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バチェロレッテを日本で成立させることの難しさ

(この記事は過去シーズンのネタバレを含みます)


バチェロレッテ3が公開された

先日アマゾンプライムで「バチェロレッテ・ジャパン シーズン3」が公開された。今シーズンの主人公は東大卒で元官僚の武井亜樹さん。私は4話まで試聴したが、個人的には随所で彼女の頭の良さを感じられるので、見応えのあるシーズンだと感じている。

ただバチェロレッテという番組は、バチェラーシリーズ以上にその番組としての構造にツッコミが入りやすいものであるように感じる(今シーズンに関してもSNS上で既に様々な意見が飛び交っている)
自分も番組に対して「もっとこうであってほしい」と思うところはあるが、そもそも日本でバチェロレッテを成立させるのが根本的に難しいのではないだろうか。過去シーズンについて振り返りながらその理由を考えてみようと思う。

「格のあるバチェロレッテ」だった萌子さん

バチェロレッテ1の主人公は超セレブで語学やスポーツも堪能な福田萌子さんだった。

萌子さんは美人で規格外のセレブではあるが、それよりも特筆すべきは彼女の対話力だ。
参加男性に正面からぶつかり、本音を引き出していく萌子さんの対話スタイルによって、シーズン1は男性陣の魅力が存分に引き出されていた。最後の決断もルール破りではあるが、それまでの過程で彼女や参加男性のパーソナリティを見てきた視聴者にとっては納得できるものだった。

ただ、萌子さんはバチェロレッテとして非常に見応えのある人物ではあったが、「男ウケ」の良い人ではないように思う。
ビジュアルも守ってあげたい可愛い系というより、女性人気の高そうな宝塚系。参加男性の人間性を見極めるために鋭い質問を繰り広げていたのも、番組としてはとても面白かったが、あれを高飛車だ、圧が強いと敬遠する男性は多いだろう。また超お嬢様なバックボーンもあってか親しみやすさも良い意味で感じられなかった。
ただそのある種の「圧の強さ」によって彼女がバチェロレッテであることの説得力がもたらされていたのも事実である。

(余談だが、時々「萌子さんは男ウケが良くないから女性人気が出た」と主張する男性を見かけるが、女性目線で見るとかなりズレた意見のように思う。
女性は「自分と一見そう変わらないように見えるのに美味しい思いをしている女」に嫉妬する傾向があるからだ。
中学生の女の子がクラスの美少女に嫉妬するのも、クラスという同じ土俵に立つ人間のはずなのに、美少女が故に美味しい思いをしているからだ。だが、これが例えば芸能人のような突き抜けた存在になると、男ウケが良くても憧れの対象として尊敬の念を集めるようになる。乃木坂のメンバーや、最近ならカリスマキャバ嬢に女性ファンがついているのはこのためだ。
だからバチェロレッテに出演するような規格外の女性に対しては尊敬の念を向けても、嫉妬することは少ないように思う。)

「モテの頂点」だった美紀さん

続いてのバチェロレッテ2で主人公を勤めたのは、実業家の尾崎美紀さん。

大学卒業前に起業し、経営にメディア出演にとマルチにこなす美紀さん。彼女はその可愛らしいルックスで出演男性をメロメロにしていた。

だがバチェロレッテ2の評価はあまり芳しくない。アマゾンプライムの星の数も2.5で、これは結末の悪さで大炎上したバチェラー3と同じくらいの評価である。
個人的には炎上しようが、それが意図的に狙ったものであり最終的に話題になれば良いと思う派なので、バチェラー3は大成功だと思う(実際レビューの数はバチェラー&レッテシリーズの中でダントツで多い)
だがバチェロレッテ2はバチェラー3ほど炎上したわけではないし、レビュー数もバチェロレッテ1に比べると少ない。(バチェラーまで含めて見ると多い方ではあるが)

低評価の理由を見てみると、結末に対する文句も見られるが、それ以上に「美紀さんの内面に深みがない」という意見が多く見受けられる。
個人的に、若くして自ら事業を立ち上げた女性に深みがないわけがないだろとは思う。しかし番組中美紀さんは「すごーーーい!!!」「うれしい!!!」と男性をおだてるシーンが多く意志表示も少なく、本人の内面が見えてこなかったのも事実だ。

恐らく美紀さんは経営者として社会に揉まれる中で「女性としての武器」も容赦無く使ってきた方なのだと思う。
「自分が今使える武器は全て使う」というスタンスは経営者として、そして女性としての強さを感じるので、私は結構好きだ。だが、それが視聴者の求めるものだったか、番組の盛り上がりに繋がったかというと話は別である。

「バチェロレッテとしての格」と「モテ」は日本において両立しないのでは?

番組中の美紀さんの振る舞いは間違いなく「モテる女」のそれである。本来美紀さんは強い女性なのだろうが(実際美紀さんと交際中のマクファーはかなり尻に敷かれていた印象がある)、その強さを全面的に出した日には男性陣に敬遠されること間違いなしだろう。
だから男性が取り合うに相応しい女性として、番組中は男性をおだてる対応に終始した。しかし萌子さんの時にはズバズバと切り込む対話スタイルを見てきた視聴者達からは物足りない印象を抱かれた。

では、もし美紀さんがズバズバ物を言って、経営者としての強さを隠さなかったとして。果たして参加男性は美紀さんにデレデレになっただろうか。美紀さんがどれだけ可愛らしい見た目であろうと、おそらく答えは「否」だろう。

幅広く男性にウケる対応と、バチェロレッテとしての格は両立しない。これが強くて自立した女性がウケる欧米では違ったかもしれない。だが日本においてはその2つは両立しないのだろう。

今後「モテる女性」をバチェロレッテの主人公にするなら?

「格のあるバチェロレッテ」としての正解はシーズン1で萌子さんが叩き出した。しかし、残念ながら日本においてそんな女性は男性が血眼になり取り合う存在ではない。
「バチェラー」シリーズの見どころの一つは「ハイスペ男性を巡る女性のドロドロバトル」である。格のあるバチェロレッテは番組を間違いなく盛り上げてくれるが、バチェラーで見られるようなバトルの男性版はあまり期待できない。私たちが男性のドロドロバトルを観たければ、モテる女性にバチェロレッテになってもらうしかないのだ。

しかし、シーズン2はモテる女性が主人公だったにも関わらず、評価が伸び悩んでしまったのだ。
それに、そもそもバチェラーで女性が男性の奪い合いに必死になれるのは「金」という明確なベネフィットがあるからである。まだまだ男性が女性を養う文化の残る日本において、バチェロレッテを手に入れることによるベネフィットはバチェラーに比べると小さいので、そもそも女性の奪い合いは発生しづらいのかもしれない。

では、「モテる女性」を主人公にしたバチェロレッテの正解は何なのか。どうすれば見応えのある番組にすることができるのか。

パッと思いついたのは、バチェラー4で黄さんがやったような動きをバチェロレッテにしてもらうことである。

色々とすごかったバチェラー4

要するに、バチェロレッテが男性参加者にキスをしたりハニートラップを仕掛けたりして、参加者を撹乱し男性同士のドロドロバトルを発生させるということだ。
バチェロレッテにはヒール役に振り切ってもらい、「みーんな簡単にひっかかっちゃって。男なんてほんとチョロいわ、ウフフ♡」的なセリフをインタビュー中に言ってもらう。シーズン2でも男性陣のバトルは発生していたが、きっとそれ以上の見応えのあるものが見られるだろう。

・・・と、ここまで書いて思ったが、やはり現実的な案では無い。
まず男性よりも貞操が重視される女性が、番組内とはいえビッチのような動きをした日には好感度低下は免れないだろう。おそらく売名の意図を持ってバチェロレッテに出演した女性が、自身の好感度が大幅に下がるような動き方をしてくれるわけがない。

そう考えると多少男性ウケが悪くてもしっかりした女性に主人公になってもらい、参加男性にビビられようが意志表示をしっかりしてもらって、「人間ドラマ」としてバチェロレッテという番組を魅せる方が、視聴者は楽しめるだろう。

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