秋山選手の移籍の影響を今更ながらに考察する

2019年オフ、ライオンズの不動の1番打者だった秋山選手がメジャーへと活躍の舞台を移しました。1ファンとしては秋山選手の活躍を願うとともに、リーグどころか歴代でも最上位クラスの先頭打者の離脱に打線は大丈夫だろうかという懸念がありました。
そして実際に2020年・2021年とライオンズは得点力不足に大きく苦しめられています。1試合当たりの得点は2019年は5.29点と圧倒的だったのが2020年では3.99点、2021年では3.38点(5/15現在)と右肩下がりになっています。
2018年に浅村選手が移籍した時に比べ目に見えて得点力が減ったので秋山選手の移籍の影響をより大きく感じているライオンズファンも多いのではないでしょうか。
そこで今回は秋山選手の移籍の影響を様々なデータから検討していきたいと思います。

1.秋山選手不在による直接的な得点の減少

まずは単純に秋山選手がいなくなることによる影響を考えてみましょう。
秋山選手は移籍直前の3年間の間以下のような成績をマークしました。

2017 .322 25 89 OPS.933
2018 .323 24 82 OPS.937
2019 .303 20 62 OPS.864

どの年もリーグ最上位クラスの打撃でチームに多大な貢献をしました。
2019年は少し数字を落としていますがそれでもリーグで十指に入る成績です。
それではさらに具体的に秋山選手の移籍の影響を測るためにRCという指標を見ていきましょう。
このRCというのはRun Createdの略称で和訳すると得点創出、つまりはその選手が作り上げた得点という意味になります。
チーム全体のRCはほぼ得点数に一致しており、ある特定の選手がどれだけ得点を作っていたのかを測るには大変便利です。
では秋山選手のRCはどれほどだったのでしょうか。同じく移籍直前の3年間を見てみましょう。

2017 RC 123.3 (リーグ1位)
2018 RC 127.5 (リーグ1位)
2019 RC 109.5 (リーグ2位)

もういうことのない成績ですね。つまりは秋山選手がいなくなるだけで(代わりの選手が打率.000など全く打たない場合)100点以上の点が失われるということになります。もし秋山選手の代わりの選手が平均並みの成績だったとしても、2017年・2018年だと50点ほど、2019年の成績でも30点以上減る計算となります。
実際のところ秋山選手の分の打席はスパンジェンバーグ選手と鈴木選手が埋めましたが2人合わせてRCは約75で、得点は30点以上減りました
2020年に直すと15点ほどの減少になります。
そして1試合当たりの得点に直すと2020年だと0.25点、2021年だと0.16点減る計算となります。
しかしこれだけでは2019年と比べて1点以上減った得点を説明できません。
そこで別のアプローチから見ていきましょう。

2.ランナーとしての秋山選手の源田選手への補助

次に考えるのが打者としての秋山選手ではなく走者としての秋山選手です。
秋山選手は盗塁は上手いとは言えませんでしたが、俊足のランナーではあったのでバッテリーとしては警戒をしていたと思われます。すると当然(?)直球が増えることが予想されます。
実際に今年の源田選手への配球を確認すると直球の割合は
ランナーなし 47.4%
ランナー1塁  61.0%
とランナーが1塁にいるのといないのとではかなり割合が変わっていることがわかると思います。
源田選手は直球を

2017 .294 
2018 .305 
2019 .305 
2020 .316 
2021 .333 

とよくとらえているので直球を多く投げられる環境(俊足のランナーが1塁にいる)というのは源田選手に好影響だったと考えられます。
実際に源田選手の通算成績だとランナーなしのときの打率は.263でしたがランナー1塁の時は.280まで上昇していました。
つまり源田選手の前に俊足の秋山選手がいたということは源田選手にとって好影響だったといえます。

となるとあとは強力な秋山選手の出塁力を調べ移籍の前後でどれだけ源田選手のランナー1塁の割合が減ったかがわかれば、源田選手への影響がわかるはずです。
そこで全打席に占めるランナーなし1塁の打数の割合を調べると大きな違いが見られました。
なし/あり
2017 55.1% / 17.6%
2018 56.9% / 17.8%
2019 57.0% / 21.1% 
~秋山選手の移籍~
2020 64.1% / 14.7%
2021 70.2% /  9.9%

秋山選手の移籍前後で非常に大きな差になっていることがわかります。
それではどれぐらいの悪影響が出ているのかを打率で考えていきます。
源田選手の2020年と2021年の直球の打率は上記の通りであり、ランナーなし・ランナー1塁・ランナーなしと1塁の合算の打率はそれぞれ
2020 .274・.313・.281
2021 .277・.317・.289
となっています。もし2019年までと同じぐらいのランナーなし・ランナー1塁の状況があった場合、源田選手は合算の打率が2020年・2021年それぞれ.284・.296となります。
つまりは源田選手は秋山選手の移籍によるランナー状況の変化により大体毎年.005ほど打率を損していることになります。
具体的にはヒット1本ほど年間で損しており、チームの得点としては1点ほど減らす効果になります。

3.投手のマーク

それでは最後に秋山選手がいなくなることによるマークの集中について考えていきます。
仮に投手の各打者への警戒度を9人で100%、過去3年のOPSを基準として計算した場合2019年は警戒度の順だと
1位 山川選手 13.8%
2位 秋山選手 12.9%
3位 森森選手 11.9%
となります。100%を9人で均等に割った場合11.1%になるので山川選手は過剰に2.9%分警戒されているといえます。
ここで秋山選手が平均的な打者に変わった場合はもちろん山川選手や森選手への警戒は上がります。
仮定の上に仮定を重ねますが山川・森選手への警戒は0.4%も上がります。
これは過剰に2.9%警戒されていたのがさらに3.3%へ上がることを示し、相手投手の警戒が0.4/2.9=13.8%も増えることを意味します。
この警戒度の上昇はいい打者ほど大きいため、山川・森・中村・外崎・栗山選手の順で警戒されたと考えられます。
先述したRCで各打者の得点生産を見てみても

2019/2020(2019は試合数を2020年に合わせて計算)
山川 87.7/55.3 ⇩ 32.4
森森 90.7/45.3 ⇩ 45.4
中村 75.6/29.4 ⇩ 46.2
外崎 80.0/55.5 ⇩ 24.5
栗山 40.3/57.8 ⇧ 17.5
源田 54.6/51.8 ⇩   2.8
金子 43.9/28.8 ⇩ 15.1
木村 31.0/29.8 ⇩   1.2
合計⇩150.2

と警戒度の上位の選手ほど成績を落としていることがわかります。これを持って警戒度の上昇で得点が減ったというのはいささか早計です。
しかし年齢を考慮しても山川・森・外崎選手のRCが顕著に落ちたことを説明できず、ちょうど相手の警戒度の上昇と比例していることからいい打者ほどマークをされて成績を落としたことをある程度は示しているのではないかと考えられます。

まとめ

ここまで秋山選手の移籍の影響を考察してきました。
まとめると
①秋山選手からスパンジェンバーグ選手+鈴木選手に変わったことでチーム全体で15点得点が減った。
②秋山選手の出塁力と脚のプレッシャーがなくなることで源田選手が成績を落とし、チーム全体で1点ほど得点が減った。
③秋山選手の離脱に伴う各打者へのマークの増加でいい打者ほど成績を落としたと考えられる(合計150得点以上既存の打者で減った)がその度合いは不明。

となります。

ここで大切なのは③の各打者の打力低下は単純な秋山選手の離脱よりもはるかにインパクトが大きいということです。
つまり2019年から2020年以降での打力の低下は秋山選手がいなくなった直接的な得点の減少は概ねスパンジェンバーグ選手がカバーしたものの既存の選手の成績低下により圧倒的にチームの打力が低下したことを示します。

残念ながら私は2019年以前のデータを持っていないので、どのようにマークをされて成績を落としたのかを証明できませんが成績を落とした要因は色々なデータから推察できます。
なので次からは各打者の成績低下の要因について考察していきたいと思います。
対象は森・山川・中村・外崎選手です。
今後彼らの打撃について考察してきますのでもしよければ今後も見ていただけると嬉しいです。

それでは( ´Д`)ノ~バイバイ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?