平均から逸脱するということ

そもそもなんでわざわざnoteに文章を書こうかと思ったかというと、結局のところ「しんどいと吐き出せる場が欲しかった」からだ。
いや吐き出してはいるんですよ。わたしはものすごく環境に恵まれている自覚があって、今関わっている専門職の先生方はじっくり話を聞いてくれるし、余計なことを言わずに理解を示して傾聴してくれる友人も複数いる。それでもしんどくなるときはどうしてもあって、文章に書き残すことで脳内のデフラグをしたくなったら、書く。

息子ソウタ(仮名)は知識欲が旺盛で勉強が大好きな子だ。先の学年の範囲までどんどん勝手に学習していく反面、学校の勉強はそれはそれで楽しいものらしく、「小学校の勉強がつまらない」とは一度も言ったことがない。とりわけ算数が得意で、深く理解ができているから質問した内容には言葉のチョイスまで的確な回答をするし、時には先生の助手として算数の苦手なクラスメイトに解き方を教えることもあるらしい。
穏やかな性格で、決して他人の悪口を言うことがなく、物知りなこともあってか一部のお子さんからは一目置かれているようだ。感情のコントロールがうまくできなくてたびたび爆発しても、教室に入れない日が続いていても、クラスの友達が普通に接し続けてくれるのは息子の心根の良さゆえではないかとわたしは思っている。(親バカ)

4月、クラス替え直後。
何もないところでちょっと変な転び方をした息子に向かって「ソウタ、キモい」と笑った子がいた、らしい。
息子は反撃をするタイプではないから、ただ黙って傷ついて固まっていたんだと思う。おそらくその態度が相手の子を調子づかせた。ひとりが言い出すと周囲の子にも波及する。息子は結局1学期が終わるまで複数の子に「ウザい」「キモい」と言われ続けた。
担任の先生はたびたび授業中にフリーズしてしまう息子に手を焼いており、何度も電話で話をしたが、その頃は何が原因なのかはまだわからなかった。息子が重い口を開いて何が起きているかを教えてくれたのは5月末だったか6月だったか。2年生までは小学校が楽しくて大好きでほぼ皆勤だった息子が、だんだんと登校しぶりをするようになった。記憶力が良すぎるがゆえに、嫌な思いをしたことを忘れられず、登校時間になるとフラッシュバックしてしまうのだそうだ。

息子は物知りでたくさん言葉を知っている、一般的な小学校3年生の語彙力とはかなり隔たりがあり、それゆえにコミュニケーションがうまくいかないことが多い、というのが担任の先生の見解。
頭が良くて、語彙力が豊富で、記憶力が抜群に良くて、能力が高いってことは普通に考えればいいことなんだろうけど、その能力の高さとコミュニケーション能力が釣り合ってないことが息子を苦しめている。どれだけ能力が高くても中身はまだ小学3年生で、相手の能力に合わせて自分の出力を調整できるほど息子は成熟していない。
平均から逸脱することは、それが高いほうであれ低いほうであれ、しんどいことに変わりはないんじゃないかなと思う。

「ソウタくん、すごい頭いいんでしょ?いいねー羨ましい」
みたいな話をたびたび言われる。息子が褒められていることはわかるし、よかれと思って言ってくれてることも知っている。本当はそこに息子の地獄があるんだということを説明したいけど、わたしの言葉が足りなくてうまく説明できなくて、なんとなく適当にごまかしてしまう。
しんどいよ、平均から逸脱している子も、平均から逸脱した子を育てる親も。個別対応しなければならない学校側だって仕事とはいえ大変だ。自慢しているわけではないし、マウンティングするつもりもない。経験がないことを理解するのは難しいし、わかってほしいわけじゃない。ただ「大変なんだよ」と言ったら「そうかー大変なんだね」って言ってもらえれば、それだけですごく救われる気持ちになれる気がする。実際にはなかなか難しいけれども。

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