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Fender60点理論

 大学生活において、軽音部のたまり場になっていた第二食堂入口の自販機コーナーでの思い出は数知れない。練習の間でメンバーとコーヒーを飲む。先輩におごってもらい、後輩におごり、「これが経済だ!」と習う。飲み会終わり朝までだべる、飲み会じゃなくても朝までだべる。部室にいたメンツで溜まる。深夜3時、煙草を吸っていた先輩(※ここは禁煙)が警備員のおっちゃんに見つかり「( ダ ン ス サ ー ク ル 名 )でぇーーす」となぜか自ら名乗ったりする。

 大抵はくだらない話だが、その中で印象的な話として覚えているのが先輩が語った「Fender 60点理論」である。Fenderは楽器メーカーの中でも各段で歴史が古く、由緒があり、要はメジャーもメジャーなメーカーだ。そんな「Fender」のギター(ベース)の「音」はあくまで60点だ、というのが先輩の理論である。

 昨今、多くのメーカーが乱立し個性豊かな音色を奏でる楽器も多く誕生している。それはどれも素晴らしく、自分この身の良い音がする楽器に出会えればテンションが上がることは間違いない。しかしそうした楽器は「ひとつのキャラとして完成されすぎていて、自分の色をプラスしずらい」というのが先輩の主張だ。そこで登場するのがご存じFender。コイツは長年のプライドと実績をしっかり保ちつつ「安定した60点の音」を提供し続けている。そこにはプレイヤー個々の遊びの空間が多分に残されている。そこでいかに遊べるか、要は自分の「音」を作れるかが大事らしい。

「はぁ~なるほど、まるで人生みたいですな。」と私。
「いかにも。人生そのものだ。」と先輩。

 人間100点を目指そうなんて土台無茶な話だが、時折完璧を追い求め驀進する汝を見かける。勿論その姿勢は素晴らしいが、追い求めるそれは虚無でしかない。だいたい100点なんてものが不明瞭だ。今の100点と来年の100点なんて全然違うだろうし。完璧を追い求め驀進するとは即ち周りが見えていないという事でもある。私が好きなタモリ氏の名言「やる気があるものは去れ」精神如く、完成系だけに目をやるのではなくその周りに散らばるオモチロイことを楽しみたいものだ。

60点でもべつにいじゃない。

と、言いながら私はキャラ劇強のstingrayを使ってます。(笑)
Fender、70年代のジャズべ欲しいなぁ。かしこ。


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