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ラガーマンの洗脳からみる大衆扇動【しょぼいレポート】

本noteのざっくりまとめ

目的:
ヒトラー著「我が闘争」をもとに、人間社会にみられる大衆扇動を有効活用する方法を取り上げる
主題:
身近にある扇動の実例を紹介しつつ、有効活用する方法を模索しよう
状況:
まったく読んでいません!代わりに、すでに終わった人のスライドとサロン内でシェアされた内容(議事録)をもとにまとめています(2020/08/19)

まえがき

大衆研究の目的:
社会で行われている扇動の要点を抑え、実生活で有効活用する
大衆研究のトピック:
・扇動を行うにあたり、
【1.現状の不満に我慢している人間の集団を探す→2.不満に対する理解を示し、不満解消を実現する案を提示する→3.特定の行動を促し誘導する】という順序がある

 大衆研究としてヒトラーの「我が闘争」(のまとめスライド)と、演説の動画を見たうえで身近な大衆扇動の実例を挙げていこう、と息巻いていましたが、なかなか思いつきません!そこで、脳内で印象に残っているアニメのシーンから大衆扇動っぽい部分を取り上げてみることにします。
 今回取り上げるのは、「フルメタルパニック ふもっふ」の7話です。サブタイは「やりすぎのウォークライ」。「ウォークライ」はスポーツなどで気合を高めるために発する叫びや、それに伴う舞踊を指す言葉だそうです。掛け声と踊り。2人以上で決まった動作を伴って、高揚感を得る行為。なんだか儀礼みを感じますね。

話の導入

 大衆扇動っぽい中身を語る前に、アニメの紹介と話のあらすじだけさっくりお話しします。全容は下記にまとまっていますので、そちらも参考にどうぞ。

 『フルメタル・パニック!』は1人の兵士を主人公にしたSFミリタリーアクション作品です。本編では世界の真実に迫っていく若い傭兵の葛藤と決断を描くシリアスな展開がメインになるのですが、平和な学園生活を送る番外編も展開されています。
 今回は書きやすさの観点から、後者で収録された話「やりすぎのウォークライ」をテーマに取り上げることにします。

 あらすじは下記の通り。WikipediaとアニオタWiki(仮)をちゃんぽんして書きました。

・主人公の相良宗介はとある事情からテロ組織身柄を狙われている千鳥かなめの護衛をするため、護衛対象が通っている陣代高校に一般生徒として潜入している。
・ここ10年以上対外試合で勝利歴が無く、試合をする気が見受けられないという理由から、高校のラグビー部は校長から廃部を言い渡される
・生徒会の交渉でよく練習試合をする硝子山高校(相手校)との試合に勝てば存続という条件にとどまり、宗介とかなめが生徒会から助っ人として派遣された
・部員はそのほぼすべてが軟弱で、練習の前には怪我が無いように神に祈る、タックルの練習は危険なのでしないなどとラグビー部にあるまじき状態だった。
・練習後、偶然遭遇した硝子山高校のラグビー部員にさんざん煽られた挙句痛め付けられた陣代高校ラグビー部は、初めて悔しいという気持ちを理解し、闘志が湧いた。
・宗介の海兵隊式訓練による改造の結果、全員が戦闘マシーンとして洗脳される。その後に行われた硝子山高校(相手校)との練習試合には勝利するも、硝子山高校側に多数の負傷者を出し「二子玉川の悪夢」とまで言われる悲惨な試合となってしまった

扇動ブロックの分解

 話の展開に合わせて、先述した扇動の段階を照合してみます。

大衆研究のトピック:
・扇動を行うにあたり、
【1.現状の不満に我慢している人間の集団を探す→2.不満に対する理解を示し、不満解消を実現する案を提示する→3.特定の行動を促し誘導する】という順序がある

 1.現状の不満に我慢している人間の集団を探す

・練習後、偶然遭遇した硝子山高校のラグビー部員にさんざん煽られた挙句痛め付けられた陣代高校ラグビー部は、初めて悔しいという気持ちを理解し、闘志が湧いた。

 この部分で、陣代高校ラグビー部は硝子山高校のラグビー部に煽られて悔しい、勝ちたいという現実からの脱却を目指す気持ちを抱きます。「怖い、つらい。でも現状を変えたい」という気持ちの表れとしてみることができるので、これは1.に該当しそう。

 2.不満に対する理解を示し、不満解消を実現する案を提示する

 陣代高校ラグビー部の闘志が萌芽した後のシーンはこちら。

しかし気持ちだけでは勝てないとかなめが思っていると
「それほど勝ちたいのか」ここまでかなり静かだった宗介が言った。
「本気で勝ちたいんだな?」
「それなら、俺が鍛えてやる」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
四日後の日曜日、多摩の山奥。山梨との県境のあたり。
学校を休みそこで練習していると宗介から言われたかなめは友人とその現場まで向かうのだが――

アニオタWiki(仮) 「やりすぎのウォークライ」より
(https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/4321.html)

 硝子山高校に勝ちたい、ラグビーがしたいという悔しい気持ち、闘志を間近で見ていた宗介は彼らの意思をくみ取り、「俺が鍛えてやる(そして勝たせてやる)」という案を彼らに投げ、実際に訓練(という名の洗脳)を行いに、多摩の奥地に向かうのでした。

 3.特定の行動を促し誘導する

 激しい訓練(洗脳)のやりとりはこちら。

(長いので、飛ばしていただいて構いません)
宗介「このクズどもめっ。トロトロと走るんじゃない!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「いいか、くそ虫どもっ! 俺の楽しみは貴様らが苦しむ顔を見ることだ!じじいの●●●●みたいにひいひい言いおって、みっともないと思わんのかこの●●の●め!?●●が●●たいなら、この場で●●●を●ってみろ! ●●持ちの●●どもっ!」
教育上、不適切な表現を連発する軍曹殿がおりました。怪しい手帳を手に。
そんな中、野戦服で丸太をかついだラグビー部員の一人が倒れる。
「しょせん貴様の根性など、その程度のものだ。家に帰って、おまえが大好きな中谷ミキ(仮想のアイドル)とやらの写真を抱いて寝るがいい」
「何度でも言ってやる。中谷ミキはあばずれだ。ちがうと言うならガッツを見せろ! **丸太をかついであと10往復だっ!」
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
その後かなめらは作ってきたおにぎりを渡そうとするが……
**宗
「よろこべ、ブタどもっ! マネージャーが食事を持ってきた! 32時間ぶりのメシだぞっ! 終わった者から食ってよし!」
アニメではこの後も様々な訓練が行われ、
「俺は貴様らを憎み軽蔑しているっ! 俺の仕事は貴様らの中からふ●●●●野郎を見つけ出し切り捨てる事だ!」だの
貴様らは人間ではない、殺戮の為のマシーンだ! ●せないヤツに存在する価値はないっ」だの
「パパの●●●がシーツのシミになり、ママの●●に残ったカスがおまえらだ!」だの、どこかで聞いた事があるような台詞を山ほど浴びせかけた結果、その日の夕方には
部員「綺麗だよジェニファー……」
部員「君の為ならタヒねるよブリトニー……」
といった台詞でラグビーボールに話しかけるような感じになりましたとさ。

アニオタWiki(仮) 「やりすぎのウォークライ」より
(https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/4321.html)

 やりすぎではありますが、「硝子山高校との試合に勝ちたい」という陣代高校ラグビー部の目標を達成させるために彼らを鍛え、試合に勝つという結果を促すための行動を促しています。またラグビー部は1チーム15人(今回は1人人数不足で宗介が参加するため14人)という「人間の集団」にあたるので、これも立派な扇動と言えるのではないでしょうか。

 余談になりますが、試合時のやりとりも載せておきます。

野戦服を脱ぎぴかぴかのユニフォームをさらけ出したラグビー部の面々に、宗介が語りかける。
宗介「いまこの時をもって、貴様らはウジ虫を卒業する。貴様らはラガーマンだ」
部員『サー、イエッサーっ!!』
「さて……貴様らはこれから、最大の試練と戦う。もちろん逃げ場はない。すべてを得るか、地獄に落ちるかの瀬戸際だ。どうだ、楽しいか?」
『サー、イエッサーっ!!』
「いい声だ。では……」「野郎ども! 俺たちの特技はなんだっ!?」
『●せ!! ●せ!! ●せ!!』
「この試合の目的はなんだっ!?」
『●せ!! ●せ!! ●せ!!』
「俺たちは学校を愛しているか!? ラグビー部を愛しているかっ!? クソ野郎ども!!」
『ガンホー!! ガンホー!! ガンホー!!』
「OK! 行くぞっ!!」

アニオタWiki(仮) 「やりすぎのウォークライ」より
(https://w.atwiki.jp/aniwotawiki/pages/4321.html)

 その後、相手のラガーマンの顔面を蹴るわ、四名の退場者と引き換えにその倍の負傷退場者を出すわで戦力をそぎ、148-5(前半62-5 後半86-0)で陣代高校ラグビー部の圧勝。審判は後に「これほど残虐な試合を、私はかつて見たことがない」と述懐し、硝子山高校はこの試合のショックから成績不振が続き、この試合は「二子玉川の悪夢」として、高校ラグビー界では陣代高校が恐怖の代名詞となったそうです。

まとめ

 というわけで、「身近な大衆扇動を探してみた」をテーマにした本noteでは、「洗脳によって相手を蹂躙するラガーマンからみる我慢、代替案の提示、誘導」を足早に見てきました。「やりすぎのウォークライ」、文面にするとかなり物騒な仕上がりになりましたが、ぶっ飛んでいる描写は視聴者の笑いをかっさらい、神回としてファンの間で語り継がれています。
 本編も引き込まれるうえ、主人公がファンから支持されるというライトノベルでは非常に珍しい評価をもらっている作品です。これを機に、という人はぜひ、お買い求めてはいかがでしょう?

 それではこの辺で失礼します。
 読んでいただき、ありがとうございました。

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