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画像生成AIの論点と業務での適切な活用方法【2023年2月版】

こんにちは。さいP ( @31pi_ ) です。

画像生成 AI が話題になって約半年。

Netflix と WIT STUDIO がショートアニメの全背景の作画にAIを活用するなど、いまだ話題は絶えませんが、法整備もままならない発展途上な技術を使うにはそれ相応のリスクも存在します。

そこで、ビジネスにおいて画像生成AIを活用する上で考慮しなければいけないメジャーな論点や、それを踏まえた上での活路をまとめてみます。 

AIの無断学習問題

AI は「機械学習 (Machine Learning) 」というように、大量のデータセットを学習することで高度な処理を可能としています。たとえば Stable Diffusion では LAION-5B の 23 億枚もの枚数の画像を学習しています。

学習量は多ければ多いほど生成に多様性が生まれるため、アメリカや日本では、法律上AIの学習は(権利者の利益を損なわない限り、)著作権侵害にはあたらないと解釈されています。この考えはフェアユースと呼ばれます。

しかし、画像生成 AI が登場し、特定のアーティストの名前をプロンプトとして指定することで出力の品質が向上できることが判明すると、アーティストの絵柄の模倣が横行しました。

そういった使われ方を引き合いに「画像生成 AI は実際にアーティストの利益を侵害しているのではないか」という論調が生まれました。

著名なイラストレーターが「AIによる学習を禁止する」とTwitterで表明したり、 Artstation で「NoAI」という画像が大量に投稿されランキングを占めたりするなど、AI への反発は国際的なムーブメントとなっています。

一方で法的にクリーンな画像生成 AI を生み出す試みも行われており、 Adobe が開発中のモデルや Cool Japan Diffusion 、 Mitsuha Diffusion などは CC0 のオープンソースなライセンスの画像やオプトイン(権利者の明示的な合意)に絞ったデータ収集にこだわっています。

試みとしては素晴らしいながらも、データセットの少なさから出力画像の品質は実用に耐えないのが現時点の状況のようです。

文化・技術の窃取

画像生成 AI のモデルの中には、アニメ調のイラストに特化したものも数多く存在します。

アニメ系イラストに特化したAI・モデルの例
Waifu Diffusion / Novel AI / Hentai Diffusion / Niji・Journey / Horala AI / ACertainThing / Anything-V3 / 7th layer / Counterfeit-V2.0 / EimisAnimeDiffusion / Baka-Diffusion / pastel-mix …

これらの多くは Danbooru という、pixiv や Twitter 上の膨大な数のイラストを詳細なタグを付けて転載しているサイトが公開しているデータセットを元に学習しています。

学習元のイラストは多くが日本や中国・韓国のイラストレーターによるものであり、さらには無断転載サイトから学習されたもの。

そのため、「欧米による日本文化の窃取である」という声や「イラストレーターの努力を蔑ろにしている」という感情的な意見がしばしばイラストレーターやそのファンから生まれ、炎上したりサービスクローズに追い込まれたりしています( mimic や CLIP STUDIO など)。

多くのイラストレーターやクリエイター、創作界隈にとって、画像生成 AI は現時点ではしばしば嫌悪の対象であり、センシティブな話題であるといえます。

i2i トレパク問題

画像生成には大きく分けて txt2img (テキストを元に画像を生成)と img2img (画像とテキストを元に画像を生成)の 2 つの手法があります。このうち img2img を更に略したものが i2i です。

i2i は指定した画像を下敷きに画像を生成する手法で、元の画像と構図を似せた画像を生成することができます。

画像生成 AI はしばしば、ダイナミックな構図を狙って出したり手を正確に作画したりするのが苦手だと言われています。また、生成するイラストの絵柄に統一感を持たせることも困難です。

そこで、イラストレーターのイラストをそのまま、あるいは反転させたりして i2i の下敷きとすることが横行しています。

元々こういった行為は「トレパク(トレース・パクリの略)」と呼ばれしばしば非難されてきたものが、AI によってより簡単に行えるようになったものだといえます。

こういった意図的な盗作は従来のトレパク同様使い手の倫理観・モラルの問題でしかないのですが、しばしば AI の問題として扱われます。

i2i 自体は効果的に使用すればとても有用な技術です。

他人が制作したイラスト等を下敷きとした i2i は絶対にやめましょう。

現時点で画像生成 AI は業務においてどう使うのがいいか

以上を踏まえ、このような使い方が有用だと考えられます。

  • デザインの仮置きとして使う

  • ブレインストーミングに使う

  • 社内向けの資料の挿絵に使う

  • ディレクションの参考資料として使う

  • メインではなく背景にぼかして使うなど、目立たないように使う

他にもあったら「こんな使い方してます!」教えてください!

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