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SAAIのアート作品

「SAAIのアート紹介」第2弾! SAAIに新たなアート作品が飾られました。「ソノ アイダ#有楽町」プロジェクトと、3名のアーティストをご紹介します。


①都会の隙間に生まれるアート空間

丸の内仲通りに面する「国際ビルヂング」。その1F路面の店舗区画の入れ替え期間を活用し、"空間メディア"として活用するアートプロジェクト。その名は「ソノ アイダ#有楽町」。店舗入れ替え期間中(ソノアイダ)にも賑わう人の出入りを継続させるとともに、オフィス街の真ん中に既視感のない空間を創出しています。
今回は、「ソノ アイダ#有楽町」の第3弾企画「ARTIST STUDIO ACTIVITIES」を実行した藤元明氏、藤崎了一氏、相澤安嗣志氏の3名のアーティストにSAAIに設置した作品に込めた想いを伺いました。

SAAIに新たなアート作品を飾るにあたり、SAAI運営側からは次のような意図で制作を依頼しました。
・SAAIの内装コンセプト「HACK OUT」(古いものをたたき切って新しいものを創る)を体現
・ビジネスに新しい発想や価値観をもたらし、会員を刺激し、新しいアイディアの創発を促す
・空間全体が暖色系の照明に彩られていて、落ち着いた雰囲気の中に空間を明るくする元気ある作品が欲しい
・会員同士が有機的に結びつき、新しいイノベーションが生まれることをアートで表現

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写真左から、相澤さん、藤元さん、藤崎さん

②反発と偶然性を狙う -藤元明さん-

SAAIに設置した藤元さんの作品は、白と紺のコントラストと上から下への動きが特徴的。この作品を作り始める際、頭の中にはこういう絵になって欲しいなという具体的イメージはなかったと言います。しかし、起こって欲しい現象は全て狙ってやっており、それが綺麗なグラデーションとなったとも言います。油性の青と水性の白塗料を同時に流し込むというアクションペインティングで、キャンバスを立て塗料が重力により垂れる動きの途中で水平にすると、油性塗料が水性塗料を下から突き破るように浮いてきます。2色は混ざることはなく同じ場所に定着していきます。
藤元さんの作品は、絵の具がキャンバスから垂れ落ちるまでに次のアクションを繰り出す、その連続で形にしていくもの。絵の具が垂れるまで、そして全体としては絵の具が固まってしまうまでという時間制限の中での格闘の成果として作品があります。

SAAIはそれぞれ違った目的を持つ人々が集まる場所で、その空間に無目的な大きな「現象」としての作品が一つある。その対比がそれぞれの心理にどのように機能するのか。そんな想いで制作されたとのこと。

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<作品タイトル:「Gravities#Blue」>


また、和室のふすまに描かれた作品も藤元さんの作品です。こちらは、塗料を細いノズルから水鉄砲のように噴射させ大きなストークを描き、その線をなぞるように風で飛ばした細いドローイングを描いています。両方の線は共に重力に抗いながら、偶然と必然の中でキャンバスとしてのふすまに定着していく様が作品となっています。

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<作品タイトル:「antigravities」>

③破壊をテーマにしたアート -藤崎了一さん-

SAAIに設置した藤崎さんの作品は、深い青を背景に水色や赤や白のまだら模様が広がっているものや、白やオレンジの背景に青い雫が広がるものがあります。これらは水と油を浮かべた変化の瞬間を写真に撮影することで生み出されました。
「HACK OUT」として、自らの経験にあるプランを踏襲しながら、制作過程の途中でシステムや素材の性質を破綻させるようなことを恐れないで打ち壊し、そこから発現する出来事を注視することで新しく創造のきっかけを作り出すようにしたとのこと。作品に使っている素材は互いに別々に扱われることのある素材ですが、それをカオスの中に放り込む事で何か別のものが浮かび上がる。そこに何か新しいものへのヒントがあるかもしれないという思いが込められています。
藤崎さんの作品は「破壊」によって生まれるものがあります。暴力的に素材を破壊することによって表出してくる破綻した形がテーマとなっているのです。たとえば、モノを叩きつけたときに飛ぶ破片。素材に固有の振動や音。同じように壊れるものはなく、衝撃を与えるごとに無二性を帯びるその過程こそ彼の作り出すアート。
藤崎さんは、SAAIに展示されているような作品の他に、題材とした素材を壊す行動をビデオ作品にしたりパフォーマンスとしたりしていますが、破壊がアートパフォーマンスとして成立するのは、見ている者に彼の言う「壊しながら整えている」という感触を与えるからなのでしょう。

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<作品タイトル:「colored oil #sonoaida_01」(通路正面)>
「colored oil #sonoaida_02」(#sonoaida_01左側)
「colored oil #sonoaida_03」(有楽町駅側)

④予測不能な現象への興味 -相澤安嗣志さん-

SAAIに展示されている相澤さんの作品は、茶色の靄がかかったような砂鉄を使ったアートです。
何かを描いて自然と人間の関係性を表現するよりも、素材と人間の関係性で作品を作れば良いのではないかというのが相澤さんのアートの種となりました。それなら我々の文明を支え、地球の35%を占めると言われる鉄を使おうと発想したそうです。
キャンバスの裏から磁石を使って描くこの作品は、完璧にイメージ通りの絵ができるわけではありません。砂鉄に溶剤を混ぜてあるので、それが固まるまでという時間制限もあります。
「こうなったらかっこいいなというイメージはあるものの、その通り素材が動いてくれるわけではない。思ったのとは全然違う形が現れて、時間と格闘しつつそれならこうするというのをひたすら繰り返す。素材とキャッチボールをしている」と相澤さんは言います。
壁面の「Origin」と床板の「Bloom」はどちらも素材とのコミュニケーションによる身体的な動きと素材の流動性が固定された作品。磁力の流れた鉄粉が立ち上がり目に見えない磁界が可視化され、そこには静と動の二つの要素が含まれています。SAAIでの床の間のある和室は会議室や休憩スペースとして活用されているので、これは作品と同様に静と動の要素を内包した空間として親和性が高いと考えたとのこと。空間の余白や静と動の二つの要素は、相反する要素が一つの世界のなかで互いに引き合い作用しあってその世界を活性化する二重構造体の美を表現しています。
「HACK OUT」については、相澤さんの制作背景と似通っている部分があると言います。
もともとは日本画を学んでいたところから、試行錯誤を繰り返して、地球の核である鉄と自分とのコミュニケーションで表現することで今のスタイルに至っています。日本画の定義は難しく、日本人の古来からの自然と向き合う姿勢が日本画の本質に近い、この考え方に基づくならば相澤さんのこの作品は形態は違えど考え方は日本画に含まれるのではないかと考えているとのこと。これが美術界での真新しさや、ゆくゆくは少しでも日本画のHACK OUTになれば良いという発想があるそうです。

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<作品タイトル:「Origin #55」(壁面)/「Bloom #13」(床板)>


⑤プロジェクトから生まれた出会い

国際ビルヂングに勤める女性の方が「ソノアイダ#有楽町」に関心を示してくださり何度も足を運んでくださいました。
最初来られた時は窓に食いつくようにずっと微動だにせず魅入っていたので「どうぞ入って」と中に招いたら 「何なんですかこれは!」「凄いコンセプトですね!」とかなり興奮気味におっしゃっていて、すごく感動しているようでした。

僕らと会話が盛り上がって色々な話をした中で、息子さんは美術に興味があるものだから今度は息子も連れて来ますという話になって。
実際、すぐに息子さんを連れてきて、僕らに対して「こんな素晴らしい企画はない!」と熱弁を披露してくださいました。
彼女との出会いで、「あぁ、これがこの場でアートをやる本質的な価値だな」と思いました。仕事をされている方が目を引かれてふらっとやって来て、アーティストと雑談する中でアートの世界に導かれるというか。
制作活動を行う我々にとっても、制作過程に第三者の介入があり、制作過程そのものが既に展示になっているという今までにない体験の場でした。

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⑥プロジェクトについての思い

今回のプロジェクトは新しい試みであると同時に、仲通の路面で展開している企画なので絶対に成功させなきゃいけない試合でした。アーティストにとっての世界戦。見た方の意識が広がるような作品をいかに作れるかという、いいものが作れるかどうかの戦い。そして絶対結果を出さなきゃいけない。

今後は、いかにこのプロジェクトに興味を持って足を運んでくれる方を増やすかということですね。まだまだアートは敷居が高いと思われている方が多いので、もっと気軽に触れていいものなんだとわかっている人が増えればと考えています。
また、きちんとアートの取り組みを事業化して世の中にもっとこの活動を広げてもいいのではないかと個人的には思っています。ようやく僕らが面白がっていることが伝わる世の中になってきたので、ここで終わらせたくない気持ちは強いです。
これからの日本は、空いてる場所がどんどん増えていくはずで、都心にもどんどん隙間ができるという問題は別に今に始まった話ではありません。コロナによってよりそういう機会が増えるでしょう。空きテナントの数だけアート空間が生まれる可能性があるというのは、面白い発想となり得るのではないでしょうか。
空いている場所とそこを活用してくれるならお金を出したいという人と、アトリエが欲しいですというアートプレイヤーが協働して、都市の隙間でファンがついたり輪が広がって行くみたいな世界観が理想ですね。

◆アーティストプロフィール

藤元

藤元明(ふじもと・あきら)
1975年東京生まれ。アーティスト。人間では制御出来ない社会現象をモチーフとして、様々な表現手法で作品展示やアートプロジェクトを展開。主なプロジェクトに「ソノ アイダ」、「TOKYO 2021」、「陸の海ごみ」、「NEW RECYCLE®」、広島-NewYork で核兵器をテーマに展開する「ZERO PROJECT」「FUTURE MEMORY」など。2016 年より開始した「2021」プロジェクトは現在も進化中。

藤崎

藤崎了一(ふじさき・りょういち)
1975 年大阪生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了後、商業造形制作やクリエイティブプラットフォーム(SANDWICH) など様々な場所でテクニカルディレクターとして活躍、2014 年から作家として本格的に活動を開始。自らの身体感覚を媒体として制作行為の軌跡を作品構成の要素とする。「執着(ADDICT)」 をコンセプトに素材を偶発的な物理現象へ変換し、彫刻、写真、映像など様々なメディアを用いて作品表現へと昇華させている。

相澤

相澤安嗣志(あいざわ・あつし)
1991 年神奈川県生まれ。多摩美術大学美術学部絵画学科日本画専攻入学、情報デザイン学科メディア芸術コース卒業。自然と人間が交わる境界領域、文明の廃棄物が混在する場、エネルギー消費の場などを、現代の複雑で多様な社会の中で失われていくことになる歴史的な遺産として価値を見出し、物質の存在や運動エネルギーの認識を反映させた作品を制作している。


◆ ソノ アイダ HP
https://sonoaida.jp/

◆ SAAI HP
https://yurakucho-saai.com/