なんでも言語化する屋さん
わたしはずっと自己紹介が苦手だった。恥ずかしいとかの問題ではなくて、自分がやっていることの要素が多くバラバラで、なんと言ったらいいのかよくわからなかったからだ。
クッキー屋の経営、シングルマザー、あーちんの母、文章を書くこと(自己肯定感のこと)、お店などのコンサル(のようなこと)、バラバラに見えてどれもつながっているのだけど、自己紹介には長くなるし、どれかだけ切り取ると足りない。説明がめんどくさいので何も言わないという場面も何度もあった(社会人としては0点)。
でも、自己紹介ができないとどうなるかというと、何の人かわからないのでどこにも呼ばれない。実際「経営者」として呼ばれたり「文章を書く人」として呼ばれたとしても、どこか違和感がある。
以前、コルクの佐渡島さんにはじめて会ったときに「noteもツイッターも見てるよ。僕はおもしろそうと思った人には会ってみたいから、まずはなんでも仕事を頼むようにしてるんだけど、サクちゃんは何を頼めばいいかわからなくて声をかけられなかったんだよね」と言われた。たしかにクッキーを頼んでもクッキーが届くだけだしな。
どこにも呼ばれなくても困ることはないけど、おもしろい人に会う機会を逃しているのは残念だ。「この人はおもしろそうだな」と思ってくれたときに「呼ぶ理由」がほしい。
そう思って、自分が「何の人」なのか、何をしているときが自分の役割だと思うか、しばらく考えていたら、雑談してるときだなと思い当たった。
わたしにとって「雑談」というのは、あらゆるものを言語化する作業だ。
お店の経営も、子育ても、コンサルも、もちろん文章を書くことも、わたしがしてきたのは「言語化」で、得意なことも役に立ったのもすべて「言語化すること」だった。
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たとえば、あるパティシエが独立してお店を開業するときにわたしがしたことは、彼の頭のなかにあるものを言語化して表に出すことがすべてだった。
はじめは、自分の技術への自信と、「こんなお店をつくりたい」というなんとなくのイメージと、「失敗はしたくない」という不安と、「とにかく頑張る」という気合いしかなかった。
そこから、
・なぜお店を出すのか?・今後どんな生活を送りたいのか?・お金はどれくらい必要か?・時間をなににどれくらい使いたいのか?・見えている規模の範囲はどのくらいか?・誰をよろこばせたいか?・体力はどれくらいあるか?・得意なことと苦手なことは何か?・性分や性格はどんな傾向があるか?・自分は何でよろこぶか?・解決したい課題や不安は何か?
…など、お店とは一見関係ないことを聞きまくり、生まれる前のことから知る勢いで相手に質問をした。それを、箇条書きで質問するのではなく、雑談の中で引き出した。
そうすると、今まで見えていなかった自分の希望が見えてくる。お店についても「それが大事ならこうだね」とひとつひとつ決められる。
同時に、今まで成功した人のパターンを取り入れているだけで自分の考えではなかった部分も浮き彫りになる。
「こうしたいと言ってたけど、これは自分の考えではなかったね」と嘘を見つけるような作業は意地悪だし、しんどいかもしれないけど、お店を作ってから間違いに気がつくよりよかったよね、と言う。(やっぱり意地悪か)
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これを何度も繰り返した結果、「こういうお店をつくりたい」という具体的なイメージと、理由と、何をすればいいかの行動がつながった。
ひとつのお店を作るときの選択肢は膨大で、商品だけではなく、土地の面積から借金の金額から壁の色からコンセントの位置からアルバイトの時給までぜんぶ決めなければいけない。
どんなにおいしいお菓子を作れても、お店をつくるには別の能力が必要なので、その道のプロの業者さんに依頼をする(不動産屋さんや内装屋さんや食材や機材の仕入先など)。それぞれのプロに「これはどうしますか?」と聞かれたとき、先の言語化したものがブレない軸になって、それに合わせてすべてのことを決められる。
内装屋さんに「壁の色はどのペンキにしますか」と聞かれたとき、自由に決めていいからといって全色みせてくださいと言うわけにはいかない。そのときに、どんなお客さんが来るのか、客単価が何円くらいの商品を売るのか、どんな商品が並ぶのか、自分のお店のイメージを明確に言語化したことで、迷わず決められる。「ちょっとくすんだマットな水色のペンキを見せてください」と言うと、プロは理解して選択肢を狭めてくれる。
それぞれの業者さんがどんなに技術が優れたプロでも、依頼者が希望をちゃんと伝えられないと、頼まれるほうも困るし、満足いく仕上がりにはならない。逆に、その道の知識がまったくなくても、大事なことは何なのか、どうしたいのかが言えると、あとはそれに合わせてプロが技術で解決してくれる。
このように、わたしがするのは言語化までで、その先は本人とそれぞれのプロにまかせることが多い。
わたしはこの言語化の作業を、いろんな人に、いろんな場面で、雑談を通して同じことをしている。自分自身にも、子供にも、友達にもしてきた。
「夢組と叶え組」の記事も「やりたいことがない、とは何か」を言語化したら、読んだ人がそれぞれに考える材料になれたことがとてもうれしかった。
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頭のなかにあるものを行動に変えたいとき、誰かに伝えたいとき、とにかく言語化して頭や心と言葉をすり合わせていく。
言葉にできると人に伝えられて、人に伝えられると自信にもつながる。誰かと一緒に目指すことができる。
言語化することでその人の力が引き出されてより発揮できるようになることが、わたしのうれしいことなので、これからもその力を人のために使っていきたいなと思う。
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技術や思いがあってやりたいことが明確にあるけど、具体的に何をするかを決められない人(起業家の方など)や、やることはあるけど、もっと楽しくやるにはどんな方法がいいか考えたい人(すでに経営者やリーダーの方など)の、言語化のお手伝いが得意なので、機会があったらぜひ呼んでみてください。
sac1221@gmail.com まで
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