かなくちゃ」と重い腰を上げた。


木道をまた戻る。
足が重い。ブーツのせいか。

肩が痛い。
リュックはもう背負ってないのに。

木陰から出ることをためらう。

暑い陽射しの中
バイクに戻るのが億劫だ。

ヘルメットを手に
頬を撫でる冷気を感じながら
ゆっくりと歩く。

バイクに乗れば、また風を感じられるだろう。

まぶしい陽射しの中に
思い切って足を踏み入れてみた。


心配していたリュックは
ちゃんとバイクにくっついていた。

くくりつける紐を持って来なかったので
リュックのバックルでリアシートに
くくりつけているだけ。

外そうと思えばツータッチで外せる。

バイク乗りはけっこう世の中の人を信じていて
休憩する時は、ヘルメットも上着もカバンも
みんなバイクにかけて置いて行ってしまう。

わたしには、それができない。笑

ヘルメット置いて行って
戻って来た時なかったら、どうする?
そこからもう走れないんだよ?

帰って来たらバイクもないのでは?と思うくらい
出先でバイクから離れるのが不安なわたし。

昔、学校の帰りに駅に着いたら
駐輪場に置いていたスクーターが
消えてなくなっていたからかもしれない。

みんな、世の中を信じてるんだなぁと感心する。

無事にくっついていたリュックが
走っている最中にずれないようチェックして
ヘルメットをかぶり、早々に発進した。


あっ!

すぐに路肩にバイクを停める。
木陰なのをちゃんと確認して。

次の道順を見ていなかった。
面倒なので、ヘルメット越しにスマホを見る。

これが間違いのもとだったのか。

右、左、右、右、左

曲がる方向と回数を確認し、改めて出発した。


田貫湖は、こちらの道からは見えない。
一周できるのは湖畔沿いのサイクリングロードで
バイクは一周できない。

湖に向かって左の突き当たりは休暇村で
向かって右はお土産屋さんなどがある。

真ん中あたりにせり出している
キャンプ場から見える富士山も見たいけれど
時間が押しているので、そのまま走り去る。

覚えた通りの初めの右。なんだか見覚えがある。元来た道を走っている気がする。

森の中を走る。ここは涼しい。

すぐ来るはずの左の路地がない。
頭の中に階段状に曲がっていた道を思い出す。

ずっと道なりに下っていく。
なんだか変だなと思う。

こんなに真っ直ぐ走るはずないんだけど…

そう思ったら、T字に突き当たった。
ここで左へ。

幹線道路らしき、開けた道を走る。
次は右の路地を探す。

陽射しの方向がおかしい。

背中から陽を感じる。
今はお昼。北を向いて走っているようだ。
本当は東を向いて走っているはずなのに。

また森の中に入った。
見つけた路地を右折してすぐに停まる。

スマホを見た。

あっ。最初の曲がり角から間違えてる。

あの道で曲がるのか。

湖を離れてひとつ目の路地を思い出す。
元来た道を戻って来てしまった。

だいぶ無駄な道を走ってしまった。

暑さのせいか、疲れているからか
頭がぼんやりしている。

とりあえず、ここを起点に
もう一度ルートを覚え直す。

杉木立の中、路肩にバイクを停めて
ヘルメット越しに一生懸命道順を覚える。

記憶力が落ちてるよな。

痛む肩をいたわり
ぼんやりする頭に記憶させながら
今日は朝から全てがクリアじゃないなと思う。

富士山を見た時の感動も
富士山の山肌の色も
ススキを見た嬉しさも
五合目で見た絶景も

全てが夢の中のようで、現実的じゃなかった。

ずっと来たかった田貫湖ですら
感動よりしんどさの方がまさっていたような。


五感が際立っていない。

バイクに乗って五感が際立たないって
どういう状態なんだろう。

バイクの一番の良さはそれなのに。
それなら、車で来た方がずっと楽なのに。

何を見ても感じても
心の真ん中には響かない自分に
ふと不安がよぎった。


お昼を食べてないからかもしれない。

気を取り直して、ルートを頭に叩き込む。
ここから先はそんなに曲がり角はない。

バイクを発進させたらすぐ知っている道に出た。
まかいの牧場近くの道だ。

あれ?また間違った?

不安になり、また路肩に停まる。
自分が信じられない。

スマホを見る。合ってる。
この道を渡るんだ。

信号のない路地から
幹線道路を渡って向こう側に行く。

けっこう怖い作業だ。

両方から車が来ないタイミングを狙って
周りをよく見ながら渡った。


その先は新しい良い道で
気持ちよく流していたらすぐに旧道になった。

すれ違えないくらいの狭さ。
路面は白く、砂がたくさん浮いている。

カーブを曲がりながら
「危ないな」と路面が気になる。

さっきの施設までだけ道を新しくしたんだ。


少し走ると知っている道に出た。

ここは県道71。
だいぶ前に、3台のバイクと別れた道。

あれから1時間くらい経ってる気がする。
こんなに道草を食って、間に合うのかな?

富士ミルクランドのあたりで県道に入ると
少し先で右折して、目的地に向かった。


ここからは何度も通っているので
よく知った道。

そのはずなのに
初めての道のような気がしている。

こんな狭いカーブあったかな?
また、道間違っていないかな?

自分を信じられないと
見えるものまで違って見えてしまうのか。

合っているはずの道をしばらく走り
あたりがパァッと開けたところに
行きたいところがあった。

合ってた。

COW RESORT IDEBOK in 富士山高原

身延に行く時
ここの前で一瞬停まって
富士山を撮っていた。

雪のない夏の富士山

その日はここがお休みで
開いている時に来てみたいと思ってたんだ。

駐車場に入る。
砂利の駐車場で緊張する。

今日の写真

今日は裾野も見える

なんとか転ばずに停めて目の前を見る。
牛が「何かな?」とこっちを向いていた。

のどかな風景

今日はやっているみたいだ。
何があるのかは調べずに来た。

ホットミルクが飲みたいな。
前に飲んだジャージー牛乳を思い出す。

新しくできた様子

お店に入ってみた。

店内は空いていて
カフェテラスもあった。

外の方が気持ちよさそうだったけど
何人か座っているので、室内のテーブルを選ぶ。

お昼はほうとうを食べるつもりだったのに
ここで1時。ここで休憩したら
ほうとうのお店は昼休みに入ってしまいそう。

諦めて、ここでお昼を食べることにした。

ピザは大きくて食べきれそうになくパンにした。
ウィンナーが美味しいことを願って。

ホットミルクとホットドッグ。

パンがフランスパン生地

パンがサクサクしている。美味しい。
粗挽きのウィンナーがパリパリでジューシーだ。

ミルクがサラッと飲みやすい。
濃い目をイメージしていたので驚く。

ここで1時を過ぎている。
工程としては1/3くらい?

富士山を一周しようとしている。
スタートは時計の数字の4あたり。

今は時計の8あたり。

あと3分の2残っていて
朝からすでに8時間経っている。

このスケジュールで大丈夫?
まだ、富士五湖一つも行けてないけど。

やっぱり現実感のない頭で
ぼんやり食べながら考える。

ここで引き返すのか。先へ進むのか。

日帰りツーリングでは10:30で折り返す
と決めていたルールを今回変えようとしている。

そもそも、折り返すのではなく周回するので
進めば家に近づくという現実もある。

頭が働かない。いいや。先に進もう。

家に帰るために、先に進む。

その選択が合っているのか
今のわたしにはわからなくなっていた。





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