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【感想】ロドスと、テラを救った3人を想って【アークナイツ/ミヅキと紺碧の樹】

ミヅキが好きだ。

アークナイツを始めたのが2022年8月末。ちょうど危機契約#8のときで、資源調達が全部開放されていて嬉しかった記憶があります。そのあと<吾れ先導者たらん>、復刻<遺塵の道を>ときて、アニメドクターを篩にかける悪名高い海三連発(<狂人号>→復刻<潮汐の下>→危機契約#9淵黙)でしたね。
私とミヅキの出会いもちょうどその辺。<潮汐の下>と危機契約#9の間辺りですり抜けたのが始まりです。当時は海関連キャラだと思っておらず、見た目と声だけで一目ぼれしました。もともとアークナイツを始めたきっかけがゴールデングローだった記憶があるので、Namie先生に一目ぼれしてるのかもしれない。
それと前後して、大陸版で新統合戦略の追加が発表。メインにミヅキを据えた、海関連のローグライクであるとわかりました。そのときは戦力が揃っておらず、エンドコンテンツである統合戦略に対していい感情はありませんでした。「コーデのためにやらなきゃ……」というすっごいネガティブな思いで実装を待っていました。海、ストーリーは重厚で好きなんだけどギミックがね……。
そんなこんなでグローバル版実装。その頃にはある程度戦力が整っていたのでなんだかんだ初日から遊んでいました。というかおもろい。毎日寝る前に素潜りする勢いで進め、翌月の更新を心待ちにする日々が続きました。そしてめでたく報酬にミヅキコーデ追加。ダッシュで取って満足し、パタリと潜るのをやめてしまいました。燃え尽きちゃったのかな。
時は流れて2024年1月。最終更新と思われるアップデートが来て、追憶映写にミヅキが来たのも相まってモチベが戻ってきました。<火山と雲と夢色の旅路>の周回があらかた終わったタイミングで再び潜り始めました。5表以外のボスは全部苦戦しましたが、無事エンディングコンプ。勲章加工も終わり、自分の中で一段落ついたので感想記事をしたためることにしました。

というわけで前置きが長くなりましたが、<ミヅキと紺碧の樹>感想です。
当然ですが多分にネタバレを含みますのでご注意ください。



『平凡こそ幸せ』人類とは、より良い人類とは

明確に他3ENDと毛色が異なるエンディングです。多分これが正史になるのかな。ハイモアちゃんもロドスに来れたし。

静謐が控えている以上、こういう日常が大切になる

ハイモアがキケロ(の使者?)に渡された『贈り物』を体に取り込み、その結果シーボーンとなってしまう。通常の人間(エーギル人だけでしたっけ?)であれば、それは自然な理。キケロが言うように同族の声のまま海に向かい、同族の一部となってしまいます。これは<狂人号>でも書いてある通り。
ですがハイモアはそれを無意識に拒みます。それによって彼女は陸で暮らす人類と海に生きるシーボーンのそのどちらでもない存在になってしまいます。ここがこの話の重要なポイントになると思っています。
陸に暮らしながら海の性質を持ち合わせた存在は、アビサルハンターとミヅキくらいしかいません。狂人号のアルフォンソ船長もその枠でいいでしょう。彼らに共通しているのは『強靭な精神』を持ち合わせているところです。これはキケロが言うところの『真なる人類』の条件を満たしています。人ならざる力を有し、大群の呼び声に打ち克てる人類、これが『より良い人類』の定義となるのでしょう(少なくともキケロの中では)。
ハイモアは一度人間としての身体を捨て、シーボーンに成り果てます。この時点では『真なる人類』の資格を喪失しています。しかし彼女は再び陸で生きることを選択します。一度堕ちはしたものの、シーボーンたちの声を振り払える彼女には間違いなく『強靭な精神』があると言えるでしょう。ですがキケロにとってハイモアは『失敗』となるようです。これは、一度人の身を捨てたからなのか、それとも「陸か海かを『無意識』に選ぶ」のではなく「海の誘惑を『意識的』に御す」ことを求めているのか、真相は定かではありません。ですが、正史ととれるこのエピソードは人類が海と生きていく上で重要となる指針を示したものなのではと思います。
余談ですが、high moreは名前が強すぎるよな……。恐らくキケロが彼女を引き取った際に名付けたのだと思いますが、ここら辺に深海司教っぽさが出てていいですね。明らかに他の深海司教と違うのに根幹は一緒っぽいのが……。とはいえ、悪い部分を直し、良い部分を伸ばす、というのはシーボーンに限らず人間(ひいては生物)のすべきことですからね。
もう一個余談(というか願望)なのですが、ハイモアが無意識のうちに人であろうと縋ったものはなんだったのでしょうかね。私は『声』(=歌声)だと思っています。彼女の母は「歌声が人々を惑わす」とデマを流されるほどの蠱惑的な声とされています。そしてその血は娘に引き継がれます。母亡き今、彼女に残された家族の形見は歌声しかありません。しかしそんな思いも、大群の前には無力でした。

「大群の祈りにのどを塞がれ、声が出せなくなってしまった。」

最後の拠り所さえ彼女は失ってしまった。声に対する思いは執着となる。彼女は化物になりながらも人であろうとし、無い声帯を震わせる。人として、声の綺麗だった母の娘として、人でもシーボーンでもないモノの叫びが……人でもシーボーンでもない少年に届く。……という妄想です。
妄想は置いておいて、ハイモアが願ったもの、それはやっぱり声だと思うのです。それこそが偏執であり、人が人である所以だと思うのです。

『静謐なる時代』世界の終焉と、狂人の最期

END2~END4は一続きのお話だと思うんですよね。まずはEND2から。
(ゲーム的に一番大変だった……)

そもそもどういう経緯で『大いなる静謐』が起きたのかよく時系列がわかっていないのですが、スカジがイシャームラに取り込まれ、シーボーン、ひいては海神になった、という、濁心スカジプロファイルで示唆されていた世界の終わりの一つを『大いなる静謐』という単語でまとめて呼んでるんですよね? 狂人号の最後ではスカジはまだ普通だったけど(イシャームラの性質がスカジの中にあることがグレイディーアにわかった程度)、何がきっかけでイシャームラが目覚めたのかまでは特に書かれてないですよね? 自分が考えている時系列は
 大いなる静謐が発生(だいぶ前)
→グレイディーア率いるアビサルハンターがイシャームラを撃破
 →騎兵と狩人
  →潮汐の下
   →狂人号
    →統合戦略#3 END1
    or濁心スカジプロファイル
    ≒統合戦略#3 END2
だと考えているのですが。上記の認識でいるのでイシャームラ暴走のトリガーがわかっていません。コメントで教えてね。
とにもかくにも、ケルシーが危惧していた世界終焉のシナリオが描かれました。陸上国家のほとんどが滅亡し、ロドスが築いた都市が人類の最後の防衛線となりました。壁の外にいる大多数の人類を切り捨て、都市という名の牢獄で束の間の安息がもたらされることとなりました。人類は敗北しました。
エンディングシナリオ自体は最後の騎士がイシャームラと激突するところで終わっています。最後の騎士、何者なんだ。敵図鑑のインデックスがDOQなところからもモチーフはドン・キホーテでしょう。となると彼は騎士でもなんでもないただの狂った人なんですが……。しかも負けてるし。
ミヅキによって救われたドクターが人類最後の希望となって都市を建築し、ミヅキは人知れず人類を少し延命させるために海と戦う。少年漫画すぎる。かくして時間を稼いだ彼は……散った。人の身体を保てなくなったミヅキはクラゲのようなシーボーンとなり、ゆっくりと沈んでいく。そして彼の細胞は「それ」に流れ着いた。
シーボーンたちの生存原理に「異なる意思の同胞は敵とみなす」があることが示されたの、初めてじゃないですかね。同胞を食し適応していく、といった描写はありましたが、明確な異分子は同胞であろうと排除しようとする動きがあるんですね。あまりにも不利な多数決だ。
推測ですが、この時点(ミヅキがドクターを陸に上げる前後)でもうEND4につながる計画がミヅキの中にはあった、あるいはドクターと共有していたのではないでしょうか。END3でも「ドクターとの約束を守る」とありますが、これは単に時間を稼ぐだけではないと思います。時間を稼ぎつつ、シーボーンたちに『海』を目指させるという、何年かかるかわからない計画がそこにはあったのだと思っています。
多数決に負けたミヅキは深海を揺蕩いますが、海の底で「それ」、『蔓延の枝』に辿り着きます。これは偶然ではないと思います。<狂人号>にて、Frost(R6Sではない、AUSの方)が波を操りジョディの船をアビサルハンターたちの元に流す描写がありました。『大いなる静謐』の中、海の巨獣と思われるAUSは人類側に味方してミヅキを『蔓延の枝』に送り届けたのではないでしょうか。
そうして、枯れ枝とシーボーンのかけらの邂逅により、海底に紺碧の葉が芽吹きました。

『凪の代償』トゥルーエンド、あるいはバッドエンド

『ミヅキ』は『蔓延の枝』となった。
生の意義を忘れた、生きた屍となっていたファーストボーンは、ミヅキとの邂逅を経て『腐蝕された心』に挑んだ。
イシャームラは……敗れた。

ここで初めて(私がよくわかってなかった)深海司教たちの計画が明らかになりました。

固有名詞が多すぎる

『始原の命脈』は多分ここが初出ですが、『腐蝕された心』『蔓延の枝』と並んで表されているのでファーストボーンでしょう。第一回静謐では海岸沿いしか襲えなかったから、第二回は倍のファーストボーン使えばいいんじゃね作戦です。そうなったら『最後の都市』もおしまいです。
今のミヅキは『蔓延の枝』すなわちファーストボーンであり、『腐蝕された心』を討った今は大群の意思でもあります。狂いつつある『海』を自らの(=大群の)意思で収め、海は紺碧に染まりました。静謐は終わりを告げ、壁の中の人類は勝利しました。一人の犠牲によって。
END4を読んだあとだと、ミヅキはまだ道半ばなのです。時間稼ぎをする約束は完遂した。あとはシーボーンたちが『海』を目指すようにするだけ。「だけ」とは書きましたがめちゃくちゃ大変だと思います。『始原の命脈』の意思に飲まれたら再び静謐が起きる。ミヅキが介入できないほど大群の意思がそちらを向いたら人類の滅亡。ミヅキ自身が狂っても滅亡。
ミヅキにできることは、大群を「正しい」方向に導くよう尽力することだけ。
一方スカジは意識を取り戻します。大群にとって『腐蝕された心』が不要となったからです。既にシーボーンとなっているスカジは、大群の意に反し陸を目指します。シーボーンらしからぬ行動に本能は困惑しますが、陸に何かがあると彼女は泳ぎ続けます。次第に海岸が見え、とある人物の姿が見え、彼女は全てを思い出します。――全てを失ったことを。そして彼女は……歌った。
濁心スカジのプロファイルを読んだとき、バッドエンドIF(濁心スカジ自体は幸せそうだからメリバ?)なのだと思っていました。ですが統合戦略によってバッドエンドのその後がわかりました。人類は滅んでおらず、イシャームラは最後に負けるのです。そしてスカジは、人として陸で生きることは許されず、シーボーンとして海で同胞の礎になることを拒み、自分の居場所をなくしたのです。ここまで凄惨なバッドエンドがあるかよ。彼女にとっての唯一の救いは、歌だけです。だから彼女は歌い続けます。
ドクターは最後に何か聴こえた気がして海を見ます。しかしそこには海しかありません。スカジは、――ミヅキがそうしたように――海になったのではないでしょうか。凪いだ海ではなく、波音に。

『星空を湛えた群青』星の海から、星の海へ

『ミヅキ』は、ファーストボーンとなった。
それも、後発の。

シーボーンたちは、イズミックの導きの下海中で力を溜めこみます。十二分にエネルギーを蓄えた彼らは、宇宙へと旅立ちます。単騎で阻隔層を突き破れるほど進化したシーボーンたちは、究極の生命体です。そんなシーボーンたちは、イズミックへの恩返しなのか、『彼』に人としての肉体を授けます。かくして、海の脅威は消え去り、大地に『ミヅキ』という少年が再び降り立ちます。
時代は、『凪の代償』よりずっとあと。何世代もシーボーンは進化を続け、人類は『最後の都市』から今にも飛び出さんとしている。そんな世界に再び生を受けたミヅキの関心はドクターとロドスだった。紆余曲折してロドスに辿り着いたミヅキは、ケルシーと再会します。二人はシーボーンを宇宙に送る計画や石棺で眠っているドクターのことなど、数千年の思い出を語り合います。
スケールが大きすぎる話になりましたが、ミヅキは「『大いなる静謐』を止め、自らをファーストボーンに進化させ、大群を率いて宇宙に行く」計画を実行していたのです。これは正直盲点でした。狭いテラの中で、陸と海、どちらが生を享受するかの争いが起きるものと思い込んでいたもので。でも、サイドストーリーの展開タイミングとしても最高のシナリオです。直前に<孤星>があり、宇宙に関する存在は示唆されていたので。そうか……陸と海が出たら空だよなあ……。
ケルシーがしれっといるのはちょっと笑いました。でも安心感すごい。歴史の当事者として全てを見続けている。ドクターが石棺にまた入っているのもずるい。生命維持装置としてのオーパーツすぎる。
最後に希望が書かれています。成長したシーボーンは空へ飛び立ちましたが、幼体はまだテラに残っています。そんな幼体が、好奇心旺盛な少女に近づき、攻撃しようとしましたが……少女は食べ物を差し出しました。人類はシーボーンにとって脅威ではない。友好的な存在になり得る。大群は一つの意思であるので、この意思が共有された暁には、人類は敵でなくなる。きっと星の海を泳ぐシーボーンが、新たな星に辿り着いたとしても、そこの生命を支配する発想にはすぐには至らないだろう。そう思いたいです。

いつか石棺から出たときも、こう呼びかけてほしい

『幼年期の終わり』IFのIFと、テラを救った裏切り者

最後にミヅキの追憶映写に少し触れます。
PART1は明確なバッドエンドです。静謐によってドクターもシーボーンとなり、人類の灯火が消える内容です。
衝撃なのはPART3です。時系列的に狂人号のあと、『大いなる静謐』の前。
たまたまボリバルにいたミヅキは、たまたまボリバルにいた恐魚を見つけます。恐魚たちはじっと空を見つめています。何か起こるのを知っているのか、あるいは、無為に終わっても監視を続けているのか。そして、その日は唐突に訪れます。
空に裂け目ができ、エネルギー線が空を貫く。
ミヅキが恐魚たちの方を向くと、もうそこには誰もいませんでした。目当てのものは既に見たといわんばかりに。
直接明言はされていませんが、答えは一択です。クリステン・ライトです。クリステンの身勝手な執着の結晶が、宇宙へと旅立つ瞬間です。
もちろんクリステンにそんな意図はないでしょうが、それでも彼女の行動によってシーボーンたちは空の先があることを知りました。それはもちろん、ミヅキにとっても。阻隔層を突き破り、空の彼方へシーボーンたちを送る。それだけ聞くと突飛な計画にも思えますが、結果から見れば人類の火はここから灯っていたといっても過言ではありません。

 
先導者という点で一致している

『大いなる静謐』のあとでは、クルビアの功労者のことなど誰も覚えていないかもしれない(もちろんこの時代では功労者ですらない。宇宙開発が評価されるのはもっとあと)。それでも、全てを神の視点で見てきた私たちは知っている。自らの偏執に殉じたペッローが、静謐なる時代を乗り越える礎となったことを。

おわりに/有り得べき未来のために

いやめちゃくちゃ良かったですね……。これは大好きなオペレーターに焦点が当たったからというのもありますが、アークナイツらしい、絶望の中必死に生きる人々を描いたストーリーとして、他のサイドストーリーたちに引けを取らない一本だと思います。IF世界線が多いからあれこれしやすいってのもあるでしょうけど。
音楽も非常に良かったですね。「海の願い」、PVを初めて聴いたときからずっと好きだったのでホーム画面は即設定しました。この曲のためだけにやる価値がある。『海の願い』、この海はミヅキを指してるともスカジを指してるとも取れますね。自己解釈が過ぎるかもしれませんが、どちらにせよ「ドクターに会いたい」が込められている気がします。ドクター、罪な人間……。

 

最後に。ミヅキの追憶映写に出てくる『不溶の氷山』について。
(1回しか出てこないと思ってなかったからスクショがない……)
前後に『腐蝕された心』『蔓延の枝』があることから、これもファーストボーンだと思われます。月並みな発想ですが、「氷山」と聞いて思い浮かぶのはまずイェラグ。そしてサーミ。そして次のローグライクはサーミ……。もしかして、次も海だったりしますかね……?

以上。長々とお付き合いいただきありがとうございました。
次は私なりの攻略記事でも書こうかな。
おわり。

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