見出し画像

バイクで、もらい事故

日曜日の午後。空は青く、気持ちの良い天気でした。

娘を連れて、出かけたいな!

昨日のお出かけで、娘は疲れている様子。
ほっておいたら、いつまで寝ているのか試してみたら、なんと15時に起きてきました。

2人でパンを分けて食べて、だいぶ夕方に近づいてきたけど、試しに娘を誘ってみました。

「バイクで出かけてみる?」と私。
前から行きたがっていた場所と、そこに近い夕日の見られる場所に。

「うん!」と娘。

一眼レフと大事にしている本、タブレットなどをリュックに詰めて、娘が家から出てきました。

「スカートはダメだよ。長ズボンじゃないと」

もう一度、家に戻る娘。
ヘルメットは夫のを借りて。
長ズボンに履き替えた娘を後ろに乗せて、夫が見守る中、スタートしました。

初めは、時速30kmほどで。
住宅街をゆっくり走ります。

バイクにつかまるところが無いので、肩につかまるように伝え、膝でホールドするよう、私の腰を挟ませて、走っていきます。


しばらく走っていくと、徐々に大きい通りに
なってきました。

車の数も増え、信号も続けて並びます。
駅前を過ぎ、海側に向かって、工場地帯に差しかかりました。少し、スピードを上げてみました。時速60kmくらい。


突然、事故は起こりました。
高架を上り、下がり始めた下り坂でした。

片側二車線の左端にバイクが見えました。止まっているようでした。

「こんな高架で止まってるなんて、変だな」

すると、ゆっくり走り出しました。
走り出したのは良いのですが、走り出した方向がおかしい。

こっちに向かって走ってくる。
目の前に近づいてきました。

避けられない!!

覚悟を決めて、ぶつかりました。


私は、意識して、真っ直ぐ目の前のバイクに刺さりました。バイクは縦方向が一番剛性が強いからです。メリっとめりこむ感覚があり、バイクの車速がほとんど無くなるまでバイクから離れずに刺さり続けました。

フロントフォークがいったかも…

でも、フォークが曲がることで、衝撃を吸収してくれます。

ブレーキをかけながら、両手でしっかりハンドルを握り、飛ばされないようにニーグリップで踏ん張り、さらに娘が飛ばされないように背中を張って支えました。

ほとんどスピードが落ちてから、支えていられなくなって、たまらず娘を左側にゴロンと転がしました。

その後、私はバイクと共に右へ。
膝と両手で地面に着地したようで、スピードは無くなっていたので地面にこすらずに済み、すぐに立ち上がり、体を動かしました。

両手、動きます。両足も。
体は動くけど、左肩だけ上がりません。
痛みはありませんでした。

すぐに、娘を確認。道路上に座り込んでいます。太ももから落ちたようですが、ズボンは破れていません。

次に、相手の人を見ました。
自分のバイクに足が挟まって、動けません。

「助けてください」

声をかけられてバイクを起こそうとしたけど、肩に力が入らなくて起こせません。

一旦諦めて、周りに助けを求めました。

同じ車線、後ろから軽自動車が走ってきました。徐行してきたので、手を振って助けを求めたら、目が合ったのにそのまま走り去ってしまいました。

愕然としながら、再びバイクの方へ。
入らない力を振り絞って、バイクを持ち上げ、相手の人が足を引っこ抜くのを助けました。

相手の人は呆然と道路上に座り込んでいました。次の車が来たら、自分のバイクごと轢かれてしまいます。

道路上のバイクを移動しないと!

私のバイクはセンターライン上に、センターラインと平行に倒れているので何とか避けてもらえそうですが、相手のバイクは追い越しレーンを塞いで横倒しになっていました。

私の肩では移動できません。

反対車線に目を向けたら、向こうから走ってきた車が徐行しながら窓を開けてくれて…

「手伝い必要か?」
「助けてください!!」

「バイク移動してください!」


一見、強面のおじさんでしたが、自分の走行道路上に車を停め(私たちの車線の車に異常を知らせるためと思われました)、すぐにこちらの車線に来てくれました。


座り込んでいる相手の人に「路肩に移動しな!」と声をかけて、すぐに相手の人のバイクを動かしてくれたおじさんでしたが、

「俺、あんまりバイクのこと、知らねーんだけどよ。このバイク、スタンド、どこにあんの?」

路肩でおじさんが叫んでいます。

「僕がやりますよ!」

突然、ヘルメットをかぶった人が、笑いながらおじさんの方に歩いていきました。

気づくと、おじさんの車の前方に、一台バイクが停まっています。

バイクのお兄さんも、事故に気付いて停まってくれた様子。おじさんの代わりに、バイクのスタンドを立て、私のバイクも移動してくれました。

「バイク動くから。大丈夫だからな!」
とお兄さんが声をかけてくれました。


「救急車、呼んだか?」とおじさん。
「まだです!」
「早く呼びな!!」

スマホを出し、119をコール。
話そうとすると…まだ、ヘルメットをかぶっていました。

ヘルメットをとろうとしても、肩が上がらず、ヘルメットが脱げません。

「ヘルメットが脱げないんです!脱がしてください!」おじさんが来て、メットを脱がしてくれました。

119番を自分でかけ(よく考えると、怪我人が自分で119番をかけるのは変だなと、あとで思ったが)、場所の説明をする私。動揺していて、うまく説明ができない。見かねたお兄さんが、「ちょっと貸しな!」と電話を代わってくれました。

ようやく場所がわかった様子。
次は保険会社に。

「リアシートの中に、書類が入ってるんですけど」とお兄さんに取ってきてもらう。任意保険の証書のコピーをバイクに積んでいると思ったのに、入っていたのは自賠責保険と車検証だけ。あれ?どうした??

バイク屋さんに電話をして事故を伝え、保険会社の連絡先を聞き、保険会社にレッカーを頼みました。


その頃、娘は路肩に座って、だいぶ落ち着いていましたが、おじさんが車から飲み物を持ってきてくれて、「飲みな!」と手渡してくれました。お兄さんも色々話しかけてくれていました。

「学校、どこなの?」
「○○小学校です」
「あの近くかー!
 明日はちゃんと学校行けるからな!
 お腹空いてきたろ?
 すぐにいっぱい食べられるからなー」

温かい言葉で励ましてくれて、本当に有り難かったです。後で、娘もその話をしていました。


保険会社と連絡がつながった頃、救急車が到着しました。

私を乗せていきたい様子だけど、まだレッカーの手配が済んでいません。

「とりあえず、乗って」と言われ、救急車の中で、引き続き、電話。

普通、こんな状態になるのかな?

警察官の方が見え、左端からUターンを始めたバイクにぶつかったことを簡単に話しました。

警察官の方が、バイクの鍵を渡してくれました。

ハンドルロックがかかっていないと、バイクを持っていかれちゃうけど、ロックがかかっているとレッカーしにくいな。

救急車が行った後、バイクは放置されるの?

警察官の方が、レッカーの人が来るまで、バイクのところにいてくれることになりました。

ちょうど、レッカーの人から電話。
「鍵は必要ですか?」と聞きたかったのに、違う話ばかりされてしまう。
そのうち、救急車が出発。
鍵は私が持っているけど、大丈夫?

ようやく、レッカーの人に鍵について聞けたら、案の定、「鍵は必要です。無いとレッカーできません」

だから、初めに聞いたじゃないかー!!!

「救急車停めて、現場に戻ってください。
 あなたいないと、レッカーできないんで」

ん?順番がわからなくなってきました。

「今更、救急車停めるなんてできません」
「でも、鍵が無いとバイク屋に運んでも仕方ないんで、レッカーできないですね」
「じゃあ、うちになら運んでくれるんですか?」
「自宅なら運びます」
「ハンドルロックしてても車に詰めますか?」
「詰めませんねー」
「クレーン積んでないの?」
「バイクはクレーンで運ばないんです」
「じゃあ、ハンドルロックをしてなかったら、自宅まで運んでください」

使えない。。。


「鍵が必要だから、戻るようレッカーの人に言われたんですけど…」と救急隊員の方に言うと、案の定「それはちょっと難しいですね」と隊員さん。

「普通は、どういう順番なんですか?」
「レッカーが済んでから、病院に行く人もいますね。でも、怪我がひどかったらそのまま病院に運ばれてしまうので、バイクは警察が警察署までレッカーしますね。有料ですが。路上には置いておけませんから」

今後のためというわけでも無いけど、思わず、救急隊員の方に聞いてしまいました。


鍵が無いなら、バイク屋にはレッカーできない。自宅ならレッカーできる。といったのを思い出し、夫に電話をしました。

さっき、事故をしてすぐ、保険会社のことで電話をした時は、夫が動揺していて話が通じなかったので、切ってしまった私。

今度は話を聞いてもらえて、合鍵を現場に持って行ってもらうことにしました。これで、バイクはバイク屋さんに持って行ってもらえそうです。良かった。


救急車は、救急病院へ。
降りて治療に向かいます。だんだん痛くなってきました。座ったり立ったりが痛い。


まずは、娘から。
地面に落ちた時のすり傷のみで、骨折などの怪我はありませんでした。

現場で、お兄さんに「ズボンに血が付いてるよ!」と言われ、慌てましたが、相手の人の血が娘のズボンに付いたようでした。


次に、私。
鎖骨は折れているかも…と思っていましたが、なんと肩甲骨も折れていました。

肩が上がらないわけです。
《火事場の○○力》と言いますが、よくも折れた手でバイクを持ち上げたものです。(それでトドメを打ったわけではないことを祈る…)


「鎖骨は手術になるかもしれません」

確かに、手術の方が早いでしょう。


相手の方の名前は、その場で聞き忘れてしまいましたが、後で警察の方から電話があり、教えてもらうことができました。

110番も呼び忘れましたが、救急車を呼ぶと
セットで警察も来てくれるそう。連携してくれていて、助かりました。


娘がほとんど無傷だったことが、何よりでした。相手の人もあまり怪我はひどくなかったそうで、結局、一番重傷だった私が、現場を取りまとめる羽目になっていた様子。

保険会社の担当の人に事故後の様子を話すと、しばし無言でした…


相手の人は、おそらく初めての事故だったのでは?と感じました。

呆然→放心状態で、(私の呼んだ)救急車で、別の病院に乗っていってしまいました。謝罪はありませんでした。なぜ、あんな所でUターンをしたのか?なぜ、私たちの方を見なかったのか?何もわからないまま、別れてしまいました。


バイクには事故はつきものです。
事故をしないに越したことはありませんが、こうした予想外の出来事があるから、事故は起こるのでしょう。

私は、事故の経験もあるし、バイク屋さんに勤めていたこともあるので、事故の流れは知っていました。

事故が起こったらどうしたらよいか?
せめて、事故後の二次被害は避けるにはどうしたらよいか?

相手の人を現場で見ていて、バイクに乗るなら、せめて、事故から目をそらさずに、事故後のイメージをしておいた方がいいんじゃないかなと思いました。


納車ちょうど2週間でした。

バイクの傷を見に行く暇もなく、どこが壊れてしまったのか、見ることもなく、バイク屋さんに行ってしまった私のバイク。

事故処理に追われたから見られなかったのか?壊れてしまったバイクを見たくなかったのか?

ぶつかる瞬間に、「ごめんなさい!」とバイクに詫びながら、娘と自分の命を優先した私。

「部品は、取り替えたら新品になりますから」と明るく言ってくれたバイク屋の店員さん。

「納車2週間だろ?《新車に交換》に決まってるだろ!」と、私よりも怒っている夫。

でも、全損だったら、あの慣らし中の、手塩にかけているエンジンは帰って来ないのです。

そもそも、周りの反対にあい、二度と乗れなくなるかもしれないのです。


それでも、娘と出かけたことに後悔は無く、(事故が)起きてしまったことに対して最善は尽くせたと、自分を褒めて1日が終わったのでした。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?