見出し画像

新旧三つの火山が重なる黒髪山

山岳会古い会報から投稿します。「佐世保近郊の地形と人生」吉富一著書(昭和47年発行)からの抜粋投稿です。同氏は県立高校教師で我が会にも在籍の記録が残っています。

三つの火山

有田より伊万里方面に行く有田川の構造谷は、佐賀、長崎両県の著しい地形の分離線である。長崎県側の単調な溶岩台地に対して佐賀県側の黒髪山は地形の起伏が甚だしく、突○とした山形を呈している。地質上に於いても陶土や黒耀石を含む流紋岩は西部北松浦半島方面には殆ど見当たらない。東部の複雑な地形に見える黒髪山も、地形地質的に見ると大略新旧三つの火山の複合体である。

①西の岳火山  巨大なアスピーテ(盾状火山)

②黒髪山を主峰とする有田流紋岩類の噴出

③青螺山を主峰とする伊万里安山岩類の噴出

最も新しい噴出の青螺山(599米)が最も高いのは、雲仙火山群に於ける最も時代的に新しい普賢岳が最も高いのに類似する。

断面図

1 西の岳玄武岩類(巨大なアスピーテ)

  最高峰青螺山付近を噴出口とする過去の巨大なアスピーテ火山(盾状火山)で、新第三紀末より第四紀洪積世にかかる大火山である。広く北松浦半島全域を覆い、国見山より九十九島方面に傾くゆるやかなスローブは溶岩流動の方向を示すものと言われている。その後、黒髪山方面の火山体の中央は陥没し西の岳玄武岩類は浸蝕され消失しているが、未だ広く北部の城古岳、大野岳、中央部の黒岳、南部の犬走付近に残置している。遠く武雄付近の八幡岳の溶岩残丘もこの大火山の残片である。国見山、八天岳、隠居岳、西の岳を結ぶ線が最も典型的な溶岩で、溶岩が最も厚い点よりとった名前である。

国見山

22.10.11展望台 (3)

2 黒髪山を主峰とする有田流紋岩類の噴出

西岳玄武岩を主体とする火山の陥没後、その地点に新しく噴出したのが、黒髪山を主峰とする有田流紋岩類の噴出である。地質は陶土として白味がかかっているので、容易に他の岩石と区別がつく。有田周辺の山々は岩山が聳え松の緑と相映じて、佐世保市方面と異なる一種独特の風致をそなえている。黒髪山を主峰とする尾根は南西方面に凹面をむけているが、この尾根に包囲される陶化作用の強い事から、ここが火山と推察されている。現在黒髪山下の貯水池付近である。然し噴出口は有田町南部より順次北上して黒髪山下に来たらしい。然し李三平の陶石発見で有名な泉山はこの線よりはずれている。

画像5

3 青螺山を主峰とする伊万里安山岩の噴出

洪積世後期、黒髪火山群の中で最も新しい噴出とみられるもので前述の如く、浸水進まず最も若々しく火山群の中で599米の主峰として聳えている。伊万里市の南に周囲は断崖に限られた急峻な山地をつくっており、青螺山と牧岳を結ぶ稜線は浸蝕されて拡大された火口の北縁をなすものである。伊万里市方面より見ると火口壁の形態がよく観察され、この火口壁より溶岩は北方に流れ下っている。この形態は雲仙火山群の最高峰普賢岳周辺の妙見、国見等の山々が火口壁のように見えるのとよく似ている。南部の火口内部には、火山角礫が見られ、竜門付近の溶岩怪々たる景観は過去の火山活動の烈しさを物語っている。なお黒髪山と青螺山に登ってわかる事は同じ一つの山でありながら、噴出の時代が異なるために岩質の変わるのに驚く。青螺山の方は安山岩であるから黒髪山のように陶土化した白味がかった岩質はみあたらない。この事は植物相とも関係あるようである。流紋岩より安山岩にうつる遷移点は登山中注意するとよくわかる。

青螺山

画像7

まだまだ続きますがこの辺でおしまい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?