【ラブホという場所の裏の顔8 頑固なアジアの職人、松田君】

ラブホテルの清掃の物語

松田君は頑固な人でした。
いうなれば、「アジアのストイックな職人」という感じを醸し出している若者でした。
当時、彼の年齢は24歳。
とにかく、私の勝手な思い込みかもしれませんが、職場に来るまでに「今日やること」を頭に入れたうえで、1日を過ごしているように思える人でした。

すれ違っても、全く笑いもせず、自分の行くべき場所だけを見据える。
通路を通るのも、速足で目的の部屋へ向かうという姿でした。
だからと言って、早く仕事を終わらせて、詰所で何かをするわけでもなく、とにかく「仕事のために自分はここにいる」という態度の男でした。

前にも書きましたが、松田君を呼ぶと「ああ~~?!!!!」と大声で返答するので、事情を知らない人が聞けば、喧嘩を売っているように思われます。
しかし、3男のチャイ君が「ああ言わないと、日本人になめられると思い込んでるので、気にしないでください」と言われて、納得しました。
また、松田君を呼んだあと、要件を話すと、その時は満面の笑顔で「はい!」と言ってくれているので、しばらくすると気にならなくもなりました。

松田君は3人兄弟の次男で、長男のお兄ちゃんのちゃらんぽらんさを嫌い、お兄ちゃんとは口もききませんでした。
また、イケメンでさわやかな3男のチャイ君のように、ふわっと仕事を終わらせることにも一家言あるようでした。
詰所では誰とも話さず、黙ってテレビを見ていました。
仲の良かった人も、取り立てておりませんでしたので、本当に「仕事のためだけに自分はここにいる」と、自分を律しているような人でした。

しかし、真夏のある日の夜、自宅に空調がなく、熱くてたまらなかった松田君は、冷蔵庫に頭を突っ込んで寝てしまい、かなりひどい夏風邪をひいておりました。

それでも休まず、鼻声で咳をしながら、黙々と働く姿に、尊敬と同時に、「松田君も暑さにはかなわないか」と思ったものでした。

本日はこれまで。
それでは、また次の機会に。

私の雑文は、以下でまとめて読めますので、ご興味のある方はどうぞ。
https://note.com/sababushi1966
よろしくお願い申し上げます。


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