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おえかき教室【瀬戸#4】

三本足の猫を撫でたあと、無料開放されている窯垣の小径駐車場で華鼓さんの迎えを待った。公衆トイレの脇に設けられたベンチに座って、心地よい風と太陽を浴びる。静寂な空間に時折、車のエンジン音だけが通り過ぎていく。華鼓さんだろうかと運転席に目をやるが、なかなか華鼓さんは現れない。さっきのメッセージの内容からして既に到着しているであろう時間になっていた。もしかしたらと思い、駐車場に停まっていた車を覗きに行くと、窯垣の小径の方から華鼓さんがゆっくりと歩いてきた。どうやら入れ違いになっていたようだった。随分と探させてしまったと思い詫びを入れると、「気持ち良いから歩いてたの」と華鼓さんは言った。
華鼓さんの車に乗り込み、気晴らしによく来るのだという神社や喫茶店を案内してもらってから華鼓さんのお宅に到着した。僕はこの日、20年ぶりにお絵描き教室に参加する。

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