広島ドラフト1位の栗林選手はなぜ新人記録を打ち立てることができたのかをデータ的に考察する

昨年からの感染症の影響で9回打ち切りとなった2021年シーズン、リリーフ投手の早期投入が予想されるためリリーフが強力な西武や中日などが有利になると予想されていた一方で、昨年救援防御率4.64と後ろが不安定だった広島はドラフトでリリーフ向きの投手を指名したとはいえやや不安が残るとされていました。

しかし実際にシーズンが始まるとそのルーキーたちが活躍。
ドラフト1位の栗林選手は防御率0.00 14試合登板
ドラフト2位の森浦選手は防御率4.32 11試合登板
ドラフト3位の大道選手は防御率3.09 12試合登板

森浦・大道選手は一時期よりは数字を落としてしまいましたが登板数が多くルーキーとしては十分な貢献。そして栗林選手の圧倒的な活躍により、救援防御率は2020年の4.64から3.16と大幅改善リーグ2位になり弱みだった後ろがむしろ大きな強みに変貌しました(2021/5/6現在)。
ドラフトは現時点では100点満点といっても過言ではない出来といえるでしょう。
特にドラフト1位の栗林選手14試合連続無失点という新人記録を打ち立てるなど、佐藤選手(T)、牧選手(DB)など粒ぞろいの今年のルーキーの中でもトップクラスの活躍をしています。

今回はそんな栗林選手についてデータ的になぜ14試合連続無失点ができたのか、その要因を探求していきたいと思います。

1. 基本成績

まずは最初に基本的な指標から見ていきましょう。

①基本成績
0勝0敗0H8S
試合数 14試合登板
イニング 14.0
防御率  0.00
奪三振率 13.50
与四球率  2.57
K/BB     5.25
被打率  .070
WHIP   0.50


どの指標を見ても完璧としか言いようのない内容です。極めて優秀な被打率だけでなく、制球面にも優れ平均の倍近くの奪三振力と平均以上制球によりK/BBは球界屈指の値に。
この奪三振力とK/BBを両立したのは昨年は1人も存在せず、2019年のジョンソン(元T)選手以来でジョンソン選手を見ていた人ならその絶対度がわかるかと思います。
バットに当たる前の打者のアプローチの段階でも非常に優位な投球ができることに加え、バットに当たったあとでも相手にまともに前に飛ばさせない投球ができている = つまりは基本的な指標の上ではほぼ完璧な投球ができているといっていいでしょう。

2. 各球種について

それでは栗林選手のすごさがわかったところで彼を支える球は何か、その詳細について見ていきましょう。
まず投球割合です。

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直球がちょうど半分、カットとフォークがほぼ20%ずつで残りがカーブとスライダーを使用しないことを除けば非常にスタンダードな割合です。
また右打者相手の時はカットが増え、左打者相手のときは少しフォークが増えているようです。

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ではこの4球種の質について詳しく見ていきます。
まずは直球です。
直球は
平均球速149.0キロ
空振り率 19.6%
被打率 .059
被OPS .259

と文句のつけようのない出来です。特に空振り率は平均が7%前後であることを考えると3倍近い値で、これ以上はないといっても過言ではありません。
被打率も低く相手はバットに当てることすら難しいのに、バットに当ててからも大きな壁が存在しているといえます。かの往年の名投手、藤川球児氏を彷彿とさせます。

続いてカットです。
平均球速138.3キロ
空振り率 15.4%
被打率 .167
被OPS .619

こちらも空振り率は平均以上で出来としては十分です。ただ直球に少し制球が乱れやすく、ストライク率で見ると51.4%とすべての球の中で最も低いです。あくまで栗林選手基準ですが少し精度の落ちる球といえるかもしれません。

次にカーブです。
平均球速124.9キロ
空振り率 13.3%
被打率 .000
被OPS .000

こちらは直球と球速差が25キロありいい緩急として機能しています。空振り率もカーブにしては十分に高く、ストライク率という観点で見ても57.1%と安定してカウントを取る球として機能しています。

最後に決め球フォークです。
平均球速137.9キロ
空振り率 38.5%
被打率 .053
被OPS .105

栗林選手のフォークは平均球速が速く高速フォークと呼ぶべきボールです。そしてその空振り率は脅威的な数字で被打率も合わせて相手に絶望を与えるボールといえます。ボール球スイング率も53.8%と完全に相手を翻弄しており21個の三振のうち実に12個をこの球で奪っています。大魔神佐々木氏・上原氏のような絶対的な球といえるでしょう。

また、全体空振り率は22.2%と他に類を見ない空振り率で相手を圧倒しています。ストライク率も60%に迫る勢いで詳細に見ても隙がないといえるでしょう。

※以下にその投球詳細の画像を置いておきます。よろしければ参照ください。取っている様々な指標でも弱点がほとんどありません。
(あえていえばフォーク以外のボール球スイング率が低いぐらい)

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3. 制球について

栗林選手の球の質が非常によいことがわかりました。それでは次に制球について見てきましょう。

まずは右打者です。
全体的に低めにしっかりと、アウトコースを中心に決めていることがわかります。ゾーン率はあまり高くない(=あまりストライクゾーンに投げていない)
ですが、低めが多いことからフォークを決め球として起用している影響だと思われ本質的な問題ではないと思われます。

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続いて対左についてです。
対右に比べると全体的に散らばり気味ですがこちらも低めに決めるケースが多く、フォークをしっかり決めることができていることの証左といえます。
ゾーン率も右に比べて高く、右に比べ安定度が高いといえます。

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4. まとめ

ここまでを大まかにまとめると
①直球のキレは球界最高級で藤川さんにも負けないレベル
②フォークは大魔神・上原さんクラス
③制球も全く破綻がない

と藤川さんと上原さんを足して2で割り、さらにカットとカーブを使えるようにしたような投手といえます。
データを取り始めて1年になりますがここまで内容がきっちりしている投手は見たことがありません。
どこまで連続無失点記録が続くか見ものですね。

それでは本日のnoteは以上になります。
最後までお読みいただきありがとうございました。(*- -)(*_ _)ペコリ
それでは、( ´Д`)ノ~バイバイ

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