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曖昧母音[ə]がアやイやオに聞こえるのは、[ə]が母音の中心だから

英語の発音解説書には、
アルファベットにない発音記号[ə]の項があって、
その[ə]とされている音を、
ネイティブの発音で聞いても、
綴り字のなかの「a」は「ア」、「i」は「イ」に聞こえるんだけど、
私の耳はおかしいのかな?

例えば、
America [əmerəkə] には、
[ə]が3つも含まれているのに、
ネイティブの発音でも「アメリカ」に聞こえちゃうだけど…。

曖昧母音[ə]って、いったい何?

こんな疑問を抱いている方は多いのではないだろうか。



曖昧母音[ə](schwa)の正体は、すべての母音の中心にある音です。

下の表1は、国際音声記号(IPA)の母音表です。
表2は、その簡易表です。
表3は、[ə]と判断される音の範囲を[ə1]~[ə8]として加筆したものです。


表1

画像1

(口腔内で母音が調音される位置を図式化したものです。[i]がある方が唇側、[u]の方が喉側です。)


表2

[i]                                       [u]

  [e]                [ə]                [o]
  [æ]
      [a]                 [ɔ] 

[ə]は母音の中心に位置しています。


表3

[i]                                        [u]
     [ə1] [ə2] [ə3]
   [e]         [ə4] [ ə ] [ə5]        [o]
   [æ]      [ə6] [ə7] [ə8]
       [a]               [ɔ]

[ə]として聞き分けられる領域を
[ə1]~[ə8]で示しました。

[ə]と聞き分けられる領域([ə1]~[ə8])は、
他のすべての母音の領域に接しています。

言い換えれば、[ə]はどの母音からもアクセス容易で、どの母音からの変化も受け入れる音です。

[a]の右上(表3で)には、 [ə6]が位置します。
[i]の右下には[ə1]があります。
[o]の左は[ə5]です。

したがって、
[ə6]は、[a]の音を帯びた[ə]([a]寄りの[ə])、
つまり、「ア」に聞こえる[ə]です。

[ə1]は、[i]の音を帯びた[ə]([i]寄りの[ə])、
「イ」に聞こえる[ə]です。

[ə5]は、[o]の音を帯びた[ə]([o]寄りの[ə])、
「オ」に聞こえる[ə]です。


America [əmerəkə]の場合、
第1番目と最後の[ə]は、
[ə6]([a]寄りの[ə])で発音されることが多いです。
第2番目の[ə]は、
[ə1]([i]寄りの[ə])で発音されることが頻繁にあります。
だから、「アメリカ」と聞こえてしまいます。



英語の一人称の"I"の辞書における発音記号は[ai]、
辞書によっては弱音として[ə]も載せています。

でも、実際の会話では、表3の [ə6]から[ə1]へスライドするように発音されることが多いように思われます。(いわば、[a]寄りの[ə]と[i]寄りの[ə]の二重母音)
もっとも、[ə6]も[ə1]も[ə]の範囲内なので、辞書には[ə]と書くしかないのですが。


[ə]の発音について、
以前の記事でド真ん中の[ə]の発音方法などについて書きました。


[ə6]([a]寄りの[ə])の発音方法
「ア」をゆる~く、弱く、短く発音することで、
[ə6]に相当する
[a]寄りの[ə]の音が出ます。
ただ一つ注意点は、舌の先端を若干持ち上げて、舌全体を底の浅いスプーン状にしておくことです。

[ə1]([i]寄りの[ə])も
「イ」をゆる~く、弱く、短く発音します。
ただし、舌の形を底の浅いスプーン状にキープします。

[ə5]([o]寄りの[ə])も同じです。
「オ」をゆる~く、弱く、短く発音します。
舌はスプーン状にします。


自分の発音する母音を可視化して、目で見て確認するには、下記の記事を読んでみてください。


#曖昧母音 #英語 #外国語学習

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