見出し画像

児童館デビューしたら、ひどいセクハラにあった話

生後8か月、児童館デビューしてみた。
ズリバイが始まったのに、柵の中から出してもらえない息子。動物のように泣き叫ぶ声。母は腱鞘炎が辛い。もう家で見るのは限界だった。

さち親子、初めての児童館

児童館デビュー1日目は、かなりあっけなく終わった。
まず着いたのが、午前の部が終わる1時間前。そこから使い方についての指導が入り、片付けの時間も考えると、遊べたのは20分程度だった。

児童館には保育士さんが常駐している。
使い方の説明をされる前に、保育士さんが子供に何かを渡した。
きらきらと光るビーズのオモチャ。
わが子は一瞬で虜になり、説明の間必死に噛みついていた。さすがプロ。渡す瞬間すら見逃してしまうくらいの早さだった。

"他のお母さんに話しかけられたらどうしよう"

当初の心配は全く無用のものだった。少ない人数の子どもたちが、完全に個人主義を貫いている。
わが子も初めての場所に戸惑いながらオモチャを噛みしめている内に、1日が終わった。余裕過ぎる。

児童館2日目、事件は起きる

昨日の夜はぐっすり寝てくれた。これは良い。最高。次の日も児童館に向かった。

だが、この日は様子が全く違う。
午後の部が始まった10分後に到着したが、未だに「お昼休みです」という看板がかかっている。
おそるおそる入ってみると、すんなり通される。
そして誰もいなくなった。

忙しそうにしている保育士さんに話しかけることも出来ず、無言で遊ぶ親子。もはや家にいるのと同じであるが、私が緊張している分家よりひどい。

なんやこの辛い時間…

30分後、親子たちが続々と入室してきた。
昨日と同じように個人主義を貫くのかと思っていた矢先、赤ちゃんがどんどん近づいてくることに気付く。

私が振り回していたおもちゃに目が留まったようだ。必死にハイハイで向かってくるその子に対し、わが子はオモチャに全く興味を示さず、空を見つめていた。お~い!帰ってこ~い!

ついに無視できない位置まで赤ちゃんがやってきた。

「すみませんね~…」

お母さんが話しかけてきた。人見知りにとって最高に緊張する場面。それに、私はお母さんに話しかけられることを想定していない。ヤバい。

母親が緊張の一瞬を迎えているとき、わが子はおもちゃの取り合いを繰り返していた。興味が無いものでも、人に取られるのは嫌らしい。人間とは傲慢な生き物だ。

「何ヵ月ですか?」

来た。
ママの間で"おはようございます"よりも使われているあいさつ、"何ヵ月ですか?"

この時の私は、これがママ同士の礼儀だという事を知らなかった。
ママと会話することも、月齢を聞かれることも全く想定していないことだった。

「えっとぉ…あの~…7ヵ月です!」


普通の会話に聞こえただろうか?
えっとぉ~の部分を無視したとしたら、ただの日常会話にすぎないかもしれない。

が、大きな問題が発生していた。
うちの子は8ヵ月だったのである。

緊張しすぎて、自分の子どもの月齢を間違えるという、とんでもないミスを犯してしまっていた。

しばらくして、間違っていることに気づいた。でも、訂正することができない。お母さんはもう遠くに行ってしまっている。

館内なのでもちろん追いかけることはできる。
ただ、ちょっと考えてみて欲しい。

ほぼ初対面の母親がいきなり後ろから近づいてきて、「うちの子8か月です!間違えました!」なんて言っている場面を。

怖い。怖すぎる。先ほどまでちょっとテンパった人だった私の評価が、一気に"不審者"になってしまう。

次にこの人に会うときが子どもの誕生日ということにしよう。

そんな決意をしている間に、また別の子が近くにいることに気付いた。
その子は私に背中を向けていた。特に会話をすることなく、終わろうとしていた。終わるはずだった。

体が不意に、引っ張られた。
ぐいー!と伸びるGパンの上。
中身を思い切り覗き込んでいる女の子。

「うわっ!」

全てに気付いたとき、やっと声が出た。

見られてしまった。
バレてしまった。
私がマタニティウェア(瀕死状態)を着ていることが。
皮製品かのごとく大切に使い込んできたソレを。

赤ちゃんに下着を見られたのは、さほど重要ではない。
自分が汚いと思っている下着が、他人の目に晒されてしまった。
その事実だけで、私のハズカシサは最高潮になった。

「あっ!うちの子がすみません…」
「いえいえ、良いんですよ~可愛いですね~」

なにがイエイエだ。
あとで思い出して悶絶するくせに。

ただ、お母さんから見えなかったのは不幸中の幸いだった。
私の下着は、女の子と私2人だけの秘密になったようだ。ありがとう。

「何ヵ月ですか~?」

また来た。お母さんの定番あいさつ。

"8ヵ月です!!"
次こそ自信満々に答えたかった。
しかし、できなかった。

さっき7ヵ月って言ってしまったよな…もしこのお母さんとさっきの人がめっちゃ仲良しやったらどうしよ…。
この会話聞かれてたらどうしよ…意地悪オバサンやと思われるハズや…


「7ヵ月です!!!!!!」

ムダに力の入った声が出てしまった。
嘘なのに、ほんとは8ヵ月なのに。世界中のムダな発言ランキング上位に食い込む自信がある。ちなみに1位は「今日寒いね~」。

特に会話が続くわけでもなく、「デュフフwww」を繰り返していたら、いつの間にか終わっていた。

私の「デュフフwww」の合間にも、遠くで子どもが泣き叫び、オモチャの争奪戦が繰り広げられている。

児童館とは、本能が渦巻く場所だ。
社会の常識も、同性同士でもセクハラが成立することも関係なく、今日も回り続けているのである。

私の児童館デビューは、終わった。色んな意味で。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?