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諦めて進むことと、そのやり方について

2019年を振りかえってみると、いろんなことを諦めた1年だったなと思う。

何かを選ぶということはそれ以外を選ばないということで、つまり諦めたということは決めることができたということでもある。答えが出ないからと考え続けたり、困っていないからと保留にしたり、決定をしないままのらりくらりとやってきたここ数年だったけど、とにかく今年はたくさん決めた。

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思えば今まで、多くのことを諦めてきた。自分の環境や持ち物やできることを知って、ないものはないのだから仕方がないとサッと諦めて「ではどうするか?」と考えてきた。

諦めることはいつもわたしのスタートラインだった。

わたしがクッキー屋さんの仕事を自分でつくることができたのも、シングルマザーだけど時間とお金がないことで困りたくないから「時間とお金をつくる」と優先順位を決めて、それ以外のことを諦めたからできたことだった。自分のできることの中でしかできないし、持っていないものをほしがるのは時間のムダだと思っていた。

執着をみつけて手放すことで先の行動を決められたし、自分で決めた優先順位を守るためにちいさく諦め続けるのはとても大事なことだった。

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でも、ここ数年で「諦める」のやり方がすこしずつ変わってきたような気がする。

以前のわたしの諦め方では、自分が持っていないものは探してもどこにも用意されていないから、「ない」とする。自分の辞書にははじめから存在しないものとしてマジックで黒く塗りつぶすように、地図を破って捨てるように。視界から見えなくして、見えても自分とは関係ないものとする。うっかり「ほしい」と思ってしまわないように。

これは、やることを明確に決めてよそ見をしないで行動するためには有効だし、ないものをほしがって虚しい気持ちにならないように操作しているので、とても楽だった。

ただ、黒く塗りつぶして元からなかったことにすると、自分が決めた優先順位のとおりに進んできたはずが、次の行き止まりに出会って行き先がわからなくなったときに、振り返ると、そこに何があったのか確かめることができない。

何もなかったことにするその諦め方は、ガマンと同じだったかもしれない。本当はとてもほしくてもほしくないことにして、見えないように蓋をするのは、やはりよくない。

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最近はどうしているかというと、諦めるときに黒く塗りつぶさないように、切り捨ててなかったことにしないようになった。

ないものはない、手に入らないものは仕方がないと考えるのは以前と変わらないのだけど、その「もっていないもの」をポケットに入れて一緒に連れていくようになったのだ。

ないものをポケットに入れるというのはわかりにくいけれど、あるものの中から優先順位を決めてやることを決めて進むときに、やらなかったことや持っていないものや選ばなかったことを捨てずに一緒にいると、それが「本当はほしかったもの」なのか「本当にいらないもの」なのかは進んだ先であとからわかる。

わかったときに、本当にいらないものは捨てればいいし、本当はほしいものはいつか手に入るまでポケットに入れ続けて、機を見て手を伸ばせばいいと思う。

今はその時期ではないから、今できることをやるとか、他のやり方を選ぶとか、一度諦めて手放すことで、必ず新しい道を切り拓くと信じているし、とにかく進むことも必要だ。だけど、「どうせ自分には用意されていないから見ないことにする」とすると、先を見る視界が狭くなる。諦めれば諦める分だけどんどん地図が小さくなってしまう。

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わたしの好きな脚本家、木皿泉さんのドラマ『Q10』にこんなシーンがある。

月子: この世界に永遠はない。いずれ宇宙は終わる。
平太: 宇宙って、終わりがあるの?
月子: 宇宙には暗黒物質が23%、暗黒エネルギーが73%
平太: なんだよ、それ、ほとんど暗黒じゃん。 
月子: 私たちが物質と呼んでるものはわずかに4%。残酷なことに、時間とともに暗黒エネルギーは増えていく。 

平太: 今わかった。この世のほとんどは、どうでもいいことと、どうにもならないことでできている。それは俺たちがどうせ」とか言っているうちにどんどん膨らんでいって、ありとあらゆるものをバラバラにしてしまう。

だから、大切なものは、心から大切だと思うものは、散り散りにならないようしっかりと抱きしめて。二度となくさないように努力して、いつかはなくなると分かっているけど努力して・・・

(中略)

俺は今、宇宙の4%を抱きしめている。

ドラマ『Q10』より


今はどうにもならないことも、頑張っても頑張ってもうまくいかないことも、自分の地図からなかったことにしてはいけない。黒く塗りつぶしてはいけない。木皿さんの言葉を借りると、暗黒を自分で増やしてはいけない。

どうにもならなかった経験がそこに必ず「ある」のだし、諦めてポケットに入れたものも、いつか手に入るときがくるかもしれないと思えば、それはほぼ「ある」と同じなのだと思う。

わたしが今年諦めたたくさんのことも、進んだ先でちがう形で現れるかもしれないから、勇気をもって進もうと思うよ。


今年もたくさんの人にお世話になりました。どうもありがとうございます。地続きの来年もまたよろしくお願いします!

2019年12月31日

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