キャロリングをした話

 今日、とある駅の前の広場で、二週間に一度通っている教会の講座の方に誘われてキャロリングをしてきた。普通は駅前の広場とかで集会的なことをすると怒られてしまうものだが、今回はちゃんと該当駅の駅長さんに許可をいただいた上でのキャロリングだった。合法キャロリング万歳。

 開始30分前に一回教会に集まり、みんなで準備をしてから駅前の広場に向かい、歌う位置の確認と鍵盤の準備をして、いざ歌おうとなった時のことだ。
企画者の方だったかが突然、
「マイク誰が持つ???」
という恐ろしい問いかけをしてきたのだ。事前にマイク使いますなんて話は聞いていない。なんなら楽譜も当日配布だ。ちょっとだけズルをして数日前にもらってはいたが、マイクの件は本当に知らないので、心の準備もできていなかった。
他の人もそうだったらしくとりあえずみんなマイクを持つのは嫌だということで、最初は全員マイクなしで歌い始めることになった。そしたらキャロリングにしてはとても寂しい始まり方になってしまったことだけここに書いておく。

 基本的に今日のキャロリングは、日本語で2番まで歌ったらその曲の英語版の2番までを歌うという手順で進行していった。
 二曲目の「あわれみの神(O Come Divine Messiah)」で伴奏の方が見る楽譜を間違えたのか、英語で歌っている際に進行不可能になりかけたのをなんとか4小節空けたりして繋いだ後のことだった。突然、右隣の方が私にマイクを差し出してきた。半ば二曲目をなんとか回せた安堵感でついうっかり受け取ってしまったが最後。私は最後までマイクを誰にも受け取ってもらえず、マイクと仲良しさんになってしまった。

 運が良かったことに、曲の大半は知っているものばかりだった。「しずけき(Silent Night)」や「あめのみつかいの(Angels We Have Heard on High)」、そして私が大好きな「まきびと(The First Noel)」もあった。知っている曲だからよかったものの、知らない曲だらけだったらマイク渡されてもすごく困ったに違いない。知ってる曲がほとんどでも時々困ったのだから。

 なお、事前に歌うことを知らせていた後輩ちゃんが見にきてくれたのを報告したら、周りの皆様方が「いいじゃない、飛び入り参加してもらったら??」とノリノリで言うので、彼女も巻き込んだ。実は彼女とは今年初めて、そして今年最後の一緒に隣で歌う機会だ。多分知らない人と突然の合唱が始まって困っただろうが、大丈夫。実は私にとっても半分くらいは知らない人だったし。なんなら突然知らない人にマイクを渡されて、めちゃめちゃびっくりしていたし。でもまあ、音楽のちからは偉大で、私は知らない人ともまるで友人であるかのように楽しく歌えた。

 それと実は、後輩ちゃんの声を隣で聞いていて、「手塩にかけて育てた子が着実に成長したな」などと嬉しくなったりもしていた。私は大学在学中、「今(当時大学三年)の私を越え得るソプラノに育てる。」と言っていたが、その密かな野望は達成できていたのかもしれない。とはいえ、プロでもなんでもない私のような先輩レベルには誰でもたどり着くレベルだと思っていたし今も思うけど。であればこそ可能性の塊の後輩ならば誰にだってたどり着いてもらわなくては困る。ましてや、この後輩ちゃんは「私が育てました」という生産者表示をしてもいいくらい、合唱はじめたての時代を知っている子だ。私が指導をして伸ばしてきたことももちろんあるだろうが、執行になって経験を積んだおかげだろうか、自分の記憶の中にあるものより随分と上手になっていた。隣で歌うことがなければわからなかったかもしれない。観客として聞くのと、一緒に歌う人間として隣で聞くのでは、随分と聞こえ方も違うのだから。

 まあなんだかんだ楽しく歌っていたわけだが、マイクの音が後ろにあった壁に反響して私の声がめちゃめちゃ私に聞こえてくるのだけはちょっと恥ずかしかったかもしれない。通行中の皆様にめちゃめちゃ見られた。写真を撮っている人もいた。正直、「すみませんね・・・私の綺麗でもなんでもない歌声を爆音で聴かせて・・・」となんて思いつつ「でもまあ私が楽しいから良いよネ!!!」と楽しんではいたけど。
 楽しくなってきてからはノリノリでマイクを握っていたからだろうか。(まあ、誰かマイク持ちますかと聞いても誰ももらってなどくれなかったんですが。)
一時間のキャロリングが終わるときにはマイクを握っていた左手がマイクを持つ形で固まってしまい、動かすのが大変になってしまった。指を広げるだけの作業があんなに大変になるなんて。後輩が私のカイロで温めてくれて本当によかった。
 他のメンバーの方も、私がマイクを握って歌ったことを褒めてくださった。元から私のことを知っている人は私の歌声を相変わらず綺麗だと褒めてくださったし、私のことを知らない方にもお声がけをいただいた。なぜか歌うメンバーの中にいたカウンターテナーとして歌っているらしい方と一曲歌ったりもした。引退してほぼ一年経つような練習不足の塊なので本物の方に聞かせるような歌声ではない。正直とても恥ずかしかったが、これも興味深い経験だ。
 当然、自分としては自分の歌声に対して色々思うこともあったが、結果楽しかったので良いということにしようと思う。途中で子どもが一緒に「あめのみつかいの」のGloriaの部分一緒に歌ってくれたし、途中から最後まで寒い中見てくれていたおじさんからの拍手ももらったし。今日みたいなとても寒い中、最後まで立ち止まって聞いてくれたおじさん、ありがとうございました。一番きこえるのは多分マイクを持ってた私の声でうるさかったと思いますが、最後に拍手くれたの嬉しかったです。

 自分の歌声について思ったことをまとめたいが、外で一時間も歌って疲れたからだろうか、耐え難いほど眠いのでそれもまたいずれ。
 明日は今日自分が呼んだ後輩ちゃんにお呼ばれして、親友くんとクリスマスコンサートを見に行く。楽しみだあ


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?