『うなぎが安くて旨いだけでいいのか』2021/10/25の日記

 なんかすごい名前の店が静岡にもできていた。よくわからない業態だが、東海地方の各地に期間限定で出店しているらしい。今年の9月~10月に相次いで4店舗がオープンしており、「仕入れが高くなったら終了」と宣言している。どこの会社が経営しているのか、公式サイトには記載されていないが、whois情報によれば「株式会社AOI」が取得したドメインのようだ。その名前でgoogle検索しても塗装や建築の会社がヒットするばかりで、「鰻やす AOI」などでも一致する結果はない。やや胡散臭い印象だ。

 ウナギを取り巻く情勢についてはいろいろな意見があるし、日本の食文化として今後も続いてほしい業界ではあるのだが、安さを喧伝するのははっきりと良くないことだ(サイトで見る限りそんなに安くも思えないが)。完全養殖が確立されるまでは資源を保護していく必要があるのだし、いざ養殖が確立されたときに、天然より高価であってもそっちを選ぶことができるように、「ウナギは高級品である」と意識づけていくことが必要であると思う。そして、これが生物多様性を疎かにした報いであることをきちんと報じていくべきだ。

 生物多様性は全ての人が享受できる恵みなのだ。ウナギがこのまま数を減らして1尾10万円になったとしても、金持ちは苦労せず食べ続けることができるだろう。損をするのは貧乏人ばかりというわけだ。「環境保全は金持ちの道楽」という論調もあるが、これははっきりと真逆だと言える。

 一時的に高級品になったとしても、養殖技術が完成すれば再び庶民の食卓に戻ってくる可能性はある。一方で、資源の減少が続いて研究さえままならなくなってしまえば、二度と戻ってこない可能性もある。そんな状況で「鰻やす」と称し、安さを喧伝し大量消費を促すという愚かさには目を背けたくなってしまう。

 もちろん、養殖や流通に携わる人の生活があるし、生産されたウナギをきちんと食べていくことは大事なことだ。しかし、この名前はなんとかならなかったのか……。

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