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純喫茶リリー

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純喫茶リリーのお話
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#朝のルーティーン

純喫茶リリーの朝

純喫茶リリーの駐車場は2台分しかない。 朝7時、そのうちの片方に赤いセダンが停まる。 車から降りてくるのはリリーのママだ。 つまり、この時点でお客さんが停められる場所は1台分しかなくなる。 ママが、カッカッカッとツッカケを鳴らして歩き、店の鍵を差し込んで扉を開ける。カランコロンカランとドアベルの金属音が響く。 たぶん、となり近所まで聞こえていそうなリリーの朝の音だ。 店に入ると、コーヒーと油が混ざったような朝の喫茶店独特の匂いが漂う。 ママはタバコに火をつけ1本吸いながら