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ソレナンデス!【港区#2】

「サッカーで一番になるのは不可能だと分かったんですけど、俳優ならいけるんじゃないかと思っているんです」
身の程知らずな大口をヘラヘラと叩いて、見事に場の空気をしらけさせた。対面する人たちは、この青二才に何て言葉を返してやるべきか苦笑している。ところが、会議机の隅っこに座るおじさんだけが嬉々として「どうしてそう思ったの?」と僕の目を見据えた。
『ヒルナンデス!』オーディション会場での一幕である。日テレで新しいお昼の情報バラエティ番組が始まるということで、出演者オーディションに参加することになった。当時、大学生だった僕は俳優としてのキャリアを歩み始めたばかり、芸能界の厳しさなんぞ露知らず、大いに勘違いをかましていた。さらに言えば、情報バラエティに自分が出るなんていう未来は想像だにしておらず、全くもってお気楽なものだった。そんなおバカ丸出しな様子が制作陣にとっては逆に新鮮だったのかもしれない。僕は金曜日のレギュラーに決まってしまった。

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