任意保険の加入割合

少し前にYoutube動画で見た、以下の言説に関して確認した結果をまとめた。

少なくとも、4台に1台は任意保険に加入していない車両を運転しているドライバーが紛れ込んでいる可能性があります

綾人サロン
私は任意保険に入ってないので金は払えませんと言われました

自動車保険の専門家ではないので、正確性は紹介サイト、さらに正確性を望むなら保険会社への相談などで補完してほしい。


2023/12/29追記

この記事に含まれる各種数値は、自動車保険のものであり、自動車共済は含まれていない。被害者への保障がどの程度行われるかという観点では、自動車共済を含む必要がある。この記事は、その点への考慮が不足している。

別途記事にまとめるつもりとしている。この記事を読むうえでは、自動車共済が含まれていないことに留意してほしい。

なお、同資料P.139の表31「自動車共済・自動車保険 都道府県別 対人賠償普及率〈2022年3月末〉」によると、自動車共済を含む加入率は88.7%とある。4台に1台は言い過ぎにしても、10台に1台は無保険といえる。


確認資料

損害保険料率算出機構が出している「自動車保険の概況」の2022年度版を使用した。毎年4月頃に、前年度分が発行されるようだ。

損害保険料率算出機構

損害保険料率算出機構は、自賠責など各損害保険料の基準料率を算出する機構。加盟保険会社から契約や支払に関する情報を受けて、その情報に基づいて基準料率を算出、算出された基準料率を保険会社に提供する役割を受け持っている。

このあたりの説明は、前記PDFのP.14に図示されている。P.14は自賠責を対象とする説明。ただし自賠責以外にも同様のことがいえる。任意保険を対象とする説明はP.65にある。

このような機構の特性上、保険絡みのさまざまな情報が機構に集約する。

任意保険料が上がるという話も、損害保険料率算出機構が算定した参考準率が上がっていることによるもののようだ。

保険加入率

前記PDFのP.114に、第18表「任意自動車保険 用途・車種別普及率表〈2022年3月末〉」が掲載されている。

営業車や貨物を除いて乗用車を中心に気になる部分を抜粋してみた。

「自動車保険の概況」2022年度版
第18表 任意自動車保険 用途・車種別普及率表 <2022年3月末>より抜粋

これに基づくと、全車種合わせた加入率は、対人賠償75.4%、対物賠償75.5%となっている。以降、全車種合わせた加入率を全体加入率と記す。この全体加入率を見れば、確かに「4台に1台は任意保険に加入していない車両を運転しているドライバーが紛れ込んでいる可能性があります」と言えそうだ。

乗用車の加入率は全体加入率に比べてやや高めではある。とはいえ、おおよそ80%前後。4台~5台に1台は任意保険未加入と言える。また、二輪車の加入率はかなり低め、半数を割っている。これはかなり怖い数字と言える。

任意保険への加入と事故を起こす車両との相関はよく分からない。そのため、上に示した加入率が、そのまま事故を起こす車両における加入率を意味するわけではない。先の動画で「可能性があります」と濁しているのは、この点が理由だろうと思う。しかし、それほど極端に変わるものではないと思う。つまり、事故を起こした車両のうち、乗用車の4台~5台に1台、二輪車の半数以上、全体で4台に1台は、任意保険未加入であってもおかしくなさそうだ。

任意保険未加入が損害賠償を逃れようとしていることとは一致しない。しかしながら、本人あるいは実家が資産家でなければ支払能力の担保がないことになる。これはおそろしいと感じた。対歩行者や対自転車の死亡事故で億を超える賠償はさほど珍しいものではない。自賠責の上限3,000万円では到底カバーできない。

保険金無制限契約率

対人賠償保険や対物賠償保険に加入する際、保険金額を決めることになる。最上位は無制限。保険加入者に対する保険金額無制限の契約率を確認する。

前記PDFのP.120とP.122に、第21表「任意自動車保険 対人賠償責任保険保険金額別契約構成表 <2021年度>」、第22表「……対物賠償…… <2021年度>」がある。

前項同様、営業車や貨物を除いて乗用車を中心に気になる部分を抜粋してみた。

「自動車保険の概況」2022年度版
第21表 任意自動車保険 対人賠償責任保険保険金額別契約構成表 <2021年度>より抜粋
「自動車保険の概況」2022年度版
第22表 任意自動車保険 対物賠償責任保険保険金額別契約構成表 <2021年度>より抜粋

対人は、ほぼ100%近くが無制限。対物も、乗用車はほぼ100%近くが無制限。二輪車の対物はやや落ちるものの、それでも20台中19台は無制限。事故の相手が任意保険に加入していることを確認できれば、その時点で賠償支払能力はほぼ安心といえる。

レンタカーの対物無制限の契約率が70%というところに、ちょっと異質な感じがした。全体の構成を出してみる。

「自動車保険の概況」2022年度版
第22表 任意自動車保険 対物賠償責任保険保険金額別契約構成表 <2021年度>より
レンタカー部分を抜粋

無制限以外はばらけている印象。他車運転特約で大抵はカバーできるといえる。ただし、他車運転特約では駐車中や停車中はカバーされないようだ。進行の一態様である一時停車、たとえば信号停車などはカバーされるらしい。そうでない停車、たとえば荷物の積み下ろしなどの停車時に追突されるようなケースでは、カバーされないように思う。レンタカー契約時に無制限に引き上げるオプションを付けるかは迷うところかもしれない。(8/31、被追突と対物賠償はあまり整合しないので取消線を入れた)




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