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時の勢い

先日、地方公務員オンラインサロンからのご依頼で「改善を進める手順とコツ」というテーマでお話をさせていただきました。

と言っても、基本は同業者しかいない場所ですし、業務フローを書きましょう~みたいな改善のセオリー的なものを話してもつまらないかなと思いまして、これまでに私が歩んできた道や取り組んできたこと、生み出したソリューションの話をしつつ、その過程でどういうことを気を付けるに至ったかという内容でお話をさせていただきました。

行政に限らず、組織の中で何かを変えていくというのは難易度が高いというのが一般的であろうと思います。
改善とは書いて字のごとし「善く改める」ことなわけで、ということはその前に自分がやってた仕事は悪いことなのかい!?と思われたら、そりゃ誰だっていい気持ちはしないわけです。

カイゼン・BPRの心構え

そういう人間の心理面をうまくクリアしつつ改善を進めていくために、「石塚的カイゼン・BPRの心構え」として以下を提示しました。

5W1Hの「HOW」から入るな
「ちょっとAIとか入れられないの」みたいな話は、デジタルによくありがちなやつですね。
誰のために、何を、どのように実装するのか、その結果としてユーザーにどんな価値を届けるのか。
そういう合意のないまま進めていくと、かなりの確率で「手段を実装すること」が目的になってしまいます。
まずはTO BE(ありたい姿)を描くこと、その上でAS IS(現状)とのギャップを明らかにしましょう。
その「ギャップ」が行うべきカイゼンの正体です。

常に事実を把握し、ニーズを意識しろ
自分勝手な課題感で、自分勝手に考えた改善策を押し付けられることほどユーザーにとって迷惑なものも早々ないと思います。
私は色々なデジタル化支援をさせていただきますが、基本的に支援させていただく業務の内容は知らないことが普通ですので、真っ先にやることは業務側のプロから色々なことをヒアリングしまくった上で、業務フローなどのドキュメントを作成し、支援させていただく側と認識を合わせるという作業です。
そのうえで、課題を「ジブンゴト化」するところから始めて、どう改善していくのかを考えるのですが、極端な話、この段階でデジタル化には向かないと思えば躊躇なくそういう判断をします。
ここで何が何でもデジタル化とかいうのは「手段の目的化」に他ならないですからね。

常に備えよ。チャンスが来てから動くのでは遅い
自分の中で温めていた改善アイデアを実装するチャンスが来た!という時にいつでも動けるようになっていますか?
私はそのチャンスのことを「時勢」と呼んでいます。
ただ、残念ながら時勢はいつ来るか教えてはくれません。
だからこそ、経験値を増やすことや、常に情報を取って改善に使えそうなネタの引き出しを増やすこと、野球選手が毎日素振りをするように、その実装が成功した場面まで含めて脳内シミュレーションをしながらアイドリング状態にしておき、いざという時にいつでも動けるようにしておくことが必要です。
「チャンスが来てから動こう~」なんて人はチャンスが来ても動けないのではないでしょうか。

常に自らを「井の中の蛙」だと思え
世の中の知識を全て身に着けるというのは基本的に不可能なことです。
そういう意味ではいつでもヒトは「井の中の蛙」であるという自覚が必要な気がします。
大事なのは自分が知識を身に着けることではなく、その課題は誰に聞けば解決できる可能性が高いのかを知っておくことであり、そのために常に人とのつながりは大事にしておくことだと思います。

相手が動かざるを得ない状況をつくれ
いわゆる「外堀を埋める」ってやつですね。
ありがちなのは「上司を引き合いに出す」こと(局長がこう言ってるんでやれないと困るんですけど、そちらさんができないっていうならそう報告しておきますねぇ~的なやつ。)
向こうができないと言うことに対しては、それによってどのような不利益が発生する可能性があるのかをきちんと提示した上で相手にボールを渡すということを心掛けましょう。
不利益が発生したら困るから、自分ところでなんとかしちゃうという進め方では一生根本的な解決など無理です。ある意味捨て身っぽい感じですが、それで実際に不利益が発生した場合には「あなたに渡したそのボールを放置してくれたおかげでこういうこと起きましたけどどうしてくれます?」と言い放ちましょう。
ちなみに相手にボールを渡すというのは明示的に行う必要があります。勝手に渡したと思っても、向こうが受け取ったと思ってなければ意味がないので注意しましょう。

原理原則はしっかり把握しろ
相手が動かざるを得ないようなボールの渡し方をするためにも、法令・規則等は隅から隅まで読み込み、つけいる隙を探しつつ、こちらの隙は潰しておきましょう。

エネルギー供給源はどこか

また、お話することを考えている中での新たな発見は「なにかを変えられる人は寝ても覚めても頭のどこかでそのことを考えている人だけである。」ということでした。

別にそのことだけに脳のすべてを使っているということではなく、必要に応じて出したり引っ込めたりしながら、頭のどこかでそれをずっと燃やし続けていける人は、極端な話「道に落ちている小石を見てもひらめく」くらいの状態になると思います。

その際に、内からのエネルギーで常にそれを燃やし続けること(改善への意思)ができている人は、時勢が来た時にすぐに行動に移ることができますし、一度や二度失敗したくらいでいじけることもなく、明るく「さー、次行ってみよー!」となります。
一方で、外からのエネルギー(誰かの評価や賞賛が欲しいなどの承認欲求)によってしか燃やし続けられない人は、そのエネルギーが供給されなければ消えてしまう。

なにかを成し遂げられる人かそうじゃないかというのは、突き詰めればたったそれだけの差なんじゃないかと思いました。

あなたはどちらですか?