美少女戦士セーラームーン THE 20TH ANNIVERSARY MEMORIAL TRIBUTE』

”美少女戦士”になれなかった、全ての女の子へ


 子どもの頃、というか今もだが、ヒーロー番組が大好きだった。仲間と力を合わせて悪に立ち向かう姿がすごくかっこよくて、自分もいつか大切な誰かを守れたら、なんて思ったりもしていた。中でも一番好きだったのが「美少女戦士セーラームーン」だ。短いスカートをなびかせて愛と正義のため戦う姿に、心底憧れたものだった。

 時は流れ、2014年。“美少女”にも“戦士”にもなれないまま、私はセーラー服を着られない年齢を迎えた。そんな元少女にとって、今年はちょっと特別な年だ。なぜって、今年はセーラームーン・シリーズ20周年なのである。このアルバムは、そのアニバーサリーの一環として企画された、アニメ内に登場する楽曲のトリビュート盤だ。

今作には、様々なアーティストが参加している。ももいろクローバーZ、やくしまるえつこ、後藤まりこ×アヴちゃん(女王蜂)、桃井はるこ、などなど。収録されているのは、セーラー戦士そのもののように可愛くてパワフルな楽曲ばかり。それらはただファンの懐かしさを誘うだけのものではなく、アニメを見たことがなくても、彩り豊かな楽曲とアレンジを楽しめること間違いない。

 また、楽曲に現代的な女の子の姿も投影されているのも今作の特徴だ。やくしまるえつこが気怠く歌う「乙女のポリシー」や、クレモンティーヌによるセクシーな「ムーンライト伝説 (仏語Ver.)」は、10年代ならではの“今ドキ”の美少女戦士の姿。だけど、時代は変わっても、少女たちは日々戦い続けている。大人になった今だから分かる。辛いことがあったって〈ピッと凛々しく〉(「乙女のポリシー」)進んでいく、それだけだって立派な戦いなのだ。

 今作で特に胸熱なのは、アニソンの女王こと堀江美都子が歌う「セーラースターソング」。もしもあなたがセーラームーンファンなら、「ギャラクシア様がセーラースターズのオープニングを歌ってる!」と言えば私の興奮が伝わるだろうか。要は、シリーズ最終作「セーラースターズ」にて、悲しい過去を持つラスボスを演じた声優が、同作の主題歌をカバーしているのだ。佐橋俊彦によるキラッキラのアレンジと、そこに乗る堀江の豊かな歌声が、切なくも美しい名曲をさらに引き立てる。

 美少女戦士にはなれなかったけど、私だって自分の今を精一杯戦っている。あの頃の自分が今の私を見たら、何て言うだろう。ガッカリされないように、これからもピッと凛々しく進んでいかなくちゃ。 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?