『デリシャスパーティプリキュア』第1話の感想～今日、大ごはん共同体が生まれた（ネタバレ注意）

相羽です。

『デリシャスパーティプリキュア（公式サイト＠東映／公式サイト＠朝日放送）』第1話「ごはんは笑顔 変身！キュアプレシャス」の感想です。

ネタバレ注意です。

　◇◇◇

「おむすびの妖精」とゆいが認識していたレシピッピが見えるかどうか？　が一つ大事なポイントになっています。

昔は、みんな見えていた。

でも、今はゆいにしか見えない。

部活のサッカーの助っ人（およびその報酬としてのおむすび）という実利的・功利的な理由で一緒にいるけれど、ゆいには見えるレシピッピが同年代の人間にはもう見えない。

ゆいは明るい子ですが、一緒にいるけれど見えているものは違う、ということはちょっと悲しいと感じている……のかもしれない。

そこに現れる、ゆいと同じようにレシピッピが見えるマリちゃんことローズマリー……というのが第一話の導入部分の流れです。

「大切な、思い出なんだ」（和実ゆい）

『デリシャスパーティ♡プリキュア』第1話より

昔はみんなに見えていた、大切な思い出としてのレシピッピ……というか、レシピッピが象徴する「みんなでごはんを笑顔で食べる」という体験の輝き（価値）。

今ではもう価値観が多様化し過ぎてバラバラになってしまったけれど、昔の一点、「みんなでごはんを笑顔で食べる」という思い出は、誰にでもあるはずだ。

（何故なら、こうしてプリキュアを視聴できている時点で、幼い頃に何らかのかたちで「ごはん」を食べていたからなのだから……。）

もしかしたら、その一点をトリガーに、もう一度繋がることもできるのかもしれないのではないか？

もっと大きい話にも繋げていけますが、そちらは後述するとして、直近ではコロナ禍以降、家で閉じこもって自粛でそれぞれがそれぞれの価値観でNetflixとか観てて、「見えているものが違う」現在、私たちはさらにバラバラになってしまった……

……だが、数年前の「みんなでごはんを笑顔で食べる」という輝いた記憶はみんな共通でまだ持っているのではないか。だとするならば、その「共通の思い出」をトリガーに、私たちは再び集まることができるのではないか……大げさに言うならば「共同体を再構築」することができるのではないか……というお話に思えます。

まず、十中八九、プリキュアに変身すると発表されている芙羽ここねと華満らんの二人は、今でもレシピッピが見えるか、かつてレシピッピを見た記憶を大事に持っている……という設定のキャラクターだと予想され、ゆいを含めた三人は「ごはん」の思い出──かつて同じものを見ていた思い出をトリガーに「プリキュア」という「共同体」として集まり直し、また一人一人違うながらも同じものを見ていく……という作劇と思われ。

プリキュアシリーズですと、『スイートプリキュア♪』の第1話が、今ではもう価値観がバラバラになって離れてしまっていた二人が、「思い出のレコード」というまだ一つだけ二人だけ共有していた価値観を媒介に、プリキュアに変身する、再びミニマムな「共同体」を再構築する……という導入なのですが。

参考：スイートプリキュア♪感想／第1話「ニャプニャプ！スイートプリキュア誕生ニャ♪ 」

10年ほどで、同じタイプの作劇が繰り返されているのには、時代的な背景もあると分析します。

ここから先は、『デパプリ』の話以外にも、現代の時代背景とかも知ってみたいという方だけ読んで頂ければ、よい話となりますが。

（特に僕のオリジナルの見解というものでもなく、評論や学問の世界で語り尽くされていることを、ざっくりとまとめてみた程度の話となります。）

ものすごくざっくりとは、現代（ポストモダン）とは、「大きな物語が消失した時代」と言われています。

この場合、「大きな物語」とは、だいたいの場合「科学」や「理性」を指します。

みんなが信じていた「大きな物語」、「科学」や「人間の理性」は最高だし信じられる！　……という感覚が色々あってなくなってしまったのが現代、ということなのです。

みんなが信じていたものがなくなってしまうとどうなるのか？

そう、人間はバラバラになります。

ある程度までは、バラバラになるというのは、個人化ということですから、個人主義最高！　……みたいなノリで現代もこれまで進めてきてみたのですが、いい加減、どうもそれではヤバイらしいというのが分かってきたのが最近だよ、という話なのです。

何故なら、人間という種は、バラバラ、つまり「孤独」に耐えられないようにできている生命体だから。（これは、近年の脳科学でも裏付けられています。）

よって、バラバラの状態から、何とかまた「集まる」状態へと向かっていかなくてはならない、いわゆる「共同体の再構築」という方向を意識していかなくてはならない……

……というのが、ここ10年・20年で、「一度バラバラになったもろもろが、再び集まるお話」という形式の物語が大量につくられている背景です。時代的なニーズでもあるということです。

プリキュアシリーズも、僕は18年くらい全部観ておりますが、だいたいこっちの方向で物語をつくってきたシリーズです。

で、バラバラの状態から「再び集まる」方向にどうやってもっていくのかといったら？

そう、コミュニティ化です。

2022年の今や、世界は分断化からの反動でもう「孤独」を何とか埋めたくて埋めたくて、細分化されたたくさんのコミュニティに分かれているのです。

で、各々のコミュニティの中でしか通じない価値観、通じない言葉で意志疎通し、「孤独」を埋め合っている。

このnoteを読んでいるような方もしかりです。いわば、「プリキュア」コミュニティの一員であるから、この文章が「読める」（＝意思疎通できる）わけです。
（逆に言うと、同じコミュニティの人以外とは、意思疎通が難しくなってきているのが最近です。）

で、で、「コミュニティ」には、シンボルが必要なわけです。シンボルというか、リーダーというか、もっというと、「コミュニティのメンバーが共有しているコアな価値観」ですね。

近代以前は、それは宗教が役割を担っていました。

まぎらわしいですが、

近代以前は宗教を中心に大きな共同体が保たれていた。
　↓
それを解体して、科学や理性信仰という近代を生み出した。
　↓
それがバラバラになって現代（ポストモダン）になった。
　↓
我々が今いるのは、さらにその次（細分化されたコミュニティ）。

……という順番です。

つまり、現在（2022年）は、また小さなコミュニティの中心に「信じられるもの」を置くという、近代より前の宗教性が重要視される時代に戻ってきているということです。

（ここでの「宗教」という言葉はキリスト教、仏教のような特定の宗教を指すものではなく、「特定の価値観を信じて人々が集う営み全般」くらいの意味合いで使っております。）

我々「プリキュア」コミュニティですと、半分笑い話っぽくしながらも、わりと真顔でプリキュアさんたちを信仰してコミュニティが形成されているという側面があります。

で、ようやっとここまで話がこられましたが、「プリキュア」コミュニティを「プリキュア」信仰だけで維持していくのは、どうにも「クラスタ化」的で閉じた感じがするので、ここ数年のプリキュアシリーズは、「プリキュア」よりもっと「（かつてあった）大きな物語」に回帰しながら、今の時代なりの新型コミュニティを創出しようとしているフシがあるのですね。

前作『トロピカル～ジュ！プリキュア（感想）』だったら、「人魚」や『人魚姫』という概念は、「プリキュア」という枠組みよりも、もうちょっと広範な人々と意思疎通のきっかけになれる「大きな物語」チックであるといえると思います。

そこで、ようやく今日から始まった『デリシャスパーティ プリキュア』の話となりますが、そう、『デパプリ』が打ち出してきた、みんなが信じられるような、一度バラバラになってしまった我々が、再びその価値観を旗印に集まることができるような、「信じられるもの」として、大げさにいえば宗教的で再びの「大きな物語」的なものとして打ち出してきたものが何なのか？

そう、「ごはん」です！

ええっ！？　で、でも確かに、「食」とか人間の三大欲求の一つだし、人類という種にとって普遍的かも！？　ある種の宗教シンボル的にかかげるのには、イイのかも！？　と僕は思いましたよ。

バラバラになった私たち、もう一度「ごはん」の旗印のもとに、集まり直そう。あなたもかつて、「ごはんは笑顔」の大事な記憶を持っているでしょ？　私も持っているよ、だったら、とりあえず集まってみるきっかけくらいにはなれるよ。

かくして、ここ18年あまり人々を繋ぎとめていた「プリキュア」共同体は（僕としても、「プリキュア」がきっかけでできた友人は多いです。）、大「ごはん」共同体へと再び生まれはじめました。

どこまでいくのかは、僕にも全然分かりません（笑）

ノリとしては、大「ごはん」および「プリキュア」共同体を設立して、人類の孤独と分断を解消してほしいです。世界平和を達成してほしいです。

（「デリシャスパーティ」の「パーティ」は「party」で「仲間」とかですから、本当に「共同体」ものとしての作品であるのでしょう。）

「ごはんは笑顔」。今年も、どデカいストリームに我々は巻き込まれ始めたのだった……。

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→次回：『デリシャスパーティプリキュア』第2話の感想～今はバラバラな三人と三人を結ぶ幸せな記憶から贈られる言葉へ（準備中）

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