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【感想】ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー 2

「エンパシー」という言葉を世に広めた(と個人的には思っている)前作から続いて、聡明な少年は少し大人になっている。思春期に差し掛かる年齢なんだろう、ティーンとしての悩みが増えていく。
しかしその根っこにはやはり、他者への深い洞察と、理解できない価値観に寄り添う能力(すなわちエンパシー)が垣間見える。
この子は本当にすごい。

今作のテーマは「社会を信じること」
この概念にバチっとハマる日本語はないのかも知れないけど、考えるほど示唆に富んでいて面白い。

目の前の他者に寄り添えない人は冷たい人なんだろうか。台風の日に避難所に来たホームレスを追い返してしまった担当者は、愚かで、想像力を欠いているのだろうか。
いや、彼らだって僕らと同じだ。
ただ自分の所属する社会を信じられていないのだ。
と少年は言う。

どう言うこと?と、最初は思うんだけど、読み進めるうちに言わんとすることがわかってくる。

それは今、日本で起きているさまざまな衝突をも説明できる概念で。

我々は社会を信じられなくなっているんだ。
そのうえで自身の主体を見えない他者に預けてしまっている。
価値観を失ったまま、信用できない社会の中で思考停止している。
ルールの運用しかできなくなっている。

多かれ少なかれみんなそういう空気の中にいるのだと思う。

どしたらいんだろね。

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