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『ジビエート』感想―志の高さが完全に空回りしているクールジャパン案件―

2018年に始動した「和」をテーマにした世界展開を基本としたプロジェクトの集大成としてのアニメ作品。アニメーターとして活躍してきた小美野雅彦さんの初監督作で、小美野さん自身が立ち上げた会社ランチ・BOXのデビュー作でもあります。

プロジェクトの公式HPに、新型コロナの中、延期するかどうか悩んだ上での製作続行・放送したという経緯が書いてありますが、そこを顧慮したとしても、ちょっと駄目な部分が目立ち、今のアニメ業界の問題が詰まっているような作品でした。

まず、HPにあるプロジェクトの心意気を紹介しますと

「最初からグローバルスタンダードを目指した作品を作ろう」というスローガンに基づき、賛同する方々に支えられて陽の目を見る形になりました。

マーベルやピクサーのような最初から全世界の人々が楽しめるコンテンツを作りたい

どこまで理想通りに作れたのか分かりませんが、その結果がこれ!?とツッコまずにはいられない出来で、クオリティ以前に企画・脚本が難ありのレベルで、「和」をテーマにといっても完全に外側をそれっぽく飾っているだけで、中身は外国人が適当にイメージした「SAMURAI!NINJA!YAKUZA!」を元にして作ったような勘違いB級作品と大差がなく、マーベルやピクサーから何を学んだのかと疑問に思います。

企画者・作者の青木良氏のインタビューを読むと、割とちゃんとしたことを言っているのですが、皮肉にも自ら作家主導のような形にした結果がこれというのは、残念ながらセンスがないのではと言わざるを得ません。

「和」や「武士道」という点では、ジャンルは違いますが、海外のクリエイターが作ったゲーム『Ghost of Tsushima』と比べると、向き合い方の違いが明確で、しっかり世界観が作り込まれており、人物もクセがありつつも魅力的でそれぞれの生き様に引き込まれるように出来ています。

注:以下ネタバレあり



一方、ジビエートは、雪之丞のエピソードが少し良かったぐらいで、全体的にクセがなさすぎて魅力的に映らず、安っぽい薄いドラマの展開が目立ちます。

アイリーンの母親のやられ方にしても、ご都合的で、なんで外に出しておくんだという周囲の不注意によるもので冷めるし、序盤から明らかに怪しかった博士の正体も、取ってつけたようなトンデモ設定で、裏切って対決する理由も理不尽な逆ギレでしかない。あげくに、ジビエに変貌した姿は普通の武器は何も受け付けない強さだったのに、弱点の電気を食らって完全体に進化したと思ったら、カミカゼ爆弾ドーン!顔面に剣がグサー!スッパリ斬られて、進化前の方が強かったやん!という、しょうもないやられ方で拍子抜け。

一応、これが第一弾ということらしいですが、二弾があるとしたら、青木さんはプロデュースに徹して、原作などは別の才能のある方に任せた方が良いでしょう。

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