甲子園のスター岸潤一郎はレオのスターになれるのか

今年も暑い暑い夏、甲子園が始まりましたね。
今年は大雨のためなかなか思うように試合ができず、なかなか日程が大変なことになっていますが高校球児たちには暑さにも雨にも負けず最後まで怪我無く頑張ってほしいものです。
さて、そんな甲子園ですがライオンズには優勝を経験した選手が何人も在籍しています。
特に
・2年生ながら前橋育英にてエースとなり優勝投手となった髙橋光成選手
・作新学園にて半世紀ぶりの優勝の大黒柱となった今井選手
・大阪桐蔭で現阪神の藤浪選手とともに春夏連覇を成し遂げ4期連続の出場を果たした森選手 
あたりが有名でしょうか。
彼らは甲子園にてスターになり、そのままプロの道を歩むこととなりました。
しかしライオンズには甲子園優勝こそならなかったものの彼らに負けず劣らずの甲子園スターが在籍しています。
現在外野のレギュラーを奪取せんと猛アピールしている岸潤一郎選手です。
岸選手は上記の3選手のように高校からすぐにプロ入りせず、大学を経験しさらに独立リーグを通してライオンズに入団しました。
大学では故障を経験し中退をするなどかなりの苦労人でドラフト会議での指名も8位となかなか順風満帆とはいかない野球人生でしたが、昨日(8/20)は完投した山本由伸選手から一矢報いる本塁打を放つなど外野レギュラーに一歩一歩近づいています。
野球人生の中でも大きな岐路に立っているといってもよいでしょう。

今回はそんな岸選手を様々な角度からデータ的に分析し、彼の持っている強み、そして弱みを確認しつつ彼の今後の可能性や期待についても考察していきたいと思います。

1. 岸選手の基本成績

それではまず岸選手の基本成績を確認してみましょう。

試合数    52
打席数  132
打率  .246 (126-31)
本塁打      6
打点     10
三振     21
四死球      6
出塁率 .280
長打率 .421
OPS  .701
三振率 15.9%
四球率   4.5% (8/20現在)


ライオンズの中では6番目に本塁打が多く、栗山・スパンジェンバーグ選手よりも多いなどちょっと意外(?)なパワーを見せています。
長打力を示す指標であるIsoPでも.175と平均である.130を大きく上回る成績を残すなど長打力に関しては見事なものといえます。
三振率も平均が約20%ほどであることを考えると優秀な成績といえますね。
反面、前に分析した愛斗選手と同じく四球率が低く出塁面は弱みとなっています。

簡単にまとめると
①長打力は優れる
②三振は少ない
③四球も少ない

という風に言えます。愛斗選手に近いですね。
それでは上記の①~③について深堀していきます。
まず②と③ですが、これは勝負が早いためという可能性があります。
しかし岸選手の1打席あたりの球数は3.84と平均と同じで愛斗選手のように勝負が早い選手というわけではないことがわかります。
愛斗選手は選球眼が悪いことと勝負が早いということから③の弱みを持っていましたが、岸選手の場合は少なくとも勝負が早いということはなさそうです。
また、特別勝負が早いわけでもなく②の三振が少ないという特徴を持っているため、岸選手のカウント管理力というのはなかなかのものがあると言えます。
愛斗選手と簡単にまとめた特徴は一致(※)していますが中身は全くタイプの異なる打者ということができそうです。

※愛斗選手の簡単にまとめた特徴は
①長打力に優れる
②三振が少ない
③四球が少ない

2. 詳細成績

ここまでで大まかな岸選手の特徴はわかりました。
ではさらにどの球種・ゾーンが得意なのか、または弱点なのかを見ていきます。
以下の表は各球種ごとに空振り率やOPSなどの詳細なデータを取ったものです。

画像1

数値があまりに多いのでこちらで簡単にまとめますが、もしご興味のある方は細かく見てみてください。

まとめると
①左右で特に苦手も得意もない
②空振り率は平均的
③ボール球スイング率スイング率は低い
④ストライクゾーンに投げられる割合が高い
⑤対左には直球とフォークを捉えている
⑥対右にはスライダー・カーブといった横系変化球に強い

という特徴があることがわかります。

この③のボール球スイング率が低いというのと④のゾーンに投げられる割合が高いという特徴から、愛斗選手とは全く異なりボール球を振ってしまうからではなく、相手がゾーンに投げてくるために四球が取れないということができます。
愛斗選手はボール球スイング率が高いため四球に関する期待値はあまり高くありませんが、岸選手の場合は②の空振り率は平均ということもあり今後四球をどんどん奪っていく可能性も十分にあるということができるでしょう。

それでは次に対左・対右に対してのアプローチを見ていきます。
まずは左投手相手の時です。

対左_batter

この図は左投手相手の時のマップデータになります。右上が空振り率、左下が長打、右下がボール球スイング率を示しています。強みな部分は赤く、弱いところは青色になっています。

長打データから分析すると岸選手はベルトの高さにツボを持っていることがわかります。加えてやや外目の球も得意としているようです。⑤の左には直球とフォークに強いという特徴も踏まえてみると甘く入ってきた球を逃さずにとらえる能力に長けているといえるでしょう。
ただインローを中心にインコースや低めはあまりうまく打てていないことやカット・カーブは上手く打てていないことから、食い込んでくる球を上手く前にはじき返すという面には課題があるように思えます。
しかしながら空振り率やボール球スイング率を見る限りではそのあたりのゾーンにむやみに手を出す、ミートができないということはなくこれらのゾーンも明確な弱点になっているわけではなさそうです。

アプローチに関しては問題がないため、あとは肘の使い方などのちょっとした打撃改善さえできれば左をより打つことも可能なのではないでしょうか。

それでは同じようにして右投手へのアプローチを見ていきます。

対右_batter

長打データから分析するに、左投手相手の時とは違いインハイとど真ん中を中心として高めと真ん中のゾーンにツボを持っていることがわかります。
また対左のときは高めのボール球では空振りが1球もなかったのに対し、こちらでは高めのボール球のゾーンで少し青みがかっています。このことから高めに目付をしており直球を狙っていると考察することができます。
⑥にあるように右投手にはスライダー・カーブといった横系の変化球に強いですがこれはアウトローに逃げていく球を上手く拾っているのではなく、高めに抜けた球を高めに目付をしていたがために半速球としてとらえらているのだと思われます。だからこそ右投手相手の時本塁打が多いのでしょう。ストライクゾーンの高めで多く空振りをしているのも目付が高めにあるからだといえます。

高めにかなりの強さを誇る岸選手ですが、反面アウトコースや低めはかなり苦手としています。
低めのボール球はそもそもほぼすべての打者が苦手にしているため別に青くても問題はない(というかボール球スイング率は低めにしてはかなり低い)のですが、問題は長打データが赤くなっていないことです。

画像4

この図は岸選手がどこに投げられているかを示していて赤い所ほど多く投げられています。
ここから分かるように右投手が相手の場合、相手は高めにあまり投げこまずアウトコースを中心に配球しています。
岸選手はここまで対右相手に1個も四球を奪えていませんがその要因は④で述べたようにゾーンに投げられまくるからです。
対左には平均以上に選べているのですが、これは岸選手の得意ゾーンと投手がよく投げるゾーンが一致しており相手が警戒してゾーンに投げる割合が平均にまで落ちているからです。
逆に対右では得意なゾーンと投手がよく投げるゾーンがまるでかぶっておらず、相手にあまり警戒されることなくゾーンに投げられまくっています。なんと平均よりも9%も多くゾーンに投げられておりこれでは四球を奪えないのも無理はありません
今後相手の警戒度を上げ、対右でも四球を奪えるようにするためにも、選手としての幅を広げるためにも岸選手には対右に対してアウトコースのボールもしっかり打てるようになりたいところです。

3. 岸選手の今後の可能性とかけられる期待

さて、ここまで岸選手の打撃へのアプローチを見ていきましたがこの項目では彼の今後の可能性と期待について述べていきます。
今後の可能性とは現在1軍で平均レベルの打撃を見せている岸選手が今後どのような成長を遂げるのかの考察です。
岸選手の年齢は現在(2021/8/21)24歳でなおかつ2年目の選手と考えると独立リーグ出身ではありますが、概ねには大卒の選手と同じように考えられます。
そこでここ10年のライオンズの大卒野手と今の岸選手を比較していきます。
ここ10年(2011~2020)の間でライオンズから指名された大卒野手は以下の10選手になります。(育成は除く・敬称略)

2011 5位 田代
2012 3位 金子
2013 2位 山川
2014 3位 外崎
2015 7位 呉
2018 7位 佐藤
2019 8位 岸
2020 1位 渡部
         4位 若林
         6位 ブランドン

ほとんど毎年獲得していることがわかりますね。
岸選手以前に指名された選手のの2年目の1軍での成績は以下のようになります。

田代  8試合 1.000(   1-   1)   0   0    
金子 91試合  .247(243-60)   2 16
山川  1試合 1.000(   1-   1)   0   1   
外崎 37試合  .176(  51-  9)   2   5
呉呉 15試合  .231(  39-  9)   0   4
佐藤 出場無し
岸岸 52試合  .246(132- 31)  6 10

このことから分かるように大卒の年齢の選手としてはかなりの成績を残しているといえます。打率こそ金子選手に負けてますが金子選手には足があったのでそれを踏まえると純粋な打撃能力では1番といっていいでしょう。
この中で不動のレギュラーといえば外崎・山川選手ですが、彼らは2年目の成績こそ振るいませんでしたが3年目からは素晴らしい打撃を見せレギュラーへの足掛かり、もしくはレギュラーへと定着しました。
そんな彼らは2軍成績が圧倒的でした(※)が岸選手の2軍成績は彼らと比較すると非常に不安の残る成績(.170 2HR OPS.562)のように見えます(下図参考)。
しかしながらより本質的な打撃である空振り率やボール球スイング率、IsoPは悪くなく、1軍でも通用する水準でした。
なので前述したような課題さえ克服できれば外崎・山川選手のような不動のレギュラーになることも夢ではないでしょう。

画像5

            岸選手の2軍テーブルデータ
※外崎・山川選手の2年目2軍成績
外崎 56試合  .293(198-58) 12 31 OPS.938
山川 75試合  .283(247-70) 11 47 OPS.888   


それでは最後に岸選手にかけられる期待について述べていきます。
現状、西武の外野は焼け野原というほかない惨状です。

2021 前半戦 西武

これは前半戦終了時のライオンズのポジション別の強み・弱みですが外野3ポジションすべて(特にレフトとセンター)で大幅なマイナスとなっています。
黄金期の時から外野は内野に比べ弱かったライオンズでしたが、栗山選手の衰えと秋山選手の移籍、金子選手の不調と相まってここ2年は致命的ともいえるチームの弱点となっています。
このような惨状ですし、前述の選手の年齢(栗山選手:37歳・金子選手:31歳)を考慮するとまだ若い岸選手が外野のレギュラーに定着してくれることはチームにとっても非常に大きな意義を持ちます
打撃力のある岸選手には是非ともレギュラーに定着してもらい、チームの弱点を消してほしく、他のレギュラー候補である川越・鈴木選手と同じくチームで一番ともいえる期待がかかるところです。

そのためにも守備能力の向上が待たれます。岸選手は高校時代は投手で外野を本格的にやったのは独立リーグごろからなので本職の鈴木選手やそれこそGG賞も視野に入る愛斗選手と比べると打球判断などに不安があります。
こちらはプロに入ってからですが同じく投手からコンバートされた木村選手や糸井選手はなかなか守備で安定した成績を残せませんでした。
岸選手はセンターを守っているためなおのことそのハードルは高くなります。
レギュラー定着には少なくとも穴にならないだけの守備は欲しいので打撃と同じく改善が期待されるところです。

4.まとめ

ここまで岸選手についてまとめてきました。
大まかにまとめると岸選手は
強みとしては
①明確に苦手なゾーンはない
②アプローチがいい
③甘い球は逃さず本塁打にできる

というところが挙げられます。
反面弱みとしては
①左の食い込んでくる球を打てない
②右投手の外の球を打てない(打たない)がために四球が奪えない
③守備が不安

といったところになります。
そしてライオンズの外野は至急戦力の台頭が望まれる環境であり、そんな中で2年目のわりには非常によく打っている岸選手は次世代のレフト・センターレギュラーの筆頭候補です。
甲子園でスターになった時のようにライオンズの窮地を救うレオのスターになれるのかどうか、岸選手には注目が集まりますね。

もしよければ前述したような課題も踏まえてみるとただ観戦しているよりも面白いかもしれません。試合を見る機会があれば左投手の食い込んでくる球にどう対応するのか、右投手のアウトコースの球を打てるのか注目してみてはいかがでしょうか?



それではここまで見てくださりありがとうございました。
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それでは ( ´Д`)ノ~バイバイ

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