雷と蚊は九月。傘がなくても靴紐を結べないし、蚊に刺された肩甲骨に喧嘩を売ることもできない。
鞄の代わりに缶ピースを揺らして帰り道をキックボードで帰っていると、金縛りにあったきな粉餅がいた。こんばんは、と声をかけると、苦しそうにこちらを見る。きな粉餅に眼球はない。見てはいない。でも。
悲しくなって、きな粉餅の肩を撫でると金縛りは解けた。感謝の言葉を述べられる。きな粉餅に口はない。話してはいない。しかし。
グッド・バイの形に唇を曲げて言葉を斬ると、きな粉餅は消えた。
帰宅して、恋人がくれたカンガルーの教育をしなくてはいけないのだ。機械仕掛けのカンガルーは九九ができないけれど、キリンよりは賢い。
帰宅したら、恋人は玄関にいた。彼女はコンパクトと見つめ合いながら、きらきらのコンバースを脱ぎ捨てた。影の氷でココアを作ったら、コップを奪われてしまう。代わりにカルボナーラを飲もう。
ココアとカルボナーラで乾杯してから、恋人とカンガルーに金縛りにあったきな粉餅のことを話したら噛みつかれるだろうか。
かきくけこ、こけくきか。

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