GDPデフレーター【勉強まとめ】

最近知った経済用語の一つ、GDPデフレーターの理解を深める目的でまとめてみた。

経済学の知識は、あるYoutubeチャンネルでお教えただいた書籍『大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる』と、別のあるYoutubeチャンネルで齧った程度であることをご容赦いただきたい。

定義

GDPデフレーターは、名目GDP÷実質GDPの百分率で求まる経済指標の一つ。冒頭に示したYoutubeチャンネルの一方解説動画がある。この解説が分かりやすいと感じた。このYoutubeチャンネルでは、経済学を講義スタイルで解説している。

日本のGDPデフレーターの計算方法

詳細な計算方法を内閣府が発表している。GDPデフレーターが絡む部分は「第8章 デフレーターと実質化」にある。

計算方法を見るとなかなか興味深い。先行して品目別の値を計算しており、そのあとでGDPを算出している。品目別ではデフレーターを先に計算して実質値を算出している(実質値=名目値÷デフレーター)。GDPではデフレーターと実質値を別個に算出している。ただし「GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP」を満たすように算出している。

つまり、GDPデフレーターを「名目GDP÷実質GDP」という計算式で求めているのではないようだ。意味合いは「名目GDP÷実質GDP」だが、「GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP」を満たすようにGDPデフレーターと実質GDPをそれぞれ算出し、その結果「GDPデフレーター=名目GDP÷実質GDP」が成立しているようだ。

品目別の値を計算する際には、消費者物価指数(CPI)などの経済指標が使用されている。品目の分類に応じて、どの経済指標を用いるかが変わるようだ。品目の所属する部門と、その基本となる経済指標との対応が、第8章内の「図8-1 基本単位デフレーター推計の状況」に記されている。なじみの深い指標はCPIだけだった。他の指標を一度調べておこうと思う。

品目別デフレーターを算出する説明に、推計という言葉が使われている。この言葉に気づくまで、なぜこのような算出を行うのかと疑問に思っていた。品目別のGDPを厳密には算出できない。だから推計する。性質の異なる品目を部門でグルーピングし、部門に応じて推計に適した経済指標をベースに推計する。このように理解した。

高橋洋一氏がYoutubeチャンネルで、デジタル化が進めばGDPはリアルタイムに計算できると言っていた記憶がある。推計が不要になるのだろう。冒頭で紹介した動画内の計算を、直接的に行えるからだろう。すべての取引がデジタル上で完結し、その取引情報に基づいて、実用に耐えうる時間で直接計算できれば、推計する必要はなくなる。そうなれば税を中心とした行政コストは大きく削減されると推測する。ただし当面先の話になりそう。その恩恵を受けられるまで生きていられるかは疑問だ。

ラスパイレス式とパーシェ式とフィッシャー式のあたりも興味深い。これは総務省統計局のサイトで説明されている。計算方法の違い傾向や特性の違いが説明されている。基準年が5年ごとに更新されるなど、知らないことが色々とあった。

日本のGDPデフレーターの推移

経済関連の統計を扱っているサイトがあった。そこではGDPデフレーターの推移をグラフで確認できるようになっている。

日本のGDPデフレーターの推移(1980~2022年)
出典:世界経済のネタ帳

安倍政権を切り出すなら2012年からになるだろうか。切り出してみる。

日本のGDPデフレーターの推移(2012~2022年)
出典:世界経済のネタ帳

2015年で100になり、それ以降は100を超える値をキープ。2018年からは徐々に増価傾向が見られる。しかし2020年のコロナで減退。このように見るのが適切だろうか。

2020年のGDPは2020年末で決まる。2020年は一年の大半がコロナの影響を受けているので、一気に100を切ってもおかしくないような気もするが、そうはなっていない。おそらく読み解き方を間違っている部分があるのだろう。

調べることとなったきっかけ

これを調べたのは、GDPデフレーターに対するある言説を見たのがきっかけだった。その言説とは、以下のようなものだった。

黒田元総裁が2013年に「物価安定の目標」を「消費者物価指数の前年比で2%」と定義していた。それなのに、消費者物価指数の前年比2%達成後も金利上昇させないのはおかしい。コアコアCPIやGDPデフレーターを理由にまだ金利上昇すべきでないという経済評論家の意見もあるが、それなら前基準を総括し、過ちを認めたうえで、新基準を設けたうえでその基準に達していないことを理由とすべき。

この部分は調べてもよく分からなかった。黒田元総裁の定義とは以下のものだろう。

こうした点を踏まえ、日本銀行は、2013年1月に、「物価安定の目標」を消費者物価の前年比上昇率2%と定め、これをできるだけ早期に実現するという約束をしています。

日本銀行
2%の「物価安定の目標」と「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」

日本銀行では、消費者物価の前年比でみて「2%」が、目指すべき「物価安定の目標」であると考えています。

日本銀行
【講演】なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか

後者、講演での説明の中には、GDPデフレーターの特性と、GDPデフレーターを指標に用いない理由がある。以下の部分だ。

実質GDPを計算する際に用いる物価指数であるGDPデフレーターについては、価格の下落が大きかった投資財が含まれていることや、輸入物価の上昇が、生産物の価格に完全に転嫁されずにデフレーターの低下に働いてきたことなどから、指数の上昇率は低めとなってきました。実際、1998年度以降についてみると、消費者物価指数の変化率がGDPデフレーターの変化率を平均して1%程度上回っています(図表7)。

日本銀行を含め、多くの中央銀行では、物価の基調判断に当たって、消費者物価指数を中心に用いています。なぜなら、消費者物価指数は、国民の実感に即した、家計が消費する商品やサービスを対象とした指数であり、また、月次で公表されるため統計の速報性があるからです。そうした点を踏まえ、日本銀行の「物価安定の目標」も、消費者物価指数の前年比で示しています。

日本銀行
【講演】なぜ「2%」の物価上昇を目指すのか

このあたりをうまく読み解けていない。複数の経済指標の特性を詳しく知らないからという点がある。素人目には、国民の実感に即することよりも、日本経済全体を判断材料とするほうが良さそうな気もする。速報性の部分は納得。

また、この発言を覆す方針転換の発言があったのかというのもよく分からなかった。記者会見を数多くやっているのは分かる。どの発言がどの程度の強さを持っているか、どれがどれを覆すことになるか、そのあたりを理解していない。こういった情報を評価するにはまだ知識が足りないようだ。

今後の勉強課題

GDPデフレーターを含む複数の経済指標の違いを知る必要がある。定義上の違いではなく、特性の違いや評価の適不適などを知る必要があるだろう。

また、様々な公的言及の扱いの違いを知る必要があるだろう。社会の機構への理解を深める必要があるだろう。どの発言をより重視すべきかは、このあたりの理解が必要と思われる。

勉強が進んだら振り返って評価しなおそうと思う。


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