ウイルスに食い潰される娯楽について

ライブを愛するPAとして、そしてライブが開催される限り行くと決めたお客さんとして感じたこととお願いです。誰かの心まで食われませんように。

2週間前に大阪へ行ったときにはまだこんなに事態は深刻ではなかったはず。1週間ほど前に渋谷のヴィレッジヴァンガードで開催されていたイベントは中止にならないどころかマスクを着用している人も少なかった。
日々急速に日常が崩れ去る感覚は、何度経験しても慣れるものではないと思う。

誰もが娯楽を軽んじているわけではないと思う。思いたい。
しかしながらライブハウスという場所は、大袈裟に文字にしてみれば“大勢の人が集まり、歌い踊り、ドリンクを飲む場所”だから、警戒されてしまうのも多少はしかたがないと思う。※追記へ続く

騒動が深刻化してから何度か一お客さんとしてもライブハウスやイベント会場には行っている。しっかりイオンブロックのスプレーとマスクを装備して。マスクだけでは目からの感染はなかなか防げないので、花粉症対策にも有効なスプレー。今日(2/28)は特にマスクを着用している人が目についた。
MC中、ロックスターは「キャンセルをする気はこれっぽっちもなかった」「みんな生きてるんだからいろいろあって当たり前」と、楽しむことを強いていない、ただ純粋に良い曲を持ってきたからいっしょに遊ぼう、という普段通りのスタンスを示してくれていた。このとき初めてこの事態に対して悲しみより悔しさが勝った。ウイルスに私たちの遊び場を取り上げられてたまるかよ。


世に出る前の段階の計画も既にいくつか無くなっている。私の身近な人たちもライブの開催可否を常に迷いながら協議している。中止になってしまったイベントも何個も見てきた。
イベントはライブに限った話ではなく、学生や企業の節目を祝うものだったり、冠婚葬祭どれだって当てはまる。誰かにとってはただの平日でも、違う誰かにとっては二度と来ない特別な1日。延期にしたからと行って皆がまた一堂に会することができるわけではない。

言いたいことは、政府がどうとか補償をしてくれだとかそういうことではないです。知識が浅い人がなんとなくで言及していい事案ではないと思っているから。全部を表に出す必要はないと思ってる。然るべきところへ、自分の言葉で思っていることを伝えたらそれでいい。

楽しみにしていたことを奪われてしまった誰かへ、無理にそれに代わる何かを探せとは言わないから、奪われたそれを好きだということを忘れないでほしいです。事態が収束に向かって、また楽しいことがいつものように開催されるようになったら、現場に足を運んでください。控えざるを得ない誰かも同じです。

万全の予防をして今まで通り現場に足を運ぶ誰かへ、こんな記事を読んでくれる人はそんなことはないと思うけど、来られなくなってしまった人を責めないでほしいです。そしていつも通り現場に来ると決めた以上、現場にいる間はその特別な時間を楽しんでほしいです。もちろんお客様に今まで通り楽しんでいただけるよう細心の注意を私たちははらいます。

そしてこんな今にライブに行って気づいたこと。
至極当たり前のことなんだけど、声を出すことの大切さ。歌う、叫ぶ、会話する。現場で友達やスタッフの方と会話をしたり、ステージにいるバンドといっしょに飛んだり歌ったり叫んだり。
当たり前だったことができない、閉鎖的になってしまう今だからこそ、スマホを置いて改めてCDを聴いたりPVを見たり、家の中や誰もいない道でちょっと歌ってみたり。意識的に誰かと話してみたり。バカバカしいことかもしれない、些細なことだけど、開放することが本当に大切だと思いました。
自分の心がささくれているときこそ、言葉を荒らげたら本末転倒だなと。誰も幸せになれない。ぶつけるべき場所と言葉を間違えないようにしたい。
ヘイトやデマに触れてばかりではより疲れてしまう。下や後ろじゃなくて、上と前を向くこと。


この記事に気の利いた落ちはないのだけれど、読んでくださってありがとうございました。
また、皆で楽しい空間を共有できるようになるまで、前を向いて生きていきたい。

追記:2/29
大阪のライブハウスから感染者が出た件を受けて、上記の話を書き留めておく。というかそのままだけど。
“警戒も多少はしかたない”に集約されていて、インフルエンザだってなんだって厳重に警戒して外に出ざるを得ない人だってかかってしまうときはかかる。でも、仕事帰りに服屋に立ち寄るのとライブハウスに入るのと、規模の差はあれど人が集まる場所に変わりはないと思うのだけど。疲れが溜まって免疫が低下していたのが偶然このタイミングで出てしまっただけかもしれない。感染した人をなんであれ責めないことが大事。そして、それでもライブハウスに行きたいから行く、と決めた人を誰かが責めて縛っていい理由もない。
自由って難しいけど、これも無責任に潰されてほしくない。自分も他人も大切に思えたらいいのにな。そういう人でありたい。

再追記:3/3
「ライブハウスって閉めないの?お客さん減ったでしょ?伝染るのが怖いから皆来ないじゃん、なら閉めればいいじゃん」と身内に言われた。何割かはライブハウスを仕事場にしている私を気遣ってのことだろうけど、これはもはやライブハウスそのものを否定されている気がして、もう完全に別問題だなと。そして私はあくまでも「ライブハウスに常にいる人」としての考えしかできないと気づいた。
閉めたら、そこに常にいる人はどうなるか。そこを演者として、客として求めてる人はどうなるか。
望む人が1人でもいるならライブハウスは営業してて良いと、こんな状況でも思ってしまう。別物だけど、インフルエンザの感染者は激減してる。気をつければできるじゃん、と。
幻想と片付けられてしまうようなことを、今口に出すのは間違っているだろうか。こんなときこそ、ライブハウスや音楽の力を求めるのは間違っているだろうか。
できることがあるなら今まで通り動く所存。変に縛られてたら免疫も落ちる一方で、殺せるウイルスも殺せない。

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