2人の占い師さんへ謝罪した話~謝り方のレシピもそえて~
■まずは経緯を説明
「占い」を、信じるか信じないかの2択に押しこめるのは間違っている。
正解は「疑う」だ。
生年月日を記入し、名前を伝え、手のひらを見せ、「カードを引いてください」といわれて1枚引く。
それくらいで、なにがわかる? 未来をピタリと予想するって、モノリスじゃあるまいし。
だが、世の中には「占い師」という方々がいて、職業としてきちんと認知されている。
ということは、彼らの助言には、一片の真実が含まれているのかもしれない。そう思った私は、ある企画を考えた。
5人の占い師さんに、私を占ってもらう。5人全員に同じ質問をする。そして、回答が当たっているかいないか、5人が一致するかしないか、を考察するという企画。
料金は、もちろんお支払いする。その代わり、そんたくは一切しない。質問は以下。
私の過去やプライベートでわかることはありますか?
私はお金持ちになれますか?
私はいつ死にますか?
占い師さんは、ご自分のことを占いますか?
1は過去・現在について、2・3は未来について、4は個人的に興味のあった質問。
事前の予想では、4は別として、
1は大外れ
2は「大金持ちになれますよ」とか私の喜びそうな回答がかえってくるが、「いつごろ大金持ちに?」とつっこんだら、回答はバラバラ
3みたいな答えにくい質問は、間違いなく一致しない
と考えていた。
この企画は、「占い」に従来とは違う角度から光を当てる、画期的な試みとなるだろう。
占い番組で昔からよく見るシーン、プライベートをピタリと当てられたタレントさんが、「どうしてわかるんですか?」と目を丸くする場面。あれはもう見飽きた。
私の記事を読んでくれた読者は、占いに対する考え方がガラリと変わるに違いない。
そんな確信を胸に、私はスマホで検索しまくり、都内を走りまわった。
結果、2人の占い師さんから回答・撮影許可をいただくことができたのは、本当に運がいい。
もらった回答は、良い意味でも悪い意味でも予想外の連発。「占い師」という職業を、私が多くの点で誤解し、自分の考えを大幅にあらためなければならないことも明らかになった。
これはきっと深みのある記事になる。そう思いながら夢中でパソコンのキーを連打していた木曜の夜。
ひと休みしてテレビをつけた。どんなバラエティがあるかと、番組表を眺めていたときだった。テレビ東京の欄に、こんな番組を見つけた。
木曜深夜 01:30〜2:00 『占いなんて信じない』
ピンときた。イヤな予感といってもいい。
私はすぐにテレビを消した。まっすぐフロへ入る。脳をリセットさせようと頭に冷水を浴びせながらも、どうしても気になる。フロ場から出た私は、テレビの前へ座った。
最初から最後まで観た。なんだったらTVerでやっていた先週分も、公式HPに載っていたYouTubeコンテンツも観た。
もっというと、前身番組である『占いリアリティーショー どこまで言っていいですか?』(2021/12/28~2022/09/30放送)まで観た。わざわざParaviパラビのサブスクに入って。いやー、おもしろかったですよ。だけど……
なんてことだ! オレの企画と似てるじゃないか!
もちろん、まるきり同じではない。というか、別物といえば別物だ。だが骨格が似ている。
・相談者1名を、複数の占い師さんが鑑定する
・懐疑的態度 ※『占いなんて信じない』のみ
特にこの2点。ショックを受けた私はどうしたか?
人間はパニックになると、猛烈な睡魔に襲われるらしい。
■企画がかぶった!
企画を立てる際、先行記事があるケースはよくあるらしい。そういう場合、切り口を変えよ、といわれる。
たとえば、ジブリ映画について書きたいとする。先行記事が興行成績の観点から書かれているのであれば、後発で書く人は、キャラクターの共通点の観点から書くとか。
そうやってオリジナリティーというか、ニュースバリューを確保するのだが、私の企画はどうだろう? 切り口を変えれば救えるか?
不可能ではないと思うし、そもそも気にしすぎという意見もあるだろう。だが企画の骨子が似ている点と、先行がテレビキー局番組、しかも現在放映中である点をかんがみ、涙をのんで捨てることにした。
とはいえ、私も社会人。苦労して組み立てた企画書を一瞬で却下され、「おまえ、本当に読んだ?」という言葉が出かかった経験は山ほどある。
だからボツになったからといって、いちいちふてくされたりはしない。だが、今回の場合は占い師の方にすでに取材していた。
しかも、だ。
私の企画は、占い師さんにとってあまりうれしくない内容。不愉快といってもいい。なぜなら自分の回答を、ほか4人の占い師さんの回答とつき合わされ、疑り深いライターにあーだこーだ書かれるのだから。
本当に、損だけの企画。
実際、協力してくれそうな占い師さんを探して大手「占いの舘」へ問い合わせたところ、3館に連絡して全滅だった。仕方なく個人交渉に切り換えたものの、やはり7割の人に断られた。
当然だ。向こうも商売。変なリスクを負いたくないに決まっている。そんな中、私の失礼な企画にお付き合いくださった2人の占い師さん。
1名の方は、「占いの舘」的な会社に所属しているにもかかわらず、モザイクをかけるならいいよ、とOKしてくれた。
もう1名の方は、大清水高山という占い師さん。企画内容を説明したところ、「なに書いてもいい。写真でもなんでも撮りなさい」といって、笑って協力してくださった。
私はこのお二方に前述の質問をし、撮影した。そしてお礼を述べ、去り際に「〇月〇日までにUPするので、楽しみにしていてください」といった。
その記事が、なくなったのだ!
これは謝りにいかねば……
■どう謝れば許してもらえる?
占い師の人に謝る。
私もこれまでさまざまな課題にいどんできたが、間違いなく生まれてはじめてのミッションだ。
「どうしてもというから協力してやったのに! わしの貴重な時間をかえせ!」
そんな罵声をあびせられてもしょうがない。しかも相手は占い師。下手な謝り方をして機嫌を損ねさせたら、一生解除できない呪いをかけられるかもしれない。
幸いなことに、いくつかの対応策をひねり出す時間は残されていた。読者の参考になるよう、ここにあげてみたい。
【その1】切りかえす
困りはてた私は、友人に相談した。彼は学生時代からの頼りになる友人。今回の状況を説明すると、「切りかえせばいいんだ」というアドバイス。
実体験として披露してくれたのが、次のエピソードだ。
友人「大学生の頃、某CS放送のコールセンターでバイトしててね。担当は機器の操作。かかってくる電話のほとんどが『CS放送が映らない!』ってクレームで。
大変だったよ。チューナーの操作方法を教えて、なんとかCS放送が映るようになったとするだろ。一件落着と思うじゃないか。でも、中にはさらにクレームをつけてくる客がいるんだ。『観れなかった日数分の料金をかえせ!』って。
そういう場合は、こんなふうに対応してた。
その某CS放送って、最初1ヶ月は無料なんだ。だから、『お客様は〇月〇日まで無料です。今のところ料金は発生しておりません。ですので、こう考えたらいかがでしょう? 「損をしたのではなく、思ったほど得しなかった」と』
ほとんどの客は、これで納得してたね」
なるほど。見事な切りかえしだ。私のケースに落としこんでみよう。
金をたたきつけられて、「帰れ!」と怒鳴られそうな気がする。
【その2】謝らない
ときに物語は、苦難に直面したときの解決法を教えてくれることもある。私はアマゾンプライムの検索窓に「謝罪」と打ちこんだ。ヒットした映画がある。
観た。ふむ。テンポよく笑いがたたみこまれている。後半の作りがちょっとゆるい気もしたが、★4(★5で満点)も納得だ。
それはともかく、竹野内豊氏演じる弁護士、箕輪正臣のセリフでこういうのがある。
確かに、ひとつの考えだ。むやみやたらと謝るのはよくない。最終的には謝るとしても、その前に自分と相手、双方の立場を理解し合うことが、解決へつながることも多いはず。
私のケースに落としこんでみよう。
余計にヒートアップしそうな気がする。
【その3】正面からぶつかる
郷に入っては郷にしたがえ。占い師さんのことは、占い師さんに聞け。というわけで、どういうふうに謝れば、受けいれてもらえるか、占い師さんへ聞くことにした。
こちらの占い師さん(「Aさん」とさせてください。20代後半、女性、西洋占星術・タロット)も、大手に所属しているにもかかわらず、「私だとわからなければ」と言って、協力してくださった。
氏名、生年月日を伝え、事情を説明する。タロットカードを利き手でない方の手で半分にするよう言われて、そのとおりにする。
私「どういうふうに謝るのがいいでしょうか?」
占い師Aさん「カードは怖い感じで出てないですね。薫さんに怒ってる人はあまりいないと思いますよ。ちゃんと謝れば、許してもらえます」
なるほど。つまり、正面からぶつかれ、と。私のケースに落としこんでみよう。
正面からぶつかりすぎでしょ。
悩んでいても仕方ない。私は覚悟を決めた。
■謝罪のため再訪問
【お一人目】女性占い師Bさん
この占い師さんは、50代くらいの女性。西洋占星術とタロットで占う。物腰のやわらかい方(「Bさん」とさせてください)。
私「この間のライターの者です。先日はお世話になりまして」
占い師Bさん「あら、また取材?」
私「じつは……」
正直に事情を説明した。
笑って許してもらえました。
そのうえ、再訪問した際の撮影もOKしてもらえました。ありがとうございます! そして、すみません。
拍子抜けするほど簡単だった。占い師Aさんの鑑定は当たったのかも。
だがぶっちゃけると、Bさんはそんなに怒らないだろうと思っていた。難関は次だ。
【お二人目】大清水高山氏
高円寺でスナック「美星」を経営しながら、年間1万人、1日平均30人の相談者を鑑定しているという大清水氏。占い師になる前は、ボディビルダー、警察官をしていたという経歴からは、圧力しか感じない。
最初に企画を持っていったとき、大清水氏は快く了承してくれ、「好きに書いていい。どこを撮ってもいい」と言ってくださった。
そのご厚意を、私はムダにしてしまったのだ。
座っている大清水氏の姿が見えた。
私「あの……先生」
大清水氏「おお、どうした?」
私「先生、じつは先生に謝らねばならないことが起こりまして。せっかく先生に協力していただいたのに……」
と思いきや、豪快に笑って「きみはおもしろいなあ」と許してくれた大清水氏。謝罪企画の話をすると、「指さして、怒ってるふうにしようか?」とまで言ってくださり、おかげでいい写真が撮れました。ありがとうございます!
■まとめ
冒頭にも書いたように、私は「占い」に懐疑的な人間だ。にもかかわらず、そんな私の企画に乗ってくださった3人の占い師の先生方には、心からお礼を申し上げたい。
熱意に押されたのか、それとも私があまりに困った顔をしていたのでかわいそうになったのか。前者だと思いたいが、とにかく、
ありがとうございました!
テレビに出ている占い師さんをはじめ、占いをなりわいとする人が「本当に見える」のかどうか、私は知らない。
しかし、今回協力してくださった3人の占い師さんたちは、きっと相談者の心に寄りそった助言をしてくれるだろう。じつはそれこそが一番大事なのではないかと、この記事を書きながら思ったのでした。
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