見出し画像

せともの【瀬戸#3】

ハンバーガーで腹を満たしたあとは、瀬戸の街を巡ることにした。この日は華鼓さんのお宅にお邪魔することになっているのだが、約束は午後からだった。二年前に訪れた時は観光する時間を作れず、今回ここで一泊したのは改めて街を探訪するためでもあった。
瀬戸といえば、言わずと知れた焼き物の街である。日本六古窯の一つである瀬戸の焼き物は、瀬戸物や瀬戸焼と呼ばれている。その歴史は古く、鎌倉時代あるいは古墳時代からこの地で陶器が生産されていた跡が残されているらしい。街の中央を流れる瀬戸川沿いには、今も数多くの焼き物屋さんが軒を連ねている。大規模な工場で作られる安価な陶磁器から、小さな窯元で作られる一点物の陶器や陶磁器まで、ありとあらゆる焼き物が並んでいる。一軒一軒ちゃんと見て周ろうとすれば、丸一日掛けても時間は足りない程である。その光景はまさに観光地のそれなのだが、お値段は全くもって観光地価格ではない。東京の百貨店や食器問屋街の浅草かっぱ橋で売られているものと比べれば、かなりのお値打ち価格と言って差し支えないだろう。

ここから先は

1,787字 / 4画像

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?