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初演出【浅草#1】

初めて舞台を演出させていただくことになった。舞台畑で育ったわけでもない自分が演出をするなど100年早い話ではあるが、100年も生きる予定がないから挑戦する決断をした。何より、今、どうしても世に出したいと思える作品があった。
アメリカ近代文学を代表する作家マーク・トウェインの『不思議な少年(原題・The Mysterious Stranger)』。この本と出会ったのは、20歳くらいの頃の話。僕は神保町の古書店を巡り、普段は手に取ることのない本を手当たり次第に買い漁っていた。そこでふと目に留まったのが『人間とは何か』というタイトルの薄汚れた文庫本。『トム・ソーヤの冒険』や『王子と乞食』など児童文学作家として知られるマーク・トウェインが晩年期に残した怪作だった。人間とは何かをちょうど考える年頃だったのかもしれない。100円で買ったその本は、僕の人生に大きな影響を与えることになる。

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