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君が嫌いな夏の話

蝉の音を聞くと君が嫌いな夏を思い出す

まだ僕らが子供で大人の真似をしていた頃

君はベンチで暑いと駄々をこねながら

僕らは観光地特有の下手な芸術家が描いた

オブジェのような色味をした

甘ったるいジュースを分け合っていた。

僕はだんだん人間不信になっていて

君はそもそも人間が嫌いで

2人の時はなぜか社会に属せるような気がした

元々、外れた道を決した一匹狼たちが

不意に愛に出会ってしまった訳で

区域で分けられ収容された建物の中にある

擬似的な社会の中で腫れ物扱いをされて

聞くに耐えない罵詈雑言ばかりで

耳が冷え切った僕らの拠り所になった。

でも決して物事は万事上手く行くはずもなく

人との関わりなんて知らない僕らにとって

運命なんて言葉には縁がなかった。

君に見限られたあの日から自分を好きになれず

でも、自分を好きになりたくて

そして何か大きな魅力を手にしたくて

様々なことに挑戦した。

そして現在に至るまで

結局のところ、何も為せずに大人になった。

高校から大学に入学し何事もなく

社会を支える労働力として数えられた。

この期に及んで

周りが歩いたレールの上で転がっているだけ。

自分の道を切り拓いたとはいえない。

何にもなれずに、何事も成せず

ただ社会の傀儡になる日々を待つだけ

君が嫌いだと吐き捨てた夏の方が

まだマシに思えるような辛さだ。

だが色褪せない思い出とは幻想の一種に過ぎず

ただ苦しい部分を忘れている人間の

都合の良い尻合わせだ。

でも、この期に及んで断片的な思い出に縋り

他人と自分は違うと信じながらも

他人と同じレールに転がる自分が

惨めで愚かで恥ずかしい。

何も努力できない自分が悔しくて仕方ない。

何かを生み出すこともできずに陽光を迎える。

こんな承認欲求が剥き出しになって

今はもう会えない人に認められようなど

夢でも見れない欲望があるなんて

決して周りには公言できない。

そして僕の性格は心無い人達のおかげ様で

もう元の形が分からないほど歪んでしまった。

何をするにも周りの目が気になってしまう。

今もこうして泣き寝入りを繰り返す僕に

あまりにも滑稽でお似合いな結末だ。

"この世の不利益は全て当人の能力不足"

中学生がよく憧れる少年漫画の主人公は

当たり前に吐き捨てた台詞が胸を痛める。

"結局、僕は誰を信じれただろうか"

"結局、僕は誰を救えたのだろうか"

"結局、僕は変われたのだろうか"

人を傷つけ、関わりを断ち、ある時は振り回し

人を弄んだと見なされても過言ではない。

決して同情を買っている訳ではない。

己の弱さに打ち勝ちたいのだ。

しかしこれまでの人生のあらゆる闘争に負け

ブラックホールのような虚無感を

植え付けられている僕にとって

この現状は変えれるはずもない。

結局小さな差別化を口にして

小さな集団でトップになっても

上には上がいることは変わらないし

どう頑張っても僕は小さな歯車でしか無い。

だから未だに僕は大人になれないまま

青春病とも言えるニキビを頬に貼り付けて

君が嫌いなあの夏に未だに縋り続けている。

追記

夏は普通に熱いから嫌いです。
この話がどうとか別に関係ないです。

ただしさんさんタウンの空調は
明らかにぶっ壊れてるくらい寒いので
それは少し面白いです。

氷点下を下回る事もあるそうです。
趣深し、ですね。

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