アイドルは偶像を超えて神になる
三十の手習いではないですが、6年ほど前からジャニーズ事務所のNEWSというアイドルグループを好きになり、それ以来、毎年ライブツアーに参戦し、一昨年のカウントダウンコンサートには2泊3日の弾丸でドイツから一時帰国した身としては、今回の手越祐也(テゴ)の活動休止について批判と共に言及する権利があると思っております。(ファンじゃなくてももちろん言及してもいいのですが)
NEWSとの出会いは、友人から「美しい恋にするよ」というグループとしての活動休止後初のコンサートツアーを布教されてから。それまで存在も知らなかった増田貴久(まっすー)の感極まった姿と笑顔にやられ、遅咲きのジャニーズファンとなりました。
それまでもジャニーズを避けていたわけではなく、「8時だ!J!」「スマスマ」「Mステ」等々、多くの同年代の女の子たちが通ってきた道を歩んできましたし、カラオケにいけば「青春アミーゴ」「ピカ☆ンチ」などを好んで歌っておりました。ただ特別に愛するグループやタレントがおらず、CDを買ったりライブに行ったりすることはなかったという程度。
それがアルバムのみならず、シングルCDも購入し(シングルCDをそれまで買ったことがなかった)、コンサートツアーは地方公演はもちろんのこと、東京ドームなどは二日連続参戦するようなファンになってしまいました。手越くんには友人の協力により、一度「お誕生日おめでとう」とにっこり笑顔とお手振り付きのファンサービスを頂き、しばらく思い出すだけで泣けてしまい、アイドルの凄さを実感したものです。
ここから批判します
まず真っ先に思うことはテゴは頭の悪い人だったんだなということ。
私の思う「頭の悪さ」とは
・同じミスを何度も繰り返す(学習しない)
・自分を客観視できない
前者については枚挙に暇がないほどの週刊誌にとりあげられた女性関係。大人になってからジャニーズを好きになる利点としては、対象も一人の人間だと認識していることなので、正直誰と付き合おうが同時進行していようがどうだっていいのです。ファンを挑発するようなお相手を好意的に見ることはできませんが、幸せであってくれるならそれでいいのです。ただ未成年との飲酒疑惑に関しては、それが原因でNEWSのメンバーが抜けていること、同じグループの小山慶一郎(けーちゃん)がそれにより大切にしていた仕事をなくしていることもあり、なぜ学習しないの?と呆れますが、その件は疑惑で終わってしまったのでここでは置いておきます。
「あ、この人ダメだな」と決定的に思ってしまったのは、安倍昭恵首相夫人とのお花見スクープ。芸能人が政治発言をするななんてことは一切思わないですが、森友・加計問題が公文書偽造・破棄により真相が問われないまま幕引きされようとしている疑惑の渦中の人間であり、コロナウイルスの拡大防止のため国全体で大規模イベントの自粛(NEWSのコンサートも延期に)になっているさなか、首相夫人という立場の人間の開催する催しに参加したことは、端的に言って「がっかりした」以外の何物でもありませんでした。
それでなくとも著名人との交際を喧伝する彼の姿勢には疑問を持っておりました。同じ芸能人であるhydeに始まり、海外で活躍するサッカー選手たち、ホリエモンとの付き合いを自分の人脈としてアピールする姿は、「〇〇さんと知り合いなんだよね」と虎の威を借る狐のような一般人と変わりありません。ジャニーズというホームフィールド以外で交友関係を築き、それを糧とすることは素晴らしいことではありますが、彼らの持つ偉業や成果は多少付き合ったところで自分のものになるわけではありません。どのような経緯で首相夫人のお花見に参加することになったかは知りませんが、その権威に惹かれていなければ、参加を断る、百歩譲っても証拠写真を残すなどという愚行は犯さなかったはずです。
そんな報道をなされた後の立て続けの外出自粛期間における酒席への参加。再三の訓告にも関わらず「今日に至るまで本人に理解させることができず」と事務所の発表にもあるとおり、彼は自分の立場を客観視できていないため、いったい何が問題なのか理解ができず、同じ過ちを繰り返してしまうのでしょう。なぜそんなに頭が悪いのか、かえって興味が湧くくらいです。
これまでも彼は素行をバッシングされ、コンサート最後の号泣など、ファンを悲しませつつも応援したくなるような(結果的には)演出をしてきましたが、さすがに単純な涙の復帰コンサートでは離れていった心はもう戻ってはこないでしょう。
ここから擁護します
擁護、というと少し違うかもしれませんが、上記を思うとはいえ、彼の気持ちもわからなくはないのです。
彼自身公言しているように「上昇志向が強い」のは間違いがなく、それ自体は魑魅魍魎の跋扈する(イメージのある)芸能界でやっていくに不可欠な心持ちなのでしょう。それでも中堅アイドルグループとして一歩抜け出せない焦り・くやしさがあるのだろうと思います。上には嵐という国民的アイドルグループがいて、次々にデビューするグループの中にはKing&Princeというデビューシングルが80万枚の売上を誇る大型新人がいて、SMAPが築いた黄金ルートである音楽とバラエティでのアイドルとしての認知では彼らには敵いません。その中でNEWSというグループを牽引するエースであることが彼を惑わせてしまったのかなとも思います。
テゴマスとして(私の愛する)まっすーとディオを組み、グループの立ち位置としても比較されることの多いテゴとまっすーですが、アイドルに対する考え方も全く異なります。
まっすーは、正統派ジャニーズアイドルとして、プライベートはおろかバックグラウンドを見せることも是としません。RIDE ON TIMEという番組で、密着ドキュメンタリーなのにカメラを避ける姿は今も印象に残っています。こだわりが強いことでも知られ、近頃はだいぶ緩くなってきたようですが「アイドルとしてこうありたい」という明確なイメージがあるのでしょう。女性スキャンダルも起こしません。また、洋服好きでもあり、自らコンサート衣装のプロデュースをするだけでなく、複数の雑誌にも連載を持つようになりました。趣味が洋服と長年言い続けることをメンバーに揶揄されることもありましたが、数多いるファッション好き芸能人の中でもファッショニスタとして評価され始めたのは、地道にこだわりを持って歩んできたからに違いありません。
対してテゴは、新しいことにもどんどんチャレンジして、自らの醜聞をも糧にとにかく前に進みたいタイプ。私も二択であるのであればテゴタイプで、Aのやり方がダメならBのやり方でと次々変化させていきたいし、だからこそまっすーのようなプロフェッショナルタイプに憧れもします。かつてNEWSの花形であった山久智久(山ピー)や錦戸亮(亮ちゃん)が抜けてからの4人は、彼らのような圧倒的な華がない代わりにコツコツと自分の特性やできることで仕事を得てきたように見えます。しかしテゴはコツコツと地道な何に繋がるかわからない努力で得られる仕事ではなく、圧倒的なトップアイドルでありたい気持ちとそうなれない現実との溝を何とか埋めようとした結果が、著名人との人脈(もどき)であり、テレビで求められた突き抜けたポジティブ・チャラいキャラクターなのではないかと思うのです。
これからテゴはどうあるべきか
人が感動を覚えるのは困難から這い上がってきた話やイメージとのギャップです。その点で彼には、この状況から再起を掛けられる可能性があり、チャラいイメージなのに真面目な姿を見せることでもう一度物語を作れる要素があります。
例えばテゴが好きでもらえるのが嬉しいと言っていたサッカーの仕事にしても、ワールドカップなどの大舞台や華々しい海外サッカー選手との仕事を目標にするのではなく、注目されないJ3のクラブのスポンサーになってみたり、代表監督並みにJリーグの若き芽を発掘するなど、サッカーファンのメイン顧客である男性に認められるような活動をしていくのはどうでしょう。
たとえアイドルを辞めることになったとしても、かつての暴露話をすることやファンに媚を売るような営業で糊口を凌ぐようになってほしくはありません。
アイドルは神へと進化していく
一方でSMAPが切り開いたアイドルの高年齢化は功罪があると思っており、誰もが誰かの憧れを演じ続けられるわけではありません。SNSが発達して個人の意思が自由に発せられるようになったからこそ余計に「本当の自分を見てほしい」と思うようになるでしょう。脱退していったKAT-TUNや関ジャニエイトのメンバーのように、今年いっぱいで活動を休止する嵐のように、ある程度の年齢になったらアイドルでないそれぞれの道を歩んでいくのも当然のことだと思います。アイドルグループが例えば20年も5人しかいないクラスに居続けると同じようなことだと思えば、長く続けることの特異性が理解できるような気がします。
「30歳を過ぎてアイドルとしてのモチベーションを保ち続けられる人はもはや偶像ではなく神」とは今回の騒動を受けての友人としての言葉ですが、それを体現し続けている木村拓哉という人は、そろそろ神に序列されるのではとすら思うようになってきました。これからは彼を見るたびに崇め奉っていきたいと思い、この文章を締めることとします。