推しがクビになった。

プロ野球の世界は光を浴びる選手もいればそれが閉ざされる選手もいる。今回は好きな選手が戦力外通告されたオタクの独り言だ。戦力外予想をSNSで発信したり戦力外通告された選手を「当然だ」とか「やっと切ったか」なんて言ったことのある人間はこの話題に関しては人として話にはならないから申し訳ないが
NO THANK YOU、GOTOHELL だ。

これから話していくことは推しが戦力外になった人間からしたらいまだにトラウマで読めないこともあるだろう。私だってこれを書けるのは今現在、推しが沖縄で笑ってくれているからであって、今頃なんの消息もなくなっていたら書けなかったかもしれない。書けるから書く、それだけだ。


昨年、私の推しは戦力外を通告された。
そのシーズンは調子が上がらず珍しく二軍生活が続いていた。しかし一年で切られるような選手ではなかったからショックは大きかった。
これは学校や職場などの集団で生活をしていてその場で一番力を持っている人間や集団の空気に嫌われたことのある人間にしかわからない感覚だとは思うが、シーズン中の上の些細な言葉や空気が1人の選手を切り離そうとしていたのを覚えている。
戦力外通告をされたあとのラジオで「まさかクビになるとは驚きだった」と言う声に対して「そうですか?自分はシーズン中からわかってましたよ」とあっけなく言っていたからそう当たらずとも遠からずだったのだろう。
それはずっと元気で明るい推しを追っていたから変化に気づいたのか自分がもともとはそういう空気に晒されていた人間だからかはわからないが、まぁそこはどうでもいい。
"わかっていた"推しは笑顔で二軍の最終戦に出場し、その数日後にスーツを着て球団事務所にやってきた。
「嘘だろ?」
「見切るのはやくない?」
「残念だけどプロの世界だから」
なんて言葉が飛び交った。

このときの私は荒んだ。このときの荒みようったらもう自分がワンマン経営者じゃなくてよかった、ワンマン経営者だったらなにかの決定をして社員とお取引先さまに迷惑をかけるところだった。ただの人間でよかった、とすら思った。

これからひょっとしたら推しが戦力外通告を受けてしまうオタクに言いたい。

推しが戦力外になったら気力が99%残ってたらいい方なので気力がすさまじく落ち込んでいても生活できるように生活形態を組んでおくこと

である。
泣くのも怒るのも悲しむのも、生命維持活動と生活の上にある。正直もう去年のそのあたりの私生活とかまるで覚えてはいないけどなんとかやっていたんだと思う。

そして推しが山に登ったりトライアウトに行ったりして沖縄の琉球ブルーオーシャンズに行くことが決まった。とっても嬉しかったのと同時にファンとしての自分には三択の道があったように思う。

推しが居なくなってもその球団を応援するのか

推しについていって沖縄で琉球ブルーオーシャンズを応援するのか

このまんま、野球ファンをやめるか

推しだけではなく、戦力外になったとしても所属していた球団のことも応援してほしいって言う選手やスタッフは多い。そういうものなのだろう。

「俺だけ残れって言うのか!やめてやった!」
って笑いながら出てくるのは勝崎耕世コーチぐらいや。まぁそこが本当に推せるんですけれども。

何回も球場に足を運んで毎試合の勝利を願った球団のユニフォームを着た推しを心に残したまま野球ファンを終えるのも綺麗ではあったのかもしれないが、好きになるってそういうコントロールが効くものじゃないからね、仕方ない。野球は好きやねん。
よって三個目の選択肢はなかった。

残る選択肢は二個で、私は推しについて沖縄の琉球ブルーオーシャンズを応援する選択肢を取った。その球団のファン歴の長さで競ったり生涯(球団名)党がアカウントの名前欄についているような、いわば永遠を唱うような愛の形が一般的である野球ファン界隈から見たら邪道かもしれないが、私はその選択肢を取った。クビにした憎さはもちろんある。そら人間やもん。でも決定的な理由は別の場所にあった。プロ野球というものは全ての球団が優勝を狙ってがんばってやってきていて、全ての球団のファンが自分の贔屓球団が優勝して喜ぶ姿が見たくてやってきている。ずっと低迷していて負け続けてもそれはいつものことだから、と愛の変わらぬファンでさえ、勝って喜ぶ姿が大好きなのだ。
私は推ししか見えていないというほど一途な人間ではない。どちらかというと好きだと思ったら正直に好きだと自覚をして推すタイプなので浮気性に近い。他の選手を好きになることが絶対に無理だなんて思わない。だから想像をした。

試合に勝って優勝が決まる。
ベンチから選手が駆け出す。
全部、いつかは試合を見ながら希望を抱いた選手たちだ。
その球団のことをずっとそばで伝え続けてきたアナウンサーなんかは泣きながら実況をしているかもしれない。
ずっとがんばってきたもんな。
やっと報われたんだな。

でも私は
その歓喜の輪の中に推しの姿がないことが、どうしても嫌だった。
優勝したらおめでとうともよかったねとも言える。と思う。たぶん言えるんじゃないかな。ちょっと覚悟はしておけ(さだまさし)

そうして私は過去の球団のファンをやめて琉球ブルーオーシャンズを応援することに決めたのだった。
私がこの選択肢を取れたのはおそらくファン同士の横の繋がりにほとんど関わってこなかったところが大きいと思っている。ファン同士の繋がりが濃くて抜けにくかったり言い出し辛かったり、嫌われるのが怖いほど大切な人間がたくさんいたらこうはいかなかった。それはそれで楽しい野球ファンライフではあっただろうけれど。元から大勢と関わるのはめんどくさいな、と思ってしまいがちでリアルで友人がほとんどいなくて、その他大勢に嫌われても生活に差し障らなければかまわないが大切な人間に嫌われたら生きていけぬ…めちゃめちゃへこむ…無理…な性格と属抜けがしにくいものに手を出して大変な目に遭ったことがある経験から安易な属入りはしない性格が今回は功を奏したのだ。学校でずっとぼっちでそれすら気にしなかったような性格がここで伏線を回収した。今現在、学校だとかの狭い社会で生きてコンプレックスに生きづらさを抱える人間に言いたい。人生はたまにこういう実はラッキーアイテムだった的な伏線回収がある。大人になるってすばらしい。

私は今、とっても幸せだ。
最初は名前も顔もわからなかった若い選手の成長を見守り、ときには心でむせび泣いている。
外から応援しているだけの外野なのにわしが育ててきたかのような顔をしてしまうこともある。
昨日のドラフト会議も最初から最後までずっと願って画面を見つめていたし、うちの子達の良さが枠には入りきらなかったのはとても残念で、とっても悔しい。
生まれたばかりの球団だからあらゆる面でよちよち歩きでとてもかわいらし……間違えた、まだ長い目で見守るべき部分はたくさんある。マスコットもファン層のカラーもまだ決まっていないようなチームでも、
ちゃんと選手が育てられて
ちゃんと見守られて
ちゃんと向き合われて
ちゃんと叱られて
ちゃんと自立するために厳しくされて
ちゃんと願われて
ちゃんと大切にされている。
推しがわろうて生きている。
推しがたまにSNSで炎上をしてもまぁ火事と笑顔は推しの花と言いますから。燃えん方が精神は安定するけれどそのぐらいでは振り落とされない強さは持った。


私は今とっても幸せだ。

ふと振り返った。
お、Aクラスにおるんやな、いい順位やん。
きっと私はもうひとつの選択肢を取っても文句を言いつつ幸せに思えたかもしれない。
だがしかし

正直な今がとても幸せだ。

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